建築史家・倉方俊輔による『建築を旅する 歴史と地域を楽しむ「建築ツーリズム」のすすめ』が発売!

旅先で建築を楽しむという行為が、いま改めて注目を集めています。建築を目的にその土地を訪ねることはもちろん、旅の途中で偶然出会った建物に目を留めることも、地域の歴史や文化を知る大きなきっかけになります。そんな“建築をめぐる旅”の魅力を一冊にまとめた新刊『建築を旅する 歴史と地域を楽しむ「建築ツーリズム」のすすめ』が発売されました。著者は、テレビや雑誌、各種メディアでも建築の面白さをわかりやすく伝えてきた建築史家・倉方俊輔です。本書は、日本全国から厳選した60件の建築を紹介しながら、建築を見ることと旅することを結びつける、新しいガイドブックとして位置づけられています。

建築を“学ぶ”本ではなく、建築を“旅する”ための本

本書の魅力は、建築を専門的に論じる読み物というよりも、実際にその場所を訪ねたくなる視点で構成されているところにあります。紹介されるのは、北海道から沖縄まで全国各地に点在する60の建築です。扱われる時代も幅広く、幕末から現代までを視野に入れながら、美術館、図書館、庁舎など多彩な建築が取り上げられています。単に著名建築家の代表作を並べるだけではなく、その建物が地域の中でどのような意味を持ち、どのような歴史や風景と結びついているのかが丁寧にひもとかれている点に、本書ならではの面白さがあります。建築単体を鑑賞対象として切り離すのではなく、街並みや土地の記憶とともに味わう。その視点が、「建築ツーリズム」という言葉にしっかりと説得力を与えています。

また、各スポットでは歴史的背景を紹介する本文に加え、周辺の旅へと誘う補足情報や、細部に着目させる写真キャプションも掲載されており、建築の知識が豊富な読者だけでなく、これから建築を楽しんでみたいという人にも入りやすい内容になっています。難解な専門用語で読む人を選ぶのではなく、建築を見る喜びをひらいていく。そうした編集方針は、建築を好きな人の裾野を広げていくうえでも大きな意味を持っています。旅のガイドとしても、建築の入門書としても読めるバランス感覚が、この本の価値を高めているといえるでしょう。

倉方 俊輔(くらかた・しゅんすけ)

1971年東京都生まれ。1994年早稲田大学理工学部建築学科卒業、1996年同大学院修了。博士(工学)。大阪市立大学准教授などを経て、2023年から大阪公立大学大学院工学研究科教授。日本近現代の建築史の研究と並行して、日本最大級の建築イベント「東京建築祭」の実行委員長、「イケフェス大阪」「京都モダン建築祭」の実行委員を務めるなど、建築の価値を社会に広く伝える活動を行っている。

著書に『京都 近現代建築ものがたり』(平凡社新書)、『神戸・大阪・京都レトロ建築さんぽ』、『東京モダン建築さんぽ』、『東京レトロ建築さんぽ』(以上エクスナレッジ)、『吉阪隆正とル・コルビュジエ』(王国社)ほか。日本建築学会賞(業績)、日本建築学会教育賞(教育貢献)、グッドデザイン賞グッドデザイン・ベスト100など受賞。Peatix「倉方俊輔オンライン」で海外旅行が深まる建築レクチャーなどを展開中。

歴史と地域を手がかりに、建築の見方が変わる

建築の魅力は、形の美しさや空間の気持ちよさだけではありません。その建物がなぜそこに建てられたのか、どのような時代背景のもとで生まれたのか、地域の風土や産業とどう関わっているのかを知ることで、見え方は大きく変わります。本書はまさにその入口をつくる一冊です。旅先で名建築に出会ったとき、外観を眺めるだけで終わるのではなく、その土地の歴史や文化、暮らしとの関係を想像してみる。すると建築は、ただの“建物”ではなく、その土地に積み重なってきた時間や人の営みを映すメディアとして立ち上がってきます。

とりわけ近年は、美術館やホテル、公共施設などを目的に旅先を選ぶ人も増え、建築そのものが移動の動機になる場面が珍しくなくなりました。そうした流れのなかで、「建築ツーリズム」という考え方はますます広がりを見せています。本書は、その楽しみ方を単なる流行としてではなく、歴史と地域への理解を深める文化的な体験として捉えている点が印象的です。建築を見に行くことは、地域の過去と現在を立体的に知ることでもある。そんな当たり前でいて見落としがちな視点を、本書は軽やかに提示してくれそうです。

倉方俊輔ならではの、親しみやすく奥行きのある視点

本書の著者である倉方俊輔は、建築史家として研究を重ねる一方で、一般の読者や視聴者に向けて建築の魅力を伝える活動でも広く知られる存在です。書籍紹介でも「建築とまち歩き」でおなじみとされているように、建築を閉じた専門領域の中だけで語るのではなく、街を歩き、地域を見て、人の営みとつなげながら紹介していく姿勢が特徴です。そのため、本書でも難しい理論を前面に押し出すのではなく、実際に訪ねてみたくなるような視点や語り口が期待されます。学術的な裏付けを持ちながらも、旅の高揚感を損なわない距離感で建築に触れられることは、多くの読者にとって大きな魅力になるはずです。

建築の本というと、設計者や様式、図面や専門用語が前面に出た少しハードルの高いものを思い浮かべる人もいるかもしれません。しかし本書は、そうした堅さよりも、建築を見る楽しさや土地を歩く豊かさを先に感じさせてくれる一冊といえそうです。建築が好きな人にとっては旅の精度を高める手引きとなり、これまで建築に強い関心を持ってこなかった人にとっては、新しい旅の入口になる。読む人それぞれの旅の感度を少し上げてくれるような存在として、幅広い支持を集めそうです。

旅の目的地を探している人にも、建築好きにもすすめたい一冊

『建築を旅する 歴史と地域を楽しむ「建築ツーリズム」のすすめ』は、旅先選びのヒントを探している人にも、次に訪ねるべき建築を探している人にも手に取りやすい本です。紹介されるのが全国60件という点も絶妙で、情報量としての充実感がありながら、実際に旅の候補地としてイメージしやすい規模に収まっています。気になる建築を起点に旅の計画を立ててもいいですし、行きたい地域から逆引きするように建築を探すのも面白いはずです。建築をきっかけに、その土地の食や風景、歴史へと関心が広がっていく。そんな旅の連鎖を生み出してくれるところに、この本の実用性があります。

情報があふれる時代だからこそ、どこへ行くかだけでなく、どう見るか、どう味わうかが旅の質を左右します。本書は、建築を通して地域を見る視点を与えてくれることで、旅そのものの解像度を高めてくれる一冊といえます。建築を訪ねる行為は、写真映えするスポットを巡ることとは少し違います。そこに流れてきた時間に触れ、その土地の固有性を感じ、街の輪郭を立体的に理解していく営みです。その意味で本書は、単なるガイドブックではなく、旅の感受性を育てる本でもあるのでしょう。

『建築を旅する 歴史と地域を楽しむ「建築ツーリズム」のすすめ』

建築史家・倉方俊輔による『建築を旅する 歴史と地域を楽しむ「建築ツーリズム」のすすめ』は、建築を見ることと旅することを結びつけながら、日本各地の地域性や歴史を味わうための一冊です。全国から厳選した60件の建築を通して、専門知識がなくても建築を楽しめる入口をひらいてくれます。旅先で建築に目を向けてみたい人、街歩きをもう一歩深く楽しみたい人、そして建築をきっかけに地域の魅力を再発見したい人にとって、手元に置いておきたくなるガイドブックになりそうです。