ポートランド発。ユニークなトレーラー・タイニーハウスのDIYデザイン参考書
ポートランドのDIYカルチャーは、タイニーハウス作りにもそのユニークな個性を伝播しています。ここに紹介するのは、デジタルドキュメントにまとめられたトレーラー・タイニーハウスのデザインパッケージ。元ビルダーの経験とひらめきがギュッと詰まっています。タイニーハウスデザインにヒントとなりそうな、気になるものをいくつかピックアップしてみました。
以前はタイニーハウス専門の建築会社だった、オレゴン州ポートランドに本拠を置くシェルターワイズ (Shelter Wise) 。現在は、75平方メートル以下の居住空間を対象に、エネルギー効率にフォーカスした独創的で高品質なタイニーハウスのDIYプランを開発・販売しています。
2段ボックスという意味のバンクボックス (Bunk Box) は、インダストリアル・シックをテーマにしたデザイン。壁のフレームを石膏ボードや木製パネルで覆わずにそのまま残し、電気配線や配管を露出させた、いわば「むきだしのデザイン」です。ハウスフレームの覆いを除くことで、室内の有効スペースが18センチ拡張します。インダストリアルなインテリアが好みなら、スペースも節約できる一石二鳥のデザインというわけです。
バンクボックスは、16フィート(4.9メートル)シャシーのトレーラー向けで、メインフロアの床面積は125平方フィート(12平方メートル)、寝室用のロフトは72平方フィート(7平方メートル)の広さがあります。フラットな屋根のむきだしのフレームにより、ロフトには114cmの天井高を確保できます。2つの大きな天窓が、豊かな自然光や夜の星空を室内に引き入れます。
オプションのガラス張りのドアを追加することで、6つの窓と共に、自然光とランドスケープ、新鮮な空気をリビングスペースにもたらします。
バスルームやキッチンには、ステンレススチール製のシンプルな商業用プロダクトを採用。インダストリアル・シックというテーマが納得です。提供されるDIYプランには、シンク、シャワー、タンクレス温水器、バス換気扇、コンポストトイレなどの該当製品の詳細も掲載されているので、購入も簡単。
照明はもちろんエジソンバルブ。
バンクボックスは壁のフレームがむきだしなので、5センチ厚の独立気泡断熱材で壁全体を断熱しています。熱損失のほとんどを防除でき、従来の断熱材パッケージよりも優れた性能を発揮するとのこと。フロア構造部もスチール製のトレーラーから隔離・断熱されており、標準的な断熱では防げない冬の底冷えも感じることがありません。「まるで品質の高い魔法瓶のように、暖かい空間は暖かく、冷たい空間を冷たく保ちます」と謳われています。
写真で示されているプランでは、焼杉材によるサイディングが用いられていますが、どんなサイディング素材でも自由に使用可能です。バンクボックスのむき出しのインダストリアル・スタイルは、インテリアもエクステリアも、マテリアル自体がデザインのキーとなります。DIY作業者がタイニーハウスに、オリジナルのルック&フィールを簡単に反映できるデザインパッケージとなっています。
バンクボックスは、一人暮らしに最適なタイニーハウスですが、カップルや家族向けに、20フィート(6.1メートル)から28フィート(8.5メートル)シャシーにも、デザインを修正することが可能です。ゲストルームやオフィススペースとしても活用できそうな印象です。
ヒカリボックス (Hikari Box) は、シンプルな建築プロセスで建てることができる、明るく開放的なモダンデザインのタイニーハウス。
24フィート(7.3メートル)シャシー用では、1階部分が184平方フィート(17平方メートル)あり、クイーンベッド用の79平方フィート(7平方メートル)のロフトと、収納用かツインベッドが置ける23平方フィート(2平方メートル)の2つのロフトがあります。
14箇所の窓と2つの天窓が、日本語で「光」を意味するタイニーハウス・ヒカリボックス(Hikari Box)を、エネルギー効率を犠牲にすることなく室内を明るい光でいっぱいに満たします。
メインロフトにつながる階段の下には、日本のタンス収納にインスパイアされた収納ボックスが格納されています。
シェルターワイズはヒカリボックスを、今までに手がけた中でもっとも簡単に作れるタイニーハウスと言っています。取り付け式のメタルルーフは、切妻や湾曲した屋根によく見られる複雑なディテールから作業者を解放します。すべての配管は、家のあちこちに走らせる必要がないよう1つのコーナーに集められ、タンクレス給湯器は壁の中に埋め込まれています。
サイダーボックス (Cider Box) は、2重ルーフのファサードのデザインが特徴的。この構造によりスペースを拡張し、計画的に配置された採光窓やオプションの天窓、全面ガラスドアを通して光が流れ込みます。
20フィート(6.1メートル)と24フィート(7.3メートル)のシャシーに対応し、2つの独立した寝室、フルキッチン、ランドリースペースを設置できるスペースがあり、カップルや小家族向けのタイニーハウスです。
メインロフトは、梯子ではなく収納コンパートメントになっている階段でアクセス。キッチンには、4バーナーストーブとバーシートのあるカウンタースペースがあります。
ZINEカルチャーが盛んなポートランドから、タイニーハウスのデザイン参考書がデジタル販売されているのは意外なような当然のような。たしかに個人のDIYerには、シェルターワイズの手頃な価格の資料はたいへん価値のあるものでしょう。アメリカでタイニーハウス・ムーブメントが浸透している現実を実感します。