
建築家・深瀬ヤスノリが手がけた、長崎県北松浦郡佐々町の1日1組限定の宿泊施設「然10」
長崎県佐々町に佇む1日1組限定の宿泊施設「然10(ぜんいちまる)」。建築家・深瀬ヤスノリによって手がけられ、静けさと余白を大切にした設計で、訪れる人の感覚をそっと研ぎ澄ませてくれます。
機能や装飾はできるだけ抑えられ、静かに心を動かすこの空間は、建築を通して「自分自身と向き合う時間」を与えてくれることでしょう。
長崎県北松浦郡佐々町の1日1組限定の宿泊施設「然10」
2023年6月にオープンした長崎県北松浦郡佐々町の「然10」。のどかな自然に囲まれた場所に佇んでおり、1日1組限定という特別な宿泊体験を提供しています。
外観は、風景の一部であるかのように控えめのデザインです。飾り気の一切ないファサードが印象的で、周囲の木々と馴染むように淡いベージュの壁で仕上げられています。
入り口は一段引っ込んだ位置にあり、錆びたような深いブラウンの鉄扉が重々しく迎えてくれます。
明確な区切りがなく開放感のある室内
室内は、床、壁、天井、すべてが調和したニュートラルな色合いの空間が広がっています。天井に並んだ木の梁は、静かでシンプルな空間の中に、やさしく動きを生み出していることが印象的です。
そしてこの然10は、部屋ごとの明確な区切りがないことも特徴です。空間と空間の間を曖昧にしていることによりたっぷりの開放感を感じられます。そして室内と外の間には、一枚の大きなガラス戸が。ガラス越しに見える木々の緑や、光、まるで空間の一部かのように自然に入り込んでいます。
シンプルで洗練されているインテリア。ラウンド型のダイニングテーブルは、直線的な建築ラインとの“対比”によって、空間にやわらかさをもたらしています。
小上がりのシンプルな作りの寝室
小上がりになっているシンプルな作りの寝室は、余計な家具や装飾もなく、一枚のマットレスのみ。照明も小さなペンダントライトがひとつだけ設けられており、余分なものが一切ありません。ガラス越しには、豊かな自然の景色が広がっており、カーテンのない窓から差し込む朝の光で、自然と目が覚めることでしょう。
外と中が、緩やかにつながる中庭
こちらは、外にいるのにまるで室内にいるような不思議な感覚を覚える中庭です。天井は室内と同じリズムで木の梁が外まで続いています。開口部は大きく、周囲の自然がまるでこの空間の一部のように入り込んでくることも魅力です。そして、床がひと段下がったスペースには、ひっそりと焚き火台が。
この空間に置かれているのは、煙や煤を一切出さず、屋内外問わず設置できるのが特徴的な、「EcoSmart Fire(エコスマートファイヤー)」です。電気やガスを使わず、再生可能な植物由来の燃料であるバイオエタノールを使用しており、安全性と美しさを両立しています。
夜になれば、暖かな炎を見つめながら、親しい人と静かに語り合ったり、一人でゆっくりと自分だけの時間を味わうこともできそうです。
グレートーンに包まれる、静けさのバスルーム
白く丸みを帯びたバスタブが目を惹くバスルーム。天井のダウンライトは控えめに配置されており、必要な光だけを柔らかく落とします。壁や床にはグレージュトーンのタイルが使われており、シャワーや水栓はすべてブラックで統一され、空間に引き締まった印象を与えています。
奥に設けられた洗面スペースには、大きな丸い鏡とシンプルなカウンターがあり、朝の身支度を、ゆっくりと丁寧に行いたくなるような静けさがあります。
トイレの壁には、丸い鏡がひとつ設置されています。そのまわりをぐるりと縁取るように間接照明があしらわれていて、まるでやわらかな月のように空間を照らしています。
建築家・深瀬ヤスノリによる1日1組限定の宿泊施設「然10」
長崎県北松浦郡佐々町の1日1組限定の宿泊施設「然10」。建築家・深瀬ヤスノリによって手がけたられたこの空間は、建築と自然、そしてわたしたちの“内側”をやさしくつないでくれます。そして、敷地内にはフィンランド式サウナも完備。然10で過ごす時間は、ただの“宿泊”ではなく、自分と向き合い、自然と調和し、暮らすように深呼吸できる体験そのものと言えることでしょう。
然10
住所:長崎県北松浦郡佐々町栗林免243−1
Instagram:https://www.instagram.com/zen10.zenichimaru/