「“もの”よりも“こと”に興味がある」グラフィックデザイナー・佐藤卓が大切にしているデザインや好きな空間

「明治おいしい牛乳」や「ロッテ キシリトールガム」、「S&Bスパイス&ハーブ」など、シンプルながら印象に残るロングセラー商品のデザインを数多く手掛けるグラフィックデザイナー・佐藤卓。活動の領域はグラフィックデザインに限らず、商品開発からプロダクトデザイン、テレビ番組のアートディレクションなど多岐にわたります。今回は佐藤さんに、日常で大切にされているデザインやお好きな空間について伺いました。

グラフィックデザイナー・佐藤卓

佐藤 卓|MEMBER|Tokyo TDC

1979年東京藝術大学デザイン科卒業、1981年同大学院修了。株式会社電通を経て、1984年独立。株式会社TSDO代表。商品パッケージやポスターなどのグラフィックデザインの他、施設のサインや商品のブランディング、企業のCIなどを中心に活動。代表作に「ロッテ キシリトールガム」「明治おいしい牛乳」パッケージデザイン、「PLEATS PLEASE ISSEY MIYAKE」グラフィックデザイン、「金沢21世紀美術館」「国立科学博物館」シンボルマークなど。また、NHK Eテレ「にほんごであそぼ」アートディレクター、「デザインあ」「デザインあ neo」総合指導、21_21 DESIGN SIGHT 館長を務め、展覧会も多数企画・開催。著書に『塑する思考』(新潮社)、『マークの本』(紀伊國屋書店)など。毎日デザイン賞、芸術選奨文部科学大臣賞、紫綬褒章他受賞。

“もの”よりも“こと”のデザインに興味がある

まずは日常生活の中で大切にされているデザインについて伺いました。

「“もの”よりも“こと”のデザインに興味があります。ですので、早起きの習慣を保つことだったり歩く時間を作るといったことを大切にしています。また、朝の時間も好きで、平日は大体朝の5時に起きて7時には会社に到着しています。メールをゆっくり読んだり本を読んだり、スケッチしたりアイディアを出したりと、誰もいないところで集中できるのが良いですね。」

波を待つ時間が好き

デザイナーとして、お好きな空間はどういったものなのでしょうか。

「海の上、ですね。サーフィンが好きで、海の上でサーフボードにまたがっている時がこの上なく幸せな時間なんです。水平線を見て、波を待っている時の優雅な感覚、それが何物にも変え難いものに感じられます。」

レコードジャケットのビジュアルがグラフィックデザインとの出会い

自らもメンバーだったロックバンド“ミネソタファッツ”のCD。(ジャケットデザイン:津田充)

デザイナーを目指すきっかけはどういったものだったのでしょうか。

「父親がグラフィックデザイナーだったので、デザインという言葉は早くから耳にしていて身近な存在でした。あとは、中学生の頃から買い始めたLPレコードのジャケットデザインの影響が大きいですね。CDになる前のLPレコードのジャケットは30cm四方で少し大きい。そこにイラストがあって文字もあって、ファッションもあり、車もあり、といった感じに色々な要素がレコードを彩っていて、好きな音楽を聴きながらそのジャケットを見つめているのが好きでした。好きな音楽とビジュアルが自分に流入してくる感覚があって、そういった体験が将来こういうことをしたいと考えるようになるきっかけになりました。」

音楽がお好きなんですね。

「ロックが大好きで、大学時代には“ミネソタファッツ”というロックバンドもやっていました。レッド・ツェッペリンやピンク・フロイド、リトル・フィートなどをよく聴いていましたね。」

活動的な日常が柔軟な視点に繋がる

サーフィンやロックなど、意外な趣味をお持ちの佐藤さん。視覚的な要素に限らず幅広い視点で提案されるプロジェクトの数々は、こうした日々の活動からそのアイディアが生まれているのかもしれません。

後編:「仕事は一期一会」グラフィックデザイナー・佐藤卓が語る仕事へのこだわりや転機となったプロジェクト