「自分自身が今着たいものをベースにつくる」デザイナー・成瀬文子が好きな空間や創作において大切にしているポイントについて
「寝癖がついていても、素敵にみえる女性に似合うような洋服」をテーマに、自然体な女性に向けたアパレルブランド、アトリエナルセ・デザイナー・成瀬文子さん。今回は成瀬さんにお好きな空間や創作において大切にしているポイントを伺いました。
アトリエナルセ デザイナー・成瀬文子
1979年 大阪府交野市生まれ。「atelier naruse(アトリエナルセ)」デザイナー。2001年から「couleur(クルール)」名義で手づくりの布バック制作をスタート。2007年に洋服ブランド「naruse(ナルセ)」を立ち上げる。2010年、早川卓馬と共に「株式会社ボクラ(bokura co.,ltd.)」を設立。2013年より、ブランド名を「atelier naruse」に統一し、年2回の展示会をベースに新作を発表。現在、兵庫・宝塚の一軒家に夫と息子、猫とともに暮らす。
肩肘張らない落ち着いた空気感が好き
まずは日常生活の中で大切にされているデザインについて伺いました。
「肩肘張らないというか、かっこつけずに、落ち着く・安心するようなデザインや空気感を大切にしています。」
成瀬さんが作られるデザインは、懐かしいようで新しいような不思議なイメージです。webサイトでご紹介されているように、寝癖がついていても素敵に見えるような、自然体な女性に似合うお洋服ですね。
「なにかシュッとしていてかっこいいというよりも、リラックスしているときに着れる服を作りたいなと思っています。」
本に囲まれる空間が好き
デザイナーとして、お好きな空間はどういったものなのでしょうか。
「本がある場所が好きです。本屋さんや図書館とか。 今年の春に、大阪の池田市にある『ふるえる書庫』という如来寺というお寺の書庫をお借りして、洋服の撮影をさせて頂きました。 住職の宗教学者の釈撤宗さんの蔵書が並ぶ書庫なのですが、蔵書がすごい量なんです。 宗教関連の本はもちろんですけども、アート系の本や小説、エッセイ本や、漫画のセレクトもとてもよくて。 本棚を見ているだけでその住職さんがちょっと好きになってくるような本棚で、とても落ち着くいい場所だなあ。と思いました。」
ふだんから図書館や本屋さんにはよく行かれるのですか。
「日常的によく行きますね。洋服のデザイナーなのに、ちょっとかっこいい洋服屋さんよりも本屋さんのほうが落ち着くような気がします。たくさんの本に囲まれると安心できるんです。古本屋さんも好きでよく行きますね。」
絵本のようなバッグからはじまったアパレルブランド
成瀬さんは2001年、手作りの布バッグからご自身のブランドをスタートされていますが、どうして布バッグだったのでしょうか。
「イラストを書くのがとても好きだったので、イラストを布に刺繍したり、プリントしたりしたものを作りたくて、ハンドメイドでバッグや雑貨を作っていました。当時は絵本のようなバッグを目指していたんです。」
そんな布バッグからスタートしたブランドが、洋服へと広がっていった経緯を教えていただけますか。
「私はパターンがあまり上手に引けないので、1人では作れないなと感じたんです。そこで、知り合いのパタンナーさんや工場さんを紹介して頂いて布バッグを作り始めたのですが、バッグだけでは飽き足らずといいますか、もっと身につけるものをいろいろと作ってみたいと思ったんです。そこからだんだんと、少しずつ広げていくことになりました。」
自分自身がそのとき着たいものをつくる
成瀬さんの作るお洋服は世代を問わない雰囲気を感じますが、その点は意識されて製作されているのでしょうか。
「世代を問わないというよりも、どちらかというと私たちのように、40代を中心に30〜60代ぐらいの方をイメージして作っています。基本的には私自身が今着たいものをベースにしていますね。ブランド立ち上げ当初からのお客さまも多くいらっしゃるので、一緒に年齢を重ねているようなかたちです。」
年を重ねるなかで起こる変化を大切に、創作につなげる
お洋服を作る際に大切にされていることはありますか。
「年を重ねるごとに、身体はもちろん、考え方や家族の成長などの変化を感じてきました。そういった変化を大切にしながら、『こんなときにこういう服を着たいな』と、自分自身の生活の中で創作のアイディアを見つけるようなところがありますね。」
“何も考えずに着られるデザインの良さ”というものを成瀬さんのデザインから感じます。当初からお客さまや、周りの方々とともに成長していくことの大切さを一番に感じていらっしゃるんですね。
「毎日機嫌よく、暮らしていけるような服を作りたいなと思っています。」
冒頭におっしゃったように“肩肘張らない”という空気感がとても伝わるデザインですよね。
「ありがとうございます」
肩肘張らない、心地の良い洋服をつくる
リラックスしているときに着るような、落ち着きが感じられる洋服づくりを意識していると語る成瀬さん。背伸びすることなく、その時々の自分が“いま着たいもの”を追求する創作のスタイルが、同世代を中心に多くのファンを惹きつけるポイントなのかもしれません。
後編:「家の中でも自然を常に感じるような家にしたい」デザイナー・成瀬文子のインテリアへのこだわりや住まいのテーマについて