
出展10周年となるミラノデザインウィーク2025で「bud brand(バッドブランド)」として出展した8つの作品 。
前編:2年ぶりにミラノデザインウィーク2024に登場する「bud brand(バッドブランド)」に9校・9つの作品が出展 !
2025年のミラノデザインウィークで、10周年を迎えた「bud brand(バッドブランド)」が出展し、世界中の注目を集めた8つの革新的な作品たち。次世代を担う日本の若きクリエイターたちが、「木」という素材を通して、持続可能な未来への新たな可能性を提示しました。
2025年のテーマは『”木”の可能性をひろげるエシカルなプロダクト』
地球規模で気候変動が深刻化する現代において、CO2排出による温暖化は喫緊の課題です。世界中で持続可能な開発目標(SDGs)に基づいた環境配慮の取り組みが加速しています。日本においても、森林資源の有効活用や林業の再生を目指し、間伐材や端材を新たな価値に変えるアップサイクルの動きが活発です。
このような背景を踏まえ、bud brandが2025年のミラノデザインウィークで掲げるテーマは『”木”の可能性をひろげるエシカルなプロダクト』です。古くから人々の暮らしに深く根差し、これからも欠かすことのできない「木」という素材。その本質的な魅力と、他の要素との掛け合わせによって生まれる革新的な可能性に着目し、人々の生活を豊かにする、環境に優しいエシカルなプロダクトデザインを追求します。木との共生という視点から、未来を見据えた新たな価値創造を目指します。
100名超の応募から選ばれた8つの作品
budbrand AWARD 2025 U-35には、100名を超える意欲的な若手クリエイターから応募が寄せられました。厳正な審査を経て選ばれたのは、独創性と未来への可能性を秘めた8つの作品です。
bud brand AWARD 2025 グランプリ:pin
天然ゴム製の風船で木材を接合する、革新的なテーブル「pin」。木の恵みであるゴムの伸縮性を活かし、接着剤を使わずに木材を固定します。風船に木材を入れ、膨らませて空気を抜くだけで、毎回異なる愛らしいフォルムが誕生。ゴムの摩擦力が、天板と床をしっかりと支えます。「ピンと張る」「固定」の意味を持つpinが、サステナブルな新しい家具の形を提案します。
Student Designer:Tsukamoto Mai(武蔵野美術大学)
bud brand AWARD 2025 奨励賞:Slits stool
針葉樹の柔らかさをデメリットではなく、心地よさに変えたい。そんな想いから生まれた「Slits stool」。交互に入れたスリットが木材を曲げ、独特の座り心地を実現します。ピッチやスリットの長さを研究し、アカマツの加工性と柔らかさを両立。まるでゴムのような、角材とは思えない優しい感触が特徴です。木材とスリットの技法で新たな可能性を引き出し、木材の価値を高めることを目指しました。
Student Designer:Hara Yunosuke(武蔵野美術大学)
MAGE FAN
日本の伝統工芸「曲物」の技法を現代に蘇らせた「MAGE FAN 扇風機」。薄いヒノキ板を大胆に曲げたデザインは、木のしなやかさを象徴します。自然で優しい風は五感を穏やかに満たし、使わない時も天然木の温もりと経年変化を楽しめるインテリアとして存在感を放ちます。古くから暮らしに寄り添ってきた曲物の、新たな可能性を形にした扇風機です。
Student Designer:Shindo Haru(名古屋市立大学)
制作:曲物工房清水・西田恵一
屑を編む
「エコ」と「美」の融合こそ真のエシカル。長く愛される美しいデザインは製品寿命を延ばし、無駄を減らします。そこで、規格化された電気鉋の鉋屑に着目。その薄さ、柔らかさから生まれる軽やかさ、儚さを活かし、美しい造形として表現した照明を制作しました。再現性の高い素材である鉋屑の新たな可能性を示唆し、木という素材の魅力を再発見します。
Student Designer:Yamaguchi Ryohei, Kusaka Eita, Tuzuki Yuta(8-409)(東京造形大学)
KNIT
身近な編み物の軽さ、丈夫さ、長く使える魅力と木材を融合させた「KNIT」。6φの曲木を編んで作られた木網の棚です。蒸して曲げる曲木の技法は、無駄なく木材を活用。金網の構造を応用し、曲木の山谷を噛み合わせて壁に固定することで、頑丈で美しい木網の棚が完成します。ビス4つと曲木パーツのみのシンプルな構成も特徴です。
Designer:Kawano Mako
Bow stool
日本の伝統的な床座文化と革新的な曲げ加工を融合させた「Bow stool」。曲げ加工により座面がしなやかに撓み、心地よいクッション性を生み出します。特徴的な三角形と渦巻き模様は、硬質な木材に柔らかな動きを与えます。床座の快適さを現代の暮らしに取り入れ、座る人の動きに自然にフィット。伝統と革新が織りなす、新たな快適さを提供します。
Student Designer:Shimanoe Fumina(東京都立大学)
制作:八槻木工所
wood gems nail
木端材を宝石のように磨き上げた「wood gems nail」。木の種類ごとの色味や模様を活かし、一つとして同じものはない特別な輝きを指先に添えます。特別な日の装いを、自然の宝物である木の温もりで彩ります。建築材からファッションへ。木材の新たな可能性を追求した、ファッショナブルなネイルチップです。その日、あなたが出会う木との物語をお楽しみください。
Student Designer:Kimura Honoka
組子絵馬
飛鳥時代から続く「組子細工」は、美しい幾何学模様に祈りや縁起の意味を持つ日本の伝統技術。しかし、技術継承が課題となっています。そこで、願いを託す日本の文化「絵馬」と組み合わせたのが「組子絵馬」です。組子を組み上げ願いを書く体験は、伝統を感じながら想いを形にするもの。ミラノで書かれた願いは日本の神社へ奉納され、木が文化を繋ぐ新たな役割を担います。
Student Designer:Kondo Minari(香川大学)
制作:株式会社 河島建具・富山県総合デザインセンター
日本の若き才能たちが確かな足跡を残す「bud brand(バッドブランド)」
ミラノデザインウィーク2025で鮮烈な印象を残した「bud brand(バッドブランド)」の8作品は、日本の次世代クリエイターの才能と、エシカルなデザインへの真摯な姿勢を示すものでした。「木」という普遍的な素材に新たな息吹を与え、サステナブルな未来への道筋を示唆する彼らの作品は、デザインの可能性を大きく広げます。世界が注目するミラノの舞台で、日本の若き才能たちが確かな足跡を残した今回の出展は、今後のデザイン界に新たな潮流を生み出すことでしょう。