【建築家に聞く10のアイディア】住まう人の価値観を反映した”家族を迎え入れるための玄関”
玄関には多くの要素が求められます。収納などの日々の暮らしに必要な機能性もさることながら、訪れる人を「最初に迎え入れる場所」と考えると、デザイン性の高さや面積の広さも欲しいところ。しかし玄関を、そこに住まう家族を「毎日、迎え入れる場所」と考えるとどうでしょうか。玄関にこそ家族のライフスタイルや価値観をにじませることで、我が家への愛着も深まるのではないでしょうか。
ほっと落ち着く旅館ライクな玄関
こちらの玄関ホールは、オーナーの「落ち着きのある、ゆったりとした時間が流れる空間」という要望を叶えるために、老舗旅館のような風情を醸し出すデザインに。この静謐な雰囲気を生み出しているポイントは、照明計画にあります。奥行きのあるたたきの空間に幻想性をもたせるため、照明器具が視界に入らないよう配慮され、スイッチも低めに配置。光源を見せない工夫により、まるで連なる灯籠が足元を照らすように、陰影をまとった光が美しく広がります。
そして、この玄関ホールをさらに印象的なものにしているのが、「景色」です。玄関を開けた瞬間に視線が捉えるのは、正方形に切り取られた窓と緑。まるで一幅の絵画のような印象を与えるこの景色は、実は、隣家の庭の樹木を活用したものです。周囲を遮断せずに、外の環境も上手に取り込むことができれば、面積は狭くても、開放感や気持ちよさを生み出す空間づくりが可能になります。
敷地環境に合わせたあたたかな土間玄関
こちらは降雪量の多い山形県に建つ住宅。玄関扉から一歩住宅内に進むと広がるのは、大きく設けられた土間玄関。開放的な土間玄関は、冬場 、寒い屋外から帰ってくる家族を優しく出迎えてくれるうえ、雪を被って帰ってきてもそのまま暖かな土間空間で雪を払い、長靴を脱ぎ、スムーズに室内へと上がることができます。
コミュニケーションスペースとしての玄関
こちらの住宅では1階の3分の1を占める贅沢な土間玄関が特徴となっています。土間玄関から靴を脱がずにソファに腰掛けることができる“土間リビング”は、ご近所付き合いが多かったり、子どもの友人が多かったりと、日々のコミュニケーションが盛んなライフスタイルを送る方にとって、ラウンジスペースとしても使え、日々の会話をゆったりと楽しむことができます。
意外と重要な“玄関”づくり
家づくりでは、リビングやキッチンの広さに関心が集まり、玄関などは後回しにされがち。しかし、ゲストにとっても、そこに住まう家族にとっても、玄関は気持ちの切り替えとなる大切なスペース。家族の価値観に合わせたこだわりの玄関は、自慢の空間になるはずです。