建築家・納谷学が手掛けた三角形の敷地を活かした豊かな住まい「弦巻の三角」

個人住宅の設計を中心に、商業施設や店舗、集合住宅などこれまで200軒以上の作品を生み出している「納谷建築設計事務所」代表、建築家・納谷学。建築家としての活動の傍ら、関東学院大学や芝浦工業大学で講師としても活躍しています。

納谷建築設計事務所が手掛けた「弦巻の三角」は、2辺が道路に面した三角形の敷地に建つ住宅。ネガティブに捉えられがちな三角形の形状を活かし、その特異性が豊かに感じられるような工夫の詰まった空間です。

敷地の高低差と三角形の形状を活かしたプラン

納谷建築設計事務所:弦巻の三角
写真:吉田誠

敷地は東京都世田谷区にある住宅街の中の一画。

納谷建築設計事務所:弦巻の三角
写真:吉田誠

道路に突き出すようにある三角形の土地です。

納谷建築設計事務所:弦巻の三角
写真:吉田誠

3辺のうちの南と北の2辺は道路に接しており、残りの一辺は隣地との境界であるため、どの方向に開いてもプライバシーの確保が難しい状況。一方で道路に囲まれていることと敷地が道路面よりレベルが高いことが幸いして、都市部の住宅街にもかかわらず一日中日当たりが良く、風抜けのいい環境を計画次第では手に入れることができることがわかりました。

納谷建築設計事務所:弦巻の三角
写真:吉田誠

そこで、敷地の高低差を利用して、他階を計画し、北側道路から住宅へのアプローチを設定。地下はRC造で、ガレージと駐輪スペース、そしてその間に玄関を計画しました。

納谷建築設計事務所:弦巻の三角
写真:吉田誠

直角二等辺三角形の二箇所の鋭角部分は外部スペースにして、庭やテラスとしています。

また、既存の擁壁の耐圧板に住宅の荷重がかかるのを回避するため、地中梁をキャンチレバーに。1、2階は地中梁に負担がかからないように在来工法の木造としています。

納谷建築設計事務所:弦巻の三角
写真:吉田誠

 室内は敷地の形状に沿って三角形のプランニングに必要諸室を矩形に内側に入れ子状に配置した構成となりました。

納谷建築設計事務所:弦巻の三角
写真:吉田誠

1階はオープンなLDK空間に。上から注ぐ光で明るく開放的な雰囲気となっています。

納谷建築設計事務所:弦巻の三角
写真:吉田誠

2階はプライベートスペースとして個室と水回りを計画。

写真:吉田誠

ホワイトを基調にクリーンな印象にまとめています。

納谷建築設計事務所:弦巻の三角
写真:吉田誠

1階と2階は内外に大小4つの吹き抜けを介して繋がり、家のどこでも家族の気配を感じられるようにしています。

納谷建築設計事務所:弦巻の三角
写真:吉田誠

すべてのスペースはデッキテラス、ライトウェルや吹き抜けなどさまざまな外部の余白空間と接しています。

納谷建築設計事務所:弦巻の三角
写真:吉田誠

この余白は、外部からの視線を距離や角度の調整によって遮りながら、住宅内部からは開放的でこの土地が本来持っている日当たりが良く風通しのいい環境をそのまま享受します。

短所をカバーしながら強みを引き出したユニークで豊かな住まい「弦巻の三角」

三角形の敷地は一般的にネガティブに捉えられがちですが、「弦巻の三角」では建築とパブリックの間に積極的に余白空間を取り組むことで、プライバシーとパブリックの両方が実現しました。敷地の持つ短所に対処しつつ、長所を最大限に引き出し、より魅力的な空間として仕上げた住まいです。