福岡・薬院にあるプリツカー賞建築家・磯崎新が手掛けた鮨屋「やま中」

福岡の薬院にある寿司屋「やま中」。コンクリート打ち放しの壁にガラスのカーテンウォール、寿司屋とは思えない斬新な建築。磯崎新の設計見たさにこの「やま中」に訪れる人もいるという。

住宅地に突如出現する斬新な建築物

ガラスのカーテンウォールとコンクリート打ち放しの外観で、マンションなどが多い住宅地の中ではかなり目立つ。

店構えは重厚で高級店の雰囲気がある。

エントランスは吹き抜けでガラスのカーテンウォールから柔らかい光が差し込んでいる。

中はオレンジとブルーの対象的な店内。室内を照らす照明の光は淡く均一に満たされており、外観からは想像つかない空間が広がっている。テーブル席のブルーの壁は半透明のガラスになっていて、椅子には磯崎新氏こだわりのモンローチェアが使われている。

カウンター席は雲のように表現された照明が特徴的だ。席数は20ほど。板前さんと会話しながら食事を楽しめる。

磯崎新の建築に対する姿勢

Via : Wilipedia.

「建築界のノーベル賞」と呼ばれるプリツカー賞。磯崎新は2019年に授与された。日本人としては、丹下健三や槇文彦、安藤忠雄、妹島和世+西沢立衛、伊東豊雄、坂茂に続き、8人目の受賞者となる。

磯崎はポストモダン建築を牽引した建築家の一人だと言われている。彼は、常に社会への批評的な立場で活動を行ってきた。磯崎の出発点は大分市の「新世紀群」という絵画サークルから始まっている。後にネオ・ダダ(1960年代のアメリカ合衆国の美術家や美術運動)で活躍した数人も在籍していた前衛的な場であった。ネオ・ダダは新宿百人町の磯崎が設計した吉村アトリエ、通称ホワイトハウスを拠点に反芸術的活動を展開しており、磯崎もたびたびそこを訪れていた。この時点において磯崎はネオ・ダダ的建築家として最も過激な思想とも言える。

1980年代以降はロサンゼルス現代美術館、ブルックリン美術館など海外にも活躍の幅を広げている。閉塞的な日本から、世界的な次元で建築に挑む姿勢は、日本国内では批判されるが、結果的に日本の現代建築を世界的なレベルに押し上げたとも言える。

磯崎建築で愉しむお寿司

プリツカー賞受賞建築家・磯崎新の建築で食べる寿司は格別である。建築家も一流なら寿司職人も一流で、ネタも技術も妥協がない。

もともと美味しいネタに一手間加えたお寿司は「やま中」でしか食べられない。

磯崎建築と同じようにデザインされているお寿司を堪能できる。

 

やま中の寿司屋に似つかわないコンクリートとガラスの外観や、天井が高く広い店内は、こういった磯崎新氏の西洋的感覚と常に常識と対峙してきた姿勢を表しているとも言えるだろう。

やま中 本店

営業時間 : 11:30~22:00
定休日 : 日曜日
電話 : 092-731-7771
URL : http://www.sushi-yamanaka.jp/
住所 : 福岡市中央区渡辺通2-8-8