「独自のストーリー性に惹かれる」カラーコーディネーター・遠藤慧のホテル選びの視点や好きなホテルについて

前編:「日々光のある場所を探して暮らしています」カラーコーディネーター・遠藤慧の日常で大切にしているデザインや建築の世界へ進んだきっかけ

インテリアやカフェレストランの食事など、ホテルにまつわるさまざまなものの実測スケッチがSNSで人気を集めている一級建築士、カラーコーディネーター・遠藤慧さん。今回は遠藤さんに、ホテル選びの視点やお好きなホテルについて伺いました。

勉強目的で泊まるうちにホテルの魅力の虜に

『東京ホテル図鑑』書影

著書「東京ホテル図鑑 実測水彩スケッチ集」では、数多くのホテル建築を実測スケッチとともに紹介されていますが、実測スケッチを始めたきっかけはどういったものだったのでしょうか。

「今の会社に勤める前に設計事務所に就職したのですが、そこでホテルの設計をする機会がありました。その際にホテルのインテリアの具体的な事例を自分でも体験したいなと思って勉強のためにさまざまなホテルに泊まってみたんです。

池袋にある「hotel hisoca」のラフスケッチ

最初はメモ程度に描いていたラフなスケッチだったのですが、いくつか泊まっていくうちに、だんだん『ホテルって魅力的だな』とハマってしまいまして。細かいところを測ってみたり、色も測ったり、アメニティも全部描いてみたりと、当初の目的がわからなくなるくらいにこだわって描くようになってしまいました(笑)。

「横浜ベイホテル東急」の朝食

だんだんと食べ物もその空間を構成する大切な要素だな、と思うようになり、朝食やデザートなどの食事も書き留めるようになりました。」

その土地ならではの独自のストーリーがあるホテルが好き

鶯谷の街の色を取り込んだホテル「LANDABOUT TOKYO」のスケッチ

数多くのホテル建築をイラストともに紹介した遠藤さんの著書「東京ホテル図鑑 実測水彩スケッチ集」ですが、ホテル選びの際に重視するポイントはどういった点でしょうか。

鶯谷の街の色を取り込んだホテル「LANDABOUT TOKYO」のスケッチ

「ネットで調べたりして気になったところを訪れることが多いのですが、他にはない場所かどうかを意識しています。インテリアは他の場所で全く同じものを再現しても成り立ってしまうところもありますが、そのまちに由来するストーリーがあったり、土地にゆかりのある素材を使っていたりということがわかると、より素敵だなと感じます。」

「山の上ホテル」がお気に入り

「山の上ホテル」のスケッチ

数多くのホテルに訪れている遠藤さんですが、特に印象に残っているホテル、お気に入りのホテルはどちらでしょうか。

「東京のお茶の水にある『山の上ホテル』※さんがとても好きです。1950年にウィリアム・メレル・ヴォーリズウィリアムという建築家が設計した、アールデコ式の端正で美しい建物です。派手さはないものの、スタッフの方の対応もとても丁寧で、細かな装飾も美しく、訪れるたびに良いホテルだなと感じています。」

※2024年2月より無期限休業されることが発表された

とにかく空間自体を楽しむ

「hotel K5」のスケッチ

遠藤さん流のホテルの楽しみ方はどういったものでしょうか。

「ホテルに泊まりに行ったら、やはり部屋に籠って絵を描いてしまいますね(笑)。ホテルはただ泊まって寝るだけの場所だと考えている人も多いと思うのですが、近年のホテルは特に建物自体が素敵なものが増えています。ホテルに泊まること自体が旅の目的になるような、ここのホテルに行きたいからこの旅路にしよう、という考え方もこれからの旅の在り方かと思います。

あとは、自宅のインテリアの参考としてホテルのインテリアを眺めてみるのも良いかもしれません。自分の中に事例をストックしながら、気に入ったものは取り入れて、お部屋がより心地よくなっていくような楽しみ方も素敵ですね。」

より外への意識が強まった

お仕事や日常生活に大きな影響をもたらした新型コロナウィルスですが、コロナ禍を経て感じた変化はどういったものでしょうか。

「仕事もそうですが、買い物や食事もおうちの中で完結するサービスが増えてきて、それ自体は便利で素晴らしいことだと思うのですが、私は元々自宅に籠っているのが好きなので、ますます出不精になってしまいました(笑)。コロナ禍が明けて日常に戻ってきた中で、外に出て新しいものに触れたり良いもの見に行ったり、意識的にやっていかねばいけないなと思っています(笑)。」

日本全国、海外のホテルにも訪れたい

著書の出版、イラストレーターとしてのクライアントワークなどさまざまな場面でご活躍中ですが、今後の目標、チャレンジたいことなどはございますか。

「今回は東京にあるホテルのイラストをまとめた書籍を出版しましたが、東京以外にも日本全国素敵なホテルがあります。次回は日本全国、さらには海外の事例も色々と見てみたいと思っています。」

いいものを目で見て、描いていきたい

数多くのホテルに泊まり、多角的な視点でホテルの魅力を解剖する遠藤さん。そんな遠藤さんにとってライフイズ〇〇の〇〇に入るものは何でしょうか?

「“観察”です。自分の目でものを見て、いいなと思うものをこれからも描いていきたいと思います。」

よく見ることで新たな気づきを得る

暮らしを“観察”と捉え、日々触れるものをしっかりと目で見ることを意識しているという遠藤さん。遠藤さんならではの視点と感性によって、これからも世の中の人々に発見をもたらす作品を生み出してくれるはずです。