3階建てでも基礎不要。駐車場1台分に建つ木造の家「TIKKU」

© Jenni Gästgivar via: designboom.com

TIKKU(英語で“Stick”の意)は、「ヘルシンキ・デザインウィーク 2017」でポップアップしたマイクロアパート。駐車場1台分の2.5 x 5mの敷地の上に、1日で現場で組み立てられた基礎のない木造住宅です。可能にしたのはCLT(クロス・ラミネイティド・ティンバー)によるプレファブ工法です。

via: casagrandelaboratory.com

CLT(直交集成板)は、1990年代にヨーロッパで開発された集成木材。板の繊維方向を互い違いになるように重ねて接着した厚型パネルで、高層ビルの構造用材料としても使える高い強度と軽さが特徴です。日本でも、地域の森林資源の有効活用や持続可能な都市開発の建築素材として、政府が利用を促進しています。

TIKKUをデザインしたのは、CLT建築に数多くの実績を持つ、フィンランドのカサグランデ・ラボラトリー(Casagrande Laboratory)。自動運転車が普及した未来における駐車場の空きスペースを、手軽に住宅へ変換させることはできないかと考えられました。

TIKKUは、3階建てで総床面積は37.5平方メートル。生態学的に認証された北欧の森林に由来する20cmという極厚のCLTを使った壁構造で、断熱材なしでもフィンランドの冬の寒さに耐えられます。一晩で積み重ねて組み立て可能で、鉄筋コンクリートに比べて非常に軽量なため基礎は不要。デザインウィークの石畳の上に、バランスを取るための砂箱を置いて建設されました。壁面にある非常用の梯子がデザインのアクセントになっています。

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3階建てのマイクロアパートは、寝室、作業スペース、温室の3つのレベルから構成。

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1階のラウンジエリアには、デンマーク発のモダンファニチャーブランド、ボーコンセプト(BoConcept)の家具を配置しています。

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トップのガラス張りの温室には、色とりどりのたくさんの植物が飾られ、緊急時には非常口のサインのある窓から梯子を伝って脱出することが可能です。

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TIKKUは、ソーラーパネルでエネルギーを生成するオフグリッドな家として設計され、ドライトイレを備えています。水道やキッチン、シャワーはなく、街の周辺施設を利用するという、割り切った都市のミニマリストのライフスタイルを想定しています。

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学際的な建築会社であるカサグランデ・ラボラトリーの主任デザイナー、マルコ・カサグランデ(Marco Casagrande)は、台湾の新北市淡水区にある淡江大学にて、建築と都市デザインの教授を務めていた人物。CLT建築と「都市の鍼治療」というユニークなアプローチを組み合わせて、既存の都市の生態学的な復元に焦点を当てたバイオアーバンコミュニティを提唱しています。バイオアーバンコミュニティは、災害後の再建や、厳しい洪水や津波のリスクのある地域への適用も視野に入れています。

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日本の林業を復活させる国産CLTを発展させるには、国が災害時の仮設住宅用にCLTを買い取って備蓄するというアイデアがあります。TIKKUのようなCLT木造仮設住宅なら、断熱材不要で迅速な建設が可能。十分な厚みのCLTなら耐震性にも優れ、木材の自然な調湿機能で快適に居住できます。そこに都市の生態学的な復元というビジョンが加われば、住民が孤立しない、生き生きとしたコミュニティが再建できるのではないでしょうか。

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