「“〜じゃないとだめ”という考えはしない」多岐にわたって活躍中のアーティスト・大宮エリー

画家、映画監督、脚本家、イラストレーションや舞台の演出、ラジオパーソナリティなど、様々な分野で活躍する大宮エリーさん。

今回はそんな大宮エリーさんにご自身のことや、暮らしのこと、主宰するエリー学園のことなど様々な角度からお話を伺いました。

多彩な活動を続けるアーティスト・大宮エリー

大宮エリー
撮影:諸井純二

1975年大阪生まれ、東京大学薬学部卒業。作家業、舞台の作演出、ドラマ・映画監督、映像制作、ラジオのパーソナリティと様々なジャンルで活動。2012年からは観客にイメージや言葉を伝え、来場者が参加して作品が完成するという体験型の展覧会、個展を立て続けに開催し大きな話題を呼ぶ。絵画制作は、2012年東京国立博物館の法隆寺宝物館にてモンブラン国際文化賞受賞の福武總一郎氏へのお祝いとして、急遽ライブペインティングを依頼されたことから始まる。2016年には美術館での初の個展「シンシアリー・ユアーズー親愛なるあなたの大宮エリーより」(十和田市現代美術館、青森)を開催し、同時に街の商店街にも作品を展開。2019年には、海外のギャラリーでの初個展「A Wonderful Forest」(TICOLATTAMURA、香港)を開催すると同時に、アートバーゼルにも参加、ミラノ、パリでの個展、はじめての海外グループ展「ParcoursSaint-Germain」参加など、制作活動の初期から大きな飛躍を遂げている。また、2022年4月にはロンドンのGALERIE BOULAKIAにて展覧会「Lounging around」を開催。2022年瀬戸内国際芸術祭に出展作家として犬島に「フラワーフェアリーダンサーズ」「光と内省のフラワーベンチ」を発表。2023年には第80回ヴェネチア国際映画祭XR部門「Venice Immersive」に、VR映画「周波数」がノミネートされた。

「緑・植物を大切に」

はじめに、大宮エリーさんが暮らしの中で大切にしているデザインについて伺いました。

「緑かな。植物がすごい好きで、事務所にもアトリエにも我が家にもたくさん植物がありますね。1畳に1本木がある感じで、友人が来た時に邪魔と言われるぐらいです(笑)糸島あたりに移住しようかなと思った時もあったぐらい、とにかく森の中に住みたいという夢があって、今は森にお越しいただいているという感覚。ヤシの木やウンベラータ、バナナの木など、リゾートっぽい感じになっていて、配達員の方が木をかき分けてやってくるほどです」

好きな場所はお風呂

続いて、大宮エリーさんのお好きな場所や空間はどこでしょうか?

「お風呂が好きですね。窓があって、お風呂にも植物を置いたり、夜は電気をつけずにキャンドルをつけて、火を見ながらお風呂に入っています」

東京大学の薬学部ご出身の大宮さん

フラワーフェアリーダンサーズⅡ

大宮さんは、東京大学の薬学部ご出身なのですね?

「本当は植物園の園長さんになりたくて、東京大学に大きな植物園があるんですよ。それが決め手になって東大を目指したのですが、父が病気になったので、大学に入ってから薬学部に変更をしたという経緯です。ただの薬だとあれだなと思って、薬用植物園学科というのに入りました」

そこから映画監督、脚本家、CMディレクター、コピーライター、イラストレーションや舞台の演出、ラジオパーソナリティ本当に色々な分野で活躍されていますけども、今メインで取り組んでいらっしゃるのは、アートということなのでしょうか?

「自分でこうしようと思ったわけではなくて、だんだんとアートの仕事が増えてきて、今はもう100%アートなのかなあ。今度の9月頭には岡山県美作市で、お花のオブジェを植えるんですよ。農園の主催で、お花畑にオブジェを作って、形を作ったりしているんですけども。オブジェを作ったのでお祭りをやろうと思って、料理研究家の土井善晴さんなどに来ていただくのですが、アートにまつわるカルチャーやイベントが今は多いかなと思います」

仕事を引き受ける際の基準について

活躍の場が多岐にわたっていらっしゃいますけども、お仕事を引き受ける際の基準はありますか?

「ワクワクするかどうかですかね。あとは、依頼してくださる方の想いです。岡山県のイベントも、『私1人の力ではできない』と思い最初は断ったんですが、『エリーさんにアートで盛り上げてほしい』『最初の1歩を手伝ってくれませんか?』って言われちゃって…。そういう一言に弱いんですかね(笑)」

『〜じゃないとだめ』という考えはしない

大宮エリー

「私は基本は怠け者なので何もしたくないんですよ(笑)だけど、必要とされると嬉しくなって、だんだんそのことが心に積もっていき、発芽して『じゃあやろうかな〜』と思う。そうするとアシストが不思議と入ってくるんですよね。自分からというよりも、周りから『どう?やってみない?』という感じなので、目指して積み上げてきたわけじゃないから、めっちゃ怖いんですよ。本当にうまく期待に応えられるのだろうかという不安があります。」

「じゃあどうそれを乗り切ってきたのかというと、柔軟性なのかなと思っています。私の特技は割と『〜じゃないとだめ』ていう考え方はしないこと。どんどん『むしろそっちの方がいいのでは?』と思える能力があると思っています。だから今までもやれてきたんでしょうね」

エリー学園を始めたきっかけについて

エリー学園

主宰するエリー学園を始めたきっかけについて教えてください。

「2020年にラジオに出ていた時に、パーソナリティに『何かやりたいことじゃないのか』と尋ねられて、『特にやりたいことないんですよね〜。でもいろんな人に学校とかできないの?って言われるんです。学校とかやったほうがいいんですかね?』って話していたんです。それで違うラジオ局に行ったら、女性のパーソナリティの方に『子供たちのアートの学校とかできないの?』と言われて、『やりたいけどどうやってやったらいいんだろう?』と言っていたら放送を聞いていた方が連絡をくださり、『うちでできるんですけどやりませんか?』と言われました。それがきっかけです(笑)」

自分自身も感化されるエリー学園

大宮エリー
Via : @elliegakuen

エリー学園は『クリエイティブマッスルを鍛える』というキャッチコピー。『クリエイティブな筋肉を筋トレしませんか?』ということで、ジムみたいなもの。そこで出会った人は、家族でもなく、職場の仲間でもなく第三の絆ができていくんですよ。エリー学園がなかったら出会えなかったという人がいて、一緒にコラボして作ってみたり、転職をする人もいたりだとか、割と青春をしていて、私自身が感化されていますね」

エリー学園では、どのような課題を出されているのですか?

「最近では『経済のエッセイを書いてほしいという依頼があったらどうする?』っていう課題を出しました。というのも日経MJという新聞で連載をやっていたことがあったのですが、最初は経済は分からないからと断ったんですよ。そしたら『経済じゃなくていいから』と言われたので、『じゃあやります』と言ったら、後々『やっぱり経済でお願いします』と言われたんですよ(笑)『話違うんですけど〜』なんて思っていたんですが、『私の中での経済を考えればいいのかな』と思いましたね。私はくだらないものを買ってしまう、なんでこれを買ってしまったんだと思うことがよくあって(笑)『これは消費という経済なのでは?』と思って、『これらは経済といえますか?』と言ったら企画がちゃんと通って連載になったんですよね。本にもなるぐらい人気でした(笑)なので、みんなだったら『経済のエッセイ書けってきたらどうする?』っていう課題を出しました。セラピストや農業、エンジニアの方の経済など、本当に面白くてそれに対してのフィードバックをしています」

エリー学園:https://elliegakuen.com
Instagram:@elliegakuen

Life is new world.

大宮エリー

インタビューの最後、大宮エリーさんに「Life is ◯◯」空欄に当てはまる言葉を尋ねると、「Life is new world」と答えてくれました。

「毎日が新しいなと思っています。猫を飼っているんですが、毎日同じことを言ってくるんです(笑)でも自分が『Life is new world』って思っていると、その猫たちの要求も違って聞こえてきたりします。心を通わせると一つ一つ意外と新しく見えてくるんですね。1秒1秒変わっているから、『new world』て思っていると、ずっと家にいたとしても旅にしている気持ちになれます」

「“〜じゃないとだめ”という考えはしない」多岐にわたって活躍中のアーティスト・大宮エリー

画家、映画監督、脚本家、ラジオパーソナリティなど、様々な分野で活動するアーティストの大宮エリーさん。今後もどのような分野で、どのように人々を魅了していくのかご活躍に目が離せません。大宮さん主宰の「エリー学園」は、この夏久しぶりに新規募集を行なっているそうです。気になる方は、エリー学園で検索してみください!