建築家・深瀬ヤスノリが手掛けた家から出たくなくなるようなスキップフロア住宅

「家から出たくなくなるような家を」というご夫婦の想いを汲み取って、 建築家・深瀬ヤスノリが創り上げた今回の新築住宅。 深瀬氏ならではの繊細なデザインと、固定概念を超えた価値観で家族の希望を予想以上のものまで持っていく建築設計は、誰もを魅了する巧みな才能である。

ロケーションとその景観にうまく馴染むシックモダンな美しい外観

古民家が軒を連ね入り組んだ小道が羅を描く「昔ながらの景観」が美しい土地環境にも馴染み、渋い木質と落ち着きのある外壁のモダン住宅。傾斜のきつい前面道路沿いに建てられたロケーションをも最高の味方につけ、夕暮れ時には「思わず外に出たくなる」バルコニーからの夕日を独り占めできる。日が落ち始めると窓からこぼれる室内の暖かい照明が外観を心地よく照らし、また違った「顔」を見せてくれるのもたまらない。

道路の傾斜にあわせた「スキップフロア」で作る居住空間

傾斜面がきつい今回の立地条件に合わせ、採用したのは「スキップフロア」。視線が抜けるスキップフロアによって間仕切りなしでも視線が交わらない設計は「広がりと落ち着き」が共存し、動きのある空間が出来上がる。玄関を入ってから奥に向かって広がる1つの空間により、家族がどこにいても「つながり」がお互いに感じられ、お互いに尊重しながら居られるのも嬉しいポイントだ。

キッチンを見下ろせる家、キッチンから見渡せる外の世界

通常であればリビングに充てる庭沿いに、キッチンを設置。庭で遊ぶ家族を眺めながら料理ができる空間は、家族で共有できる時間を増やすことができる。また「キッチンから家族を見守る」だけでなく「家族がキッチンを眺める」間取りにすることで、共に暮らす者たちが尊重し合ったり、気遣い合ったり、いい意味で「気にし合える」関係性を作り上げることができるだろう。

「新たな価値観を持ってもらうこと、そのきっかけをつくること」

それは、建築家・深瀬ヤスノリがものづくりを通して伝えたいことである。

今回の新築住宅では、来客のためではなく「ご家族が過ごす空間」を一番に考えたスキップフロアでつながりのある空間づくりで、奥に広がる住まいを作り上げた。それぞれの家族の想いに合わせて「自分らしく住まうこと」を重視しながらも、深瀬氏の固定概念を超えた価値観の提案は、今回も期待以上の暮らしを魅せてくれた。

構造:木造/規模:地上2階/建築面積:55.89㎡/延床面積:106.81㎡

後編:広がりと落ち着きが共存する立体的な空間づくりが魅力的なデザイン住宅