日本の技を一気見!150年の歴史を振り返る「建築の日本展-その遺伝子のもたらすもの-」のみどころとは?
世界が注目している、日本建築。
多くの日本の建築家が国際的に高い評価を得ているその理由はどこにあるのか?それはまさに、日本建築の歴史は他に類を見ない独創的な発想と表現を内包しているからだといえるのではないか。
そんな視点から開催されているこの『建築の日本展-その遺伝子のもたらすもの』。
明治維新からの150年間、大いなる建築の実験場であった日本。日々の暮らしや自然観といった目に見えないものの変遷も日本の建築を捉える上で重要な要素となってきた。
この展示では、日本の建築を読み解く要として9つの特質にフォーカスし、古代から現代までの建築とともにその特質を紐解いていく。
貴重な建築資料や模型から体験型インスタレーションまで100プロジェクト、400点を超える多彩な展示はかなりの見応えがあり!
中でも特におさえておきたい見どころと一緒に本展の魅力をご紹介したい。
①北川原温《ミラノ国際博覧会2015日本館 木組インフィニティ》
会場に入ってすぐ目に入るのは、北川原温氏によるインスタレーション「ミラノ国際博覧会2015日本館 木組インフィニティ」。迫力のあるこのインスタレーションはテーマである「可能性としての木造」の象徴といえる。
ここでは「日本建築は、可能性としての木造である」と言い換えられ、木造建築における特性やシステムなどが模型や設計図などを通して説明されている。
また、本展では展示会場の壁にテーマに沿った建築家たちの言葉が大きく書いてあり、数々の建築家たちの素材に対する思いや見方を垣間見ることができるので、展示と合わせて見ることをオススメしたい。
②《待庵》
《待庵》とは、豊臣秀吉の命により千利休が作ったとされる、現存する最古の茶室建築である。
本展では、ものつくり大学の協力のもと、原寸スケールで再現されている。
幅、奥行き、高さ共に人間の身長から割り出された極小空間。小さな入り口から頭を垂れて中を覗くと、まるで人間の巣のようにも感じられるこの茶室は、そこだけ違う時間が流れているかのような不思議と落ち着く空間になっている。
日本人の歴史において、今日に続く独自の感性、世界観の根源をみることができる。
③齋藤精一+ライゾマティックス・アーキテクチャー《パワー・オブ・スケール》
真っ黒のカーテンを潜るとその奥にある暗い空間。
建築空間のスケールをを実寸で体験することを目的としているというこの空間では、身近な空間から歴史的建造物や普段入ることのできない空間までもが、映像とレーザーファイバーによって、再構築されている。
次々と移り変わる映像に、思わずそこにいるような感覚に。テクノロジーの進化により、擬似世界に慣れてしまった現代の人々は実世界での生物的に持っている感覚が弱くなっているかもしれない、という視点から「人間のスケール感覚の力」を再確認することが意図とされている。
是非実際に体験して、自分の感覚を再認識してほしい。
④ブックラウンジ
見応えありな展示を越えた先にある、ブックラウンジ。
「家具のモダニズム」として設置された空間には、落ち着いて本や資料をみるスペースがある。
様々なデザイナーによって美しくデザインされた家具たちが共存しながら、人間にとって心地の良い空間を作り出している。
⑤《住居(丹下健三自邸)》模型
《住居(自邸)》は、丹下の自宅を三分の一スケールで再現したもの。
内と外を壁で隔てず、すべて透明なガラスにすることで、浮遊感のある、個人住宅の域を超えた建築となっている。実際に、建築家、デザイナー、芸術家が集う場となり、後にグッドデザイン賞や、世界デザイン会議の実現に大きく寄与した。
和風でありながら、モダニズムの諸芸術を融合させた近代建築。風が吹き抜けるような空間に、人が自然と集まる住宅を見事に再現している。
建築の日本展-その遺伝子のもたらすもの-
本展では、ご紹介したもの以外にも、様々な視点から日本の建築を考えることができる。日本人ならでは美的感覚、まさに遺伝子レベルの独自性から生み出された「日本人が作る建築」の歴史を是非目の当たりにしてほしい。
・会場 森美術館
・会期 2018.4.25(水)~ 9.17(月)
会期中無休開館時間:10:00~22:00(最終入館 21:30)
※火曜日のみ17:00まで(最終入館 16:30)
・料金 一般 1,800円
学生(高校・大学生)1,200円
子供(4歳~中学生)600円
シニア(65歳以上)1,500円