世界中から注目を集める左官技能士・挟土秀平が語る、大切にしている場所とデザイン。
毎週月曜日に2週に渡ってゲスト対談をしている福岡のラジオ放送CROSS FM「ライフスタイルメディア #casa」。ゲストは左官技能士・挟土秀平氏を迎える。1週目の今回は世界中から注目を集める挟土氏に、大切にしている場所やデザインについて話していただいた。
左官技能士・挟土秀平とは?
建物の壁や床、土塀などを塗り仕上げることを専門的とする職人・左官技能士。左官技術を活かしたアート作品も数多く発表し、個展も開催している。
挟土氏の作品は「土にこだわる壁づくり」が特徴の1つ。これまで様々なジャンルの建築現場で壁塗りを行う中で、その匠な塗り壁作りは「モダンかつ斬新」と称され、日本全国だけでなく海外でも活躍の場を広げている。
拠点を岐阜県飛騨高山に構える理由
「仕事は主に東京」という挟土氏。しかし、今でも作業の拠点は地元である岐阜県飛騨高山にある。その一番の理由は「左官業をする上で必要な素材とスペース」が飛騨高山にあるからだという。
挟土氏は自身の左官の特徴を「たくさんの素材が欲しいタイプ」と話し、その上で素材集めが充実しているこの土地を選んでいる。
「山の中に入り、土を採取して広げてみる」「木の繊維を解いてみる」そういった実験的な試みを、気軽にできる自然があることは、彼にとってとても重要なのだ。
挟土秀平が大切にしている空間
挟土氏が飛騨高山を拠点に置くもう1つの理由。それは「美術館みたいになっている」と話す大きな倉庫だ。
彼は、東京では簡単に手に入らないような広く大きなスペースでアートワークを作っている。中には仕事案件になる前のアートワーク作品がいっぱい並んでいて、その空間に入ると「ここまでいろんなことを思えたのか」という風景が広がっているという。
「これまでやったことのないものは、どれになるのか」という発想
挟土氏は左官の仕事について「できるだけ同じことをやりたくない」と話す。だからこそ、ずらりと今までのアートワークを大きなスペースに並べることで「今までやったことのない事」を探すことが効率的なのだ。
並べた作品をふと見た時に「全然違うことをやったな、と思いたい」という挟土氏。彼が述べた「もっとバラバラになりたい」という一言はとても印象的で、最後まで頭に残る言葉だった。
暮らしの中で大切にしているデザインとは?
「うーん…」と悩みながら、「スッと切れている線を引きたい」と挟土氏自身の左官・アーティストとしての目線で答えてくれた。それと同時に、日々「フレームで風景を見る」ことが多いという挟土氏。
どうゆう風に切り取ると綺麗なのか、まるで写真を撮るように目で眺めているという。自然を愛し、自然から学び、そこから独自の世界を作る彼だからこその目線と捉え方なのだろう。
会って感じる「感覚」を大切に想像を広げる
左官業の枠を超え、様々な分野で作品を手掛ける挟土秀平。クライアントからの依頼からどうやって想像を広げているのか?という質問に対し、その回答に「一度は会いたい」と話を始めた。
挟土氏は、依頼者個人の好みや感覚がどのようなものかを大切にしている。なぜなら、実際に対面して話をすると「この人はグレーがいいんじゃないかな?」「この人はグレーがいいんじゃないかな?」「多分、大胆でゾクッとするものが好きだな」と推理ができるからだという。
その上でコンセプト・図面・周りの仕上がり情報と合わせる。こうすることでお互いの相違もなく、依頼者がまずグッとくるものが出来上がることに繋がっているのだろう。
挟土氏はこのスタイルを「人を当てていくような気持ちが結構ある」と話し、ここでもまた、彼の考えと独特な言葉選びに魅了された。
海外から見た日本の左官技術
左官業はスタイルや仕組みは違えども、世界規模でたくさん存在する。外から見た日本の左官は、どう違うのだろうか?挟土氏は「日本の左官の繊細さや美しさは、大人と子供くらい海外と違う」と話し、日本の左官業の高品質・高技術のクオリティを改めて発信してくれた。
建築と近くで寄り添い、ともに創り上げるチームメイトと言っても過言ではない「左官」という職業。左官技能士・挟土秀平氏の話を通して、今回改めてその世界について深く知ることができた。自然と共存しながらも、大都会・東京での仕事をも行う挟土秀平氏。そのこだわりは、ジャンルを問わず発揮されている。