小大建築設計事務所が運営する一畳十間によるヴィンテージマンションをフルリノベーションした4人暮らしの自邸「はじまりの家」

無印良品やPOLAなどの店舗デザインや、宿泊施設、個人宅の住宅設計まで、日本と上海を中心に幅広いプロジェクトを手掛ける小大建築設計事務所が運営する一畳十間。「日本の心地の良い美がある暮らし」をテーマに活動する彼らが手掛けた初のリノベーション住宅「はじまりの家」は、約90㎡の敷地に家族4人が暮らすワンフロアに諸室をまとめた住まい。1972年竣工のバルコニーがL字型に繋がった最上階の空間をベースに、水回りの位置も変更するフルリノベーションとなりました。

三和土と縁側による落ち着いた雰囲気の玄関

玄関を入ると現れる洗い出しの三和土。三和土に沿うように設けられた縁側に腰をかけて靴を履くこともできます。縁側下の間接照明が幻想的で、夜の帰宅時もあたたかく迎えてくれます。

玄関脇にはコート掛けを配置。なぐり加工が施された木の竿にもこだわりが感じられます。

多用途使いが魅力の和室

玄関を進むと広がる和室は、襖を開け放つことでその向こうのリビングと一体となってひとつの空間に。

あえて区切りを設けないことで、広い玄関ホールとして見せることができるうえ、和室は客間にもなり、夜は寝室にも活用できる自由な空間です。こうした余白スペースが、気軽におもてなしを提供できる物理的・心理的余裕にも繋がります。

オリジナルサイズの畳は匂いのしない和紙を使用したもの。畳の下と、ラワンのプッシュオープン式扉で覆われた壁面も収納になっています。

和室のリビング側には、“コロナ禍で家族を繋ぐ”をテーマに野田版画工房にオーダーしたモダンな襖を配置。閉めると1枚のアートとして楽しめます。

和室とリビングの間には夫婦で使えるデスクスペースを設置。造り付けの棚をカウンター上下に設けることで、空間を有効活用しつつ作業の効率性もアップ。子どものスタディスペースとしても活用できる空間です。

機能的で心地の良いLDK

オーク材のフローリングが広がるLDKには、重厚感のあるダイニングテーブルを配置。

器を1点ずつ楽しむことができるようにオリジナルでデザインしたというテーブルの天板下からは、バリエーション豊かな器が顔をのぞかせています。

テーブルを囲んで家族が集まる広々としたLDKを、昼は2面から入るバルコニーの光、夜はやわらかで幻想的な間接照明が照らします。

広々としたリビングは、ルイスポールセンのラジオハウスとオリジナルのソファがアクセントとなったモダンな空間に。ソファの下も収納になっています。

諸室をまとめた白い空間

和室とLDKの他、壊せないパイプスペースにまとわりつけるようにベッドルームと収納、トイレ、書斎を配置。白い箱のような空間に集約し、その周りを回遊できるように全体が設計されています。

箱状の空間は天井を開けることで繋がりを持たせるとともに空調もクリア。ザラザラとした塗装が特徴的な壁面には、子どもがぶつかったりしても剥がれ落ちないよう、粒子の粗い珪藻土を採用。光の当たり方で生まれる陰影も楽しめます。また、光がやわらかく差すように、壁の角はR曲面に。

ベッドルーム、バスルームのドアは、金物を見せないアウトセットにするなど、細部に渡るこだわりが居心地の良さに繋がります。

箱内に設けられた1600mmのベッドが入るコンパクトなベッドルーム。染色したラワンを使用することで色調を統一。

エアコンも壁に内蔵しており、籠り感のある居心地の良い空間です。

書斎には造作した本棚を設置。天井と梁はコンクリート現しにしており、秘密基地のような雰囲気に。

就寝前のひと時や、早朝に目が覚めたときに、創作意欲が湧くような空間です。

浴室と脱衣所に仕切りのない、シンプルで気持ちのいいバスルーム。ムラ感のあるタイルを使った床には床暖房も完備されており、一年中心地よく住まうことができます。

和とモダンの組み合わせが実現する現代の日本の住まい

三和土や畳など和のモチーフと素材を用いた、日本ならではの情緒を感じさせるインテリアが魅力の「はじまりの家」。寝室や書斎などの諸室をまとめ、敷地の半分近くをLDKに当てることで生まれたゆったりとした空間が、日々の暮らしを豊かにする住まいです。