レンゾ・ピアノによるスイスの自然に溶け込む美術館「パウル・クレー・センター」

スイス首都ベルン郊外に、画家パウル・クレーの作品が4000点以上も展示されている美術館、パウル・クレー・センターがある。そしてこの美術館、銀座のメゾン・エルメスや関西国際空港旅客ターミナルビル等を手掛けている、イタリア出身で国際的建築家レンゾ・ピアノによって設計された建築であるのだ。

レンゾ・ピアノ設計の美術館「パウル・クレー・センター」

ベルン駅から市バスで旧市街の景色を楽しみながら終点を目指す。首都ベルンの街を見下ろすように丘の上に立っており、ガラスとスチールでできた3つの波打つ形状が特徴的であるパウル・クレー・センター。施設全体が敷地に埋まって見えるデザインとなっており、ランドスケープと一体化し、パウル・クレーが尊重している「アートと自然」の調和がしっかりと表現されている。

パウル・クレー・センターは地下1階、地上1階の計2層の建物で、3つの波状の丘によって構成されている。丘の間の谷になった部分がエントランスだ。ガラスの回廊となっており、向こう側の構造が連続して見えるようになっている。

外方立形式のサッシや、鉄骨むき出しの庇など、斬新的な印象を抱く建築。構造にヒエラルキーを持たせず、全て等価に扱って軽やかな建築にするデザインはいかにもレンゾ・ピアノらしい。

自然光が差し込む開放感のあるアトリエ

正面ファザードに面する空間は、自然光がたっぷりと差し込み広々と開放的な空間である。3つのうちの一つのノースヒルと呼ばれるこのスペースは、カフェ、コンサートホール、セミナーホールなど、人々が集まる場所となっている。

大きな建築でも主構造になるものを目立たせないように、細い部材を連続させるデザインだ。

広々とした柔らかな空間の展示スペース

波上の天井がゆるくカーブしており、柔らかな印象の展示スペース。柱が一つもないフレキシブルな空間が、不思議と広々とした感覚になる。

ホワイトとブラウンでまとめられている展示スペースは、温かみを感じ、居心地が良く、作品が均一に並べられる展示方法のため、落ち着いて観賞することができる。実際の窓や扉の建具を用いて、パウル・クレーのアトリエが再現されているものもある。

パウル・クレー以外のアーティストの作品も多数あり、パウル・クレーが影響を受けたり、親交が深かったりする作家の作品が展示されている。展示内容が数ヶ月ごとに変わるので何度訪れても新鮮なアートを楽しむことができる美術館だ。

大きいものはあまりないが、ピカソなどの有名作家の作品も展示されている。

地下にも展示室があり、その時期に合わせた企画展が開催されている。そしてノース・ヒルの地下には子ども向けの展示室兼ワークショップスペースがある。パウル・クレー・センターは、単なる美術館ではなく、子どもから大人までインタラクティブにアートと触れ合うことのできる複合施設であるのだ。

パウル・クレー・センター隣にあるガラス張りのレストラン。太陽光を巧みに取り入れ明るく、芝生や木々に囲まれ、心地良い建築となっている。また周辺には、公園や、建物が風景と一体化している豊かな緑が広がる場所もある。

パウル・クレー・センターは、スイスの自然に溶けこんでおり、ガラスやスチールで作られているが、柔らかな雰囲気を感じる美術館で、レンゾ・ピアノらしさを感じる建築である。
故郷ベルンで観るパウル・クレーの作品は、自然豊かな場所だからこそ表現できるのだと感じる。世界中にあるパウル・クレーの作品の大半がここに集っているということもあり、十分に見応えがある美術館だ。

パウル・クレー・センター – Zentrum Paul Klee

開館時間:10:00~17:00
休館日:月曜日
入館料:20CHF
URL : http://www.zpk.org
住所:Monument im Fruchtland 3, 3000 Bern, Switherland