プリツカー賞受賞建築家、故フランク・ゲーリーによる「グッゲンハイム・アブダビ」が2026年12月11日に開館

建築界の巨匠が遺した最後の大作が、いよいよ扉を開きます。アブダビ文化観光局(DCTアブダビ)は、近現代美術館「グッゲンハイム・アブダビ」を2026年12月11日に開館すると発表しました。設計を手がけたのは、2025年12月に96歳で世を去った、プリツカー賞受賞建築家フランク・ゲーリー。ビルバオ・グッゲンハイム美術館やフォンダシオン ルイ・ヴィトンなど、20世紀後半から21世紀にかけての美術館建築を刷新し続けた建築家が構想した、集大成とも言えるプロジェクトです。

海と陸が交わるサディヤット島に立つ、彫刻としての建築

完成予想図

グッゲンハイム・アブダビが位置するのは、陸と海が交わるアブダビのサディヤット島です。地域に深く根ざした建築的ランドマークとして、来館者を美術館のキュレーションの旅へと誘う存在として構想されました。

建物の最大の特徴は、ダイナミックなスカイラインを彩る10基の彫刻的な円錐です。そのうち9基はステンレスメッシュで覆われ、1基はオニキスとガラスで仕上げられています。最高88メートルの高さを誇るこれらの円錐は、単なる造形上のモチーフではありません。自然換気と日陰を提供し、建物のエネルギー効率を高めるという機能を担いながら、同時にその大胆なシルエットを際立たせています。

砂漠の気候における伝統的な建築の知恵——風を通し、影をつくるという原理を、ゲーリーらしい造形言語に翻訳した構成と言えるでしょう。湾岸地域の建築様式から着想を得たとされるこの形は、彼が生涯を通じて追求してきた「彫刻としての建築」の到達点のひとつです。

30のギャラリーが織りなす、非直線的な鑑賞体験

建物内には30のギャラリーが広がり、中央のアトリウムと10基の円錐によって結ばれています。屋内ギャラリースペースは11,600平方メートル、屋外展示エリアは23,000平方メートル、延べ床面積は80,000平方メートルに及びます。1960年以降の芸術が持つ圧倒的なスケール、多様なメディア、実験的な性質にふさわしい規模です。

注目すべきは、その鑑賞体験の設計思想です。来館者は「抽象芸術」「大衆文化」「土地」「言語」「物語」など、1960年以降の芸術の主要な潮流を考察したギャラリーを巡り、自分だけの鑑賞ルートを築くことができます。直線的な年代順ではなく、関係性や共鳴を通じて美術史を探求するよう促す構成です。

相互につながる空間を通じて来館者の旅を広げる建築のあり方は、芸術体験に欠かせない要素として位置づけられています。外観では力強い存在感を放ち、内部では没入感のある体験を提供する——建築とキュレーションが一体で設計されたことが伝わってきます。

サディヤット文化地区という、世界有数の文化集積

グッゲンハイム・アブダビは、ルーヴル・アブダビ、ザイード国立博物館、アブダビ自然史博物館、teamLab Phenomena Abu Dhabiなど、サディヤット文化地区で発展を続ける美術館や文化施設の一員となります。ジャン・ヌーヴェルによるルーヴル・アブダビをはじめ、世界的建築家による施設が集積するこの地区は、今回の開館によって世界でも有数の文化施設集積地としての位置づけをさらに強めることになります。

ニューヨーク、ヴェネチア、スペインのビルバオに展開するグッゲンハイム美術館群の一翼を担う存在でもあります。数千年にわたり文化と貿易の交差点となってきたこの地域において、アブダビの伝統によって形作られた独自のアイデンティティを体現する美術館として構想されています。

「文化こそが人々をつなぐ最も永続的な架け橋」

アブダビ文化観光局 会長のモハメド・ハリファ・アル・ムバラク閣下は、この美術館を「私たちの文化的な歩みにおける決定的な瞬間」と表現しています。文化こそが人々をつなぐ最も永続的な架け橋であり、未来志向の社会を築く礎であるという首長国の信念に基づいて形作られた場所であること。そして誰もが居場所を見つけ、美術館が語る物語に自分自身を投影し、世界中のアイデアや芸術的な声と触れ合うことができる場所であること——その理念が語られています。

ソロモン・R・グッゲンハイム財団のディレクター兼最高経営責任者、マリエット・ウェスターマン博士も、この地域を中心にしながらもすべての大陸からの作品を取り揃えた、地域性とグローバル性を兼ね備えたユニークなコレクションであると強調しています。

コレクションは2009年以来、着実に拡充されてきました。絵画、彫刻、インスタレーション、写真、映像、ニューメディアなど幅広い芸術媒体を網羅し、年代順や地理的な枠組みを超えて、芸術的な系譜、ネットワーク、交流に焦点を当てる構成となる予定です。

建築家が遺した、最後の物語

フランク・ゲーリーは2025年12月5日、カリフォルニア州サンタモニカの自宅で96歳の生涯を閉じました。ビルバオ・グッゲンハイム美術館で衰退した地方都市を再生させ、ウォルト・ディズニー・コンサートホールやフォンダシオン ルイ・ヴィトンで建築の可能性を押し広げ続けた建築家です。

その彼が構想し、完成を見ることなく世を去った建築が、いま扉を開こうとしています。10基の円錐が砂漠の風を受け、内部に光と影を落とす——その空間に立ったとき、私たちはゲーリーが最後に描こうとした風景に触れることになるのかもしれません。

コレクションや委嘱作品に関する詳細は、今後数ヶ月のうちに発表される予定です。開館まであとわずか。アブダビから、新しい美術館の物語が始まります。