黒川紀章や槇文彦、内藤廣などの公共建築が多数!有名建築家が手がけた福井県の建築8選。

福井県は、豊かな自然と歴史に育まれた文化に加え、著名な建築家が手がけた数々の公共建築が点在する、建築ファンにとっても見逃せないエリアです。黒川紀章によるダイナミックな空間が広がる博物館、槇文彦が自然との調和を追求した図書館、内藤廣が地域の記憶を未来へと繋ぐ博物館など、個性豊かな建築物が福井の街並みを彩っています。この記事では、そんな福井県内にある、一度は訪れたい有名建築家による選りすぐりの公共建築を8つ厳選してご紹介します。

1.福井市美術館/黒川紀章

福井市美術館
Via: Wikipedia.

福井市美術館は、建築家・黒川紀章によって設計された、自然との共生をテーマにした美術館です。最大の特徴は、外壁の大部分がガラスで覆われていることで、周囲の自然環境と一体化した開放的な空間を作り出しています。黒川紀章が提唱した「共生」の思想を体現しており、曲線が多用された有機的なフォルムが特徴です。これは、周囲の公園の起伏に合わせたダイナミックなフラクタル曲線で構成されており、自然との調和を意識したデザインと言えるでしょう。

また、彫刻家・高田博厚氏の作品を多く収蔵していることから、彫刻が屋外でも展示できることを考慮し、外からも見える開放的な美術館となっています。一方で、常設展示の中核部分は、時代背景を示す演出効果を出すために壁で囲まれた構成となっており、展示内容に合わせて空間が使い分けられています。

福井市美術館・アートラボふくい

開館時間:9:00~17:15
休館日:月曜日
URL:http://www.art.museum.city.fukui.fukui.jp/
住所:〒918-8112 福井県福井市下馬3丁目1111

2.福井県立恐竜博物館/黒川紀章

福井県立恐竜博物館
Via: Wikipedia.

福井県立恐竜博物館は、建築家・黒川紀章が設計した、恐竜をテーマにした博物館。最大の特徴は、巨大な銀色のドーム型屋根です。このドームは、直径83メートルもの無柱空間を実現しており、広大な展示空間を確保しています。

周囲の自然環境との調和を意識して設計されており、山に埋め込まれるように配置されています。これは、自然の地形を最大限に保存し、建物が周囲の景観に威圧感を与えないようにするためです。エントランスは3階にあり、そこからエスカレーターで地下1階の展示空間へと降りていく構造になっています。内部は、ドーム型の天井から自然光が降り注ぎ、展示物を効果的に照らし出します。また、ドームの内側はスロープになっており、展示全体を見渡しながら歩くことができます。

福井県立恐竜博物館

開館時間:9:00~17:00
休館日:火・水曜日
URL:https://www.dinosaur.pref.fukui.jp/
住所:〒911-8601 福井県勝山市村岡町寺尾51-11

3.三方町縄文博物館/横内敏人

若狭三方縄文博物館
Via: Wikipedia.

建築家・横内敏人が設計した「三方町縄文博物館」は、縄文時代の精神を現代に伝えるユニークな建築です。最大の特徴は、土偶のお腹をイメージしたという、土で覆われたドーム型の外観です。これは、周囲の自然に溶け込むような有機的なフォルムを生み出し、縄文時代の住居を想起させます。

建物全体が芝生で覆われた小高い丘のような形状をしており、そこから円筒形のシャフトが突き出ている様子は、遺跡の発掘現場を連想させます。内部は、中央のホールに円筒形のシャフトが林立し、トップライトから自然光が降り注ぐ、縄文の森をイメージした空間となっています。構造的にも複雑で、円弧の外周にドーム型の屋根、様々な大きさの円柱で構成されており、一つとして同じ形状の柱や梁がないという特徴があります。これは、縄文時代の自由で力強い造形を表現していると言えるでしょう。外観だけでなく、内部空間も縄文時代の精神性を感じられるように工夫されています。

三方町縄文博物館

開館時間:9:00~17:00(火・水・木曜日)
URL:https://www.town.fukui-wakasa.lg.jp/soshiki/wakasamikatajomonhakubutsukan/gyomuannai/955.html
住所:〒919-1331 福井県三方上中郡若狭町鳥浜122−12−1

4.福井県立図書館/槇文彦

福井県立図書館
Via : Wikipedia.

建築家・槇文彦が設計した福井県立図書館は、「緑の中の庭園図書館」をコンセプトに、自然と調和した開放的な空間が特徴です。外観は、コンクリートとガラスを基調としたモダンなデザインで、象徴的な赤いテラコッタタイルの書庫が目を引きます。この書庫は、遠くから見ても存在感があり、図書館のランドマークとなっています。

内部は、天井高のあるワンフロアの空間が広がり、十字型の柱とトップライトが印象的です。この柱の上部にはトップライトが設けられており、自然光が降り注ぐ明るい空間となっています。閲覧席は外周部に多く配置され、庭園の緑を眺めながら読書を楽しめるように工夫されています。また、書庫は地下に配置され、最下部まで自然光が届く光庭(ひかりにわ)が設けられています。これにより、書庫内で働く人の心理的な負担を軽減するとともに、停電時の備えにもなっています。

福井県立図書館

開館時間:9:00~19:00(土・日曜日:~18:00)
休館日:月曜日
住所:〒918-8113 福井県福井市下馬町51−11

5.敦賀駅交流施設・オルパーク/千葉学

敦賀駅交流施設・オルパーク
Via : Wikipedia.

建築家・千葉学が設計した敦賀駅交流施設「オルパーク」は、旧敦賀駅舎の記憶を継承しつつ、現代的な機能とデザインを融合させた建築です。最大の特徴は、ガラスのカーテンウォールで覆われた中に、木で覆われた2つの箱が収められている構成です。この木の箱は、1909年頃に建てられた旧駅舎のスケールを踏襲しており、外側を杉板で覆い、旧駅舎のフレンチウィンドウのスケールを引き継いだ開口が開けられています。これは、市民の要望に応え、旧駅舎のイメージを表現したものです。

また、ピクトサインはオリンピックのロゴでも話題になったデザイナーの野老朝雄氏がデザインしており、細部までこだわりが感じられます。過去と未来を繋ぐ敦賀の新しい顔として、人々に親しまれる空間となっています。

敦賀駅交流施設・オルパーク

開館時間:8:00~19:00
URL:http://orupark.jp/
住所:〒914-0055 福井県敦賀市鉄輪町1丁目1−19

6.福井県年縞博物館/内藤廣

福井県年縞博物館
Via : Wikipedia.

建築家・内藤廣が設計した福井県年縞博物館は、「TIME SCAPE」をコンセプトに、年縞が採取された水月湖への軸線上に配置された、時間の流れを感じさせる建築です。最大の特徴は、45メートルもの長さに及ぶ年縞の展示に合わせて、細長い矩形の平面を持つ展示棟です。洪水のリスクを考慮し、1階はピロティ構造とし、2階に展示室を配置しています。

屋根は、福井県産の木材を使用した切妻屋根ですが、積雪荷重を考慮し、構造的に重要な部分には鉄骨が使用されています。外観は、RC壁と木造の切妻屋根、そしてその間をつなぐ鉄骨トラスが織りなす、シンプルながらも力強いデザインが特徴です。内部は、自然光が効果的に取り入れられ、落ち着いた空間となっています。水月湖と一体になったランドスケープデザインも特徴で、自然と建築が調和した空間となっています。

福井県年縞博物館

開館時間:9:00~17:00
休館日:火曜日
URL:http://varve-museum.pref.fukui.lg.jp/
住所:〒919-1331 福井県三方上中郡若狭町鳥浜122−12−1 縄文ロマンパーク内

7.えちぜん鉄道・大関駅/遠藤秀平

えちぜん鉄道・大関駅
Via : Wikipedia.

建築家・遠藤秀平が設計したえちぜん鉄道大関駅は、既存の木造駅舎に増築された待合施設と駐輪場が特徴的な駅です。最大の特徴は、波板(なみいた)と呼ばれる波状の金属板を多用した、うねるような有機的なフォルムです。これは、周辺の田園風景に溶け込むような、軽やかでリズミカルな印象を与えます。波板は屋根や壁、庇など様々な箇所に使用されており、光の反射によって表情を変え、見る角度によって様々な印象を与えます。

既存の木造駅舎と新しく増築された部分が一体となり、新旧のコントラストを生み出しています。待合スペースは、波板を通して入る光が柔らかく、居心地の良い空間となっています。駐輪場も波板で覆われており、雨風を防ぎながらも開放的な空間となっています。全体として、オブジェのようなユニークな外観と、利用者のための機能性を兼ね備えた駅舎と言えるでしょう。

えちぜん鉄道・大関駅

住所:〒919-0547 福井県坂井市坂井町大味

8.美浜町生涯学習センター・なびあす/新居千秋

美浜町生涯学習センター・なびあす
Via : Wikipedia.

建築家・新居千秋が設計した「美浜町生涯学習センター・なびあす」は、特徴的な外観と、内部のダイナミックな空間構成が魅力の複合施設です。外観は、斜めに走るラインが印象的で、シンプルながらも個性を放っています。特に目を引くのは、卵のような形をしたシルバーのドーム部分です。これは展示空間となっており、内部はトンネルのような通路を通ってアクセスする、ユニークな構成となっています。

ホール、図書館、公民館など、多様な機能を持つ施設でありながら、全体として統一感のあるデザインが施されているのも特徴です。新居氏の「アーキテクチャ・フォー・アロージング」、つまり人々が感動し、楽しくなるような場所を作るという理念が反映された建築と言えるでしょう。

美浜町生涯学習センター・なびあす

開館時間:9:00~22:00
休館日:月曜日
URL:https://www.town.fukui-mihama.lg.jp/site/navi-us/
住所:〒919-1141 福井県三方郡美浜町郷市29−3

福井県の自然や歴史、文化に呼応するユニークな建築群

黒川紀章、槇文彦、内藤廣といった著名な建築家たちが手がけた、福井県内の魅力的な公共建築を8つご紹介しました。それぞれの建築は、地域の特性や歴史、文化を反映し、独自のコンセプトとデザインで訪れる人々を魅了しています。ダイナミックな空間体験を提供する博物館、自然と調和した心地よい図書館、地域の記憶を未来へと繋ぐ博物館など、多様な建築を通して福井の魅力を感じていただけたかと思います。福井を訪れる際には、これらの建築物を巡る旅程を加えてみてはいかがでしょうか。