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聖徳太子が触れた岩もある!日本建築が一堂に集まる杉本博司の「 江之浦観候所」とは?

1970年代からニューヨークを拠点とし、〈ジオラマ〉〈劇場〉〈海景〉などの大型カメラを用いた精緻な写真表現で国際的に高い評価を得ているアーティストである杉本博司。現在は写真のみならず伝統芸能など様々な領域で活動する杉本氏が、自らのこだわりを詰め込み長い年月をかけて作った施設「小田原文化財団 江之浦測候所」が、2017年10月9日に開館しました。その見どころとは?

杉本博司の20年が詰まった作品

写真家で現代美術作家の杉本博司氏が「構想10年、工事10年」の約20年をかけて完成させた江之浦観候所。伝統芸能の次世代への継承と現代美術の復興発展に努め、日本文化の向上に寄与することを目的としてつくられました。

こちらはギャラリー塔、石舞台、光学硝子舞台、茶室、庭園、門、待合塔などからなる複合施設となっており、杉本氏の20年来の構想をもとに〈新素材研究所〉(杉本博司、榊田倫之による設計事務所)と、大工や石工、土工、庭師、鬼師など数々の職人の手により日本の建築様式及び工法の各時代の特徴を取り入れて再現されています。また造園の為の景石には、古代から近代までの建築遺構から収集された貴重な考古遺産が随所に配されており、中には聖徳太子が触れたとされるものまで置かれています。

聞きなれない「観候所」とは、ある対象を観測し、測候する施設のこと。この〈江之浦測候所〉では冬至と夏至、春分と秋分といった季節の節目に太陽の軌道を確認することを目的としており、「夏至光遥拝100メートルギャラリー」と名付けられた測候設備が敷地の中心に位置します。

こちらのギャラリーの壁面は大谷石で覆われており、対面には一切の支えがない37枚のガラス窓が続きます。先端部は海に向かって開かれており、そこから実際の水平線を展望することも可能。

地下には、コールテン鋼を持ち込んで現場で溶接された隧道(トンネル)があり、年に一度、冬至の朝に水平線から昇る朝日が隧道の奥までまっすぐ差し込むようになっています。

ギャラリー内では写真家としても活動する杉本氏の作品が並び、ガラスに映える庭園の緑とともに作品を鑑賞することができる空間は開放感に溢れ、ゆったりと時間が流れます。今後は杉本氏以外のアーティストの作品を展示するそう。自然の中で触れるアートは、大きなギャラリーとはまた違った視点で楽しめるかもしれませんね。

水平線を望むガラス舞台

また、このギャラリーと対を成すのが「光学硝子舞台と古代ローマ円形劇場写し観客席」。冬至の日の出の軸線に合わせてつくられた約70メートルの隧道(「冬至光遥拝隧道」)に沿うように設計されたこの舞台は、檜の土台の上に杉本氏が作品づくりで多用する光学硝子を敷き詰めたもの。

フェレント古代ローマ円形劇場遺跡を実測して再現した観客席からは、硝子舞台を手前に深い青が美しい相模湾と、水平線上に広がる大空を一望することができる。この相模湾の水平線は、杉本自身「生まれて最初に記憶している風景」としており、これが後の代表作「海景」につながっているそう。

このほか、千利休作といわれる茶室「待庵」を本歌取りとして構想された「雨聴天」や2001年に廃業した箱根の名旅館「奈良屋」別邸の門を再現した「旧奈良屋門」など見所が盛りだくさん。

「寿命と資金が続く限り、ここで建築作品を作っていく。それが終わるまでは死にきれない」と杉本氏が全てを捧げる江之浦観候所は日本人としては必見です。

 

江之浦観候所

開館時間:4〜10月=1日3回(10:00、13:00、16:00) / 11〜3月=1日2回(10:00、13:00) ※定員制
休館日:火、水曜日
観覧料金:3000円(税別、中学生未満入館不可)
URL : http://www.odawara-af.com/ja/enoura/
住所:神奈川県小田原市江之浦362-1

千華

広告代理店営業から転身した新人インテリアデザイナー。横浜出身渋谷区在住のミレニアル世代の一人っ子。母方は佐渡島の系譜。趣味は料理とはしご酒。

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