開放的で住み心地が良い空間と機能性が同居した白いモダンな外観の平屋住宅。

季節で折々の景色を魅せ、自然が美しい山形県山形市。古き良き景観と新たな建築が混ざり合うニュータウンに今回、建築家 内山里江が手がける平屋住宅が誕生した。山形の豊富な自然をふんだんに取り込みながらも、巧みな空間づくりと機能性を惜しみなくつぎ込んだその暮らしのカタチとは一体?

ふたり暮らしを心地よく。住まう家族に合わせた空間づくり

ひとつの家をひとつの部屋のように創り上げた今回の平屋住宅は、玄関から屋内へ入るとパッと広がるLDKが印象的。必要と思える場所のみに壁を造り、極力は「柱」で仕切る設計が「ふたり暮らしサイズ」の敷地を開放的にし、ふたりだからこそ魅力的な暮らし方を実現させている。

広々とした対面キッチンでキッチンを主役に

今回の平屋住宅で言わば「家の中心」となっているのは、広々とした対面キッチン。リビングの中にキッチンを置くことで、家族のコミュニケーションがしやすく「キッチンで集まって過ごす」ことも可能にした。

キッチンカウンターは、ダイニングカウンターと板一枚で繋がり、更に目線の先には広大な山形の山々の見晴らしが清々しい。

土間玄関で山形の環境と関わりやすい生活を生む

横に長い土間玄関は、外の世界と室内をいい意味でフラットにすることができる。寒さが厳しい山形でも室内で衣類についた雪を払ったり、外へ行く準備を完結できるのは嬉しい優しさだ。

主婦も納得、「なるほど!」がいっぱいの家事導線

土間玄関に隣接した水廻りも、今回の物件の見どころの1つだ。通常であれば「内側」へ持っていくであろうランドリー・バスルーム・トイレ・洗面、そしてクローゼット。それらを敢えて玄関に近いところへ設置したのは斬新かつ「なるほど!」な新しい設計の形になっている。

「家を出る前には身だしなみをチェックして、家に帰ればすぐに手を洗い、シャワーを浴びたい。汚れを室内へ持ち込まない。」正に、暮らしを考えた「ごもっともな答え」だ。

学生時代や新社会人の頃、1Kや1Rに住んでいた人にとっては、玄関に入ってすぐに洗面所・バスルームがあったり、洗濯機があることが「本当は便利だった」と感じる人も多いのではないだろうか?

洗練した漆喰が美しい白壁に囲まれたベッドルーム

壁の上部から優しく注ぐ陽の光が轟々しくないので心地よい目覚めを誘い、包まれるようにコンパクトで暖かい寝室は、ホッと落ち着くことができる。一般的にベッドルームに設置されるクローゼットは外に出し「眠るためだけのプレミアムな空間」を作った。

開放的で外の景色も堪能できる大きな窓を多く取り入れた住まいだからこそ「巣に籠る」ことができる空間があることで生活のバランスをうまくとっているのだ。

地域性と住む人に合わせた平屋住宅のあり方

「ふたり」という家族構成だからこそ「可能にできるメリット」を見逃すことなく組み込んだ内山氏の設計。いつの間にか当たり前になっていた間取りの形を「言われてみれば、そうある必要は全くないよな」と納得する。

根本を今一度考え直したくなるようなポイントの数々は、これから家を建てる上でのヒントも多いだろう。

 

建築家:内山里江/所在地:山形県山形市/構造:木造/規模:地上1階/敷地面積:334.92㎡/建築面積:105.58㎡/延床面積:105.58㎡