隈研吾と日建設計などが参加して完成した「MoN Takanawa」が『世界で最も美しいミュージアム 2026』リストに選出!
2026年3月に開館したばかりの「MoN Takanawa: The Museum of Narratives(モン タカナワ)」が、国連教育科学文化機関(ユネスコ)が主催する世界的建築賞「Prix Versailles(ベルサイユ賞)」の「世界で最も美しいミュージアム 2026」リストに選出されました。日本のミュージアムとしては、2024年の下瀬美術館(広島県大竹市)に続く2館目の快挙です。隈研吾による流麗な外装と、日建設計ら4者による内装が融合したこの建築が、なぜ世界的な評価を勝ち得たのか。その背景と空間の思想を読み解きます。
ベルサイユ賞とは何か——「美しさ」の先にある評価軸

ベルサイユ賞は2015年、ユネスコ本部で創設された国際的な建築賞です。単なる造形の美しさを競うコンペとは一線を画し、審査においては革新性や創造性に加え、地域遺産の反映、生態系への配慮、社会的交流と参加の価値といった国連が重視する要素を統合した「インテリジェント・サステナビリティ」の原則に基づいて評価されます。
つまり、ベルサイユ賞に選ばれるということは、建築が環境・社会・文化に対してどのような姿勢で立っているか、そのすべてが問われるということです。MoN Takanawaが今回「世界で最も美しいミュージアム 2026」の7施設に名を連ねたことは、見た目の美しさだけでなく、建築思想の深さが世界に認められた証と言えます。
鉄道発祥の地・高輪に生まれた、都市の「緑の丘」

MoN Takanawaが建つのは、日本の鉄道発祥の地として知られる東京・高輪エリアです。JR東日本が主導する国内最大級の複合開発「TAKANAWA GATEWAY CITY」の文化創造・発信拠点として構想され、「100年先へ文化をつなぐ」をミッションに掲げています。
緑豊かな螺旋状のフォルムが、外観から内部空間へと流れるように続くこの建築は、ミュージアムの「閉じた箱」という従来の印象を根本から覆しています。都市の喧騒の中に、緑の丘として静かにそびえる——それが隈研吾の描いた理想像です。
4者の設計チームが実現した「開かれた内部空間」

内装設計を担ったのは、品川開発プロジェクト(第Ⅰ期)設計共同企業体として集結したJR東日本建築設計・JR東日本コンサルタンツ・日本設計・日建設計の4者です。開放的な吹き抜け空間を、段差のある床とスロープによって緩やかに連続する立体構成としたことで、来館者が展示・パフォーマンス・交流といった多様な活動を横断的に体験できる空間が生まれました。
外装の隈研吾が「緑の丘」という都市へのジェスチャーを描いたとするならば、内装の設計チームはその丘の内側に「自由に動き回れる立体的な風景」を刻み込んだと言えるでしょう。外と内が、それぞれ異なる手で設計されながらも、一貫した思想のもとに統合されている——その点に、この建築の豊かさがあります。
「MoN」という名前が持つ、二重の意味
「MoN Takanawa: The Museum of Narratives」という名称には、深い意図が込められています。The Museum of Narrativesの頭文字「MoN」は、新たな自分と出会う新しい世界への「門」、そして未来を考え創造するための「問(問い)」という二つの意味を持ちます。
伝統からマンガ、音楽、宇宙まで——幅広い文化的領域を横断しながら、訪れた人が新しい問いを持ち帰ることを促す「実験的なミュージアム」という設計思想は、建築のあり方とも深く共鳴しています。螺旋状に続くスロープを歩きながら、展示と空間と光が交差する体験は、見ることそのものへの問いかけになっています。
世界7施設に選ばれた意味——東京から発信される建築の可能性
今回の「世界で最も美しいミュージアム 2026」リストには、アラブ首長国連邦・中国・リトアニア・アメリカ・ウズベキスタンの施設とともに、MoN Takanawaが名を連ねています。最優秀賞、内装特別賞、外装特別賞の発表は2026年末の授賞式を予定しており、MoN Takanawaがさらなる栄誉を受けるかどうか、世界が注目しています。
MoN Takanawa: The Museum of Narratives
所在地: 東京都港区(TAKANAWA GATEWAY CITY内)
開館: 2026年3月28日
外装設計: 隈研吾
内装設計: 品川開発プロジェクト(第Ⅰ期)設計共同企業体(JR東日本建築設計・JR東日本コンサルタンツ・日本設計・日建設計)
運営: 一般財団法人JR東日本文化創造財団