近代建築の原型とも言えるル・コルビュジエによるフランス・パリにある邸宅「ラ・ロッシュ邸」
故郷からパリに出て、ル・コルビュジエとして無名だった頃、仕事のない中で仕事を与え、窮地を救ったのが、同郷の銀行家ラ・ロッシュである。彼のためのギャラリーのある邸宅である「ラ・ロッシュ邸」は、ル・コルビュジエの提唱した近代建築五大原則を初期に実験した建築だ。それは、1914年に考案されたドミノシステムから10年後の1925年にサヴォア邸で完成したと言って良いだろう。
カーブを描く壁面や水平連続窓による自由なファサード
ラ・ロッシュ邸は、ル・コルビュジエの元で働くピエール・ジャンヌレの兄であるヴァイオリニストのアルベール・ジャンヌレのための邸宅「ジャンヌレ邸」と対になるコーポラティブハウスとも言える点でも斬新な考え方に思える。
カーブを描く壁面や水平連続窓が実践され、当時のパリの都市型住宅としては革新的だったに違いない。ここではコンパクトではあるが、ピロティも実現されている。
スロープの存在価値を感じるギャラリースペース
2階分の高さがあるギャラリーには、ラ・ロッシュの集めた絵画コレクションと並行にスロープが配置され、スロープはゆったりとカーブし、その曲面は自由なファサードとしての役割も持っている。
写真左側がギャラリー部分。スロープとともにカーブがかった壁面に取り付けられた水平連続窓が柔らかいアクセントになっている。
階段ではなくスロープにすることで、足の運びを意識することなく、空間の連続性を楽しむことができる。
スロープを昇っていくと少しづつ視点が高くなり、いろんな角度でじっくりコレクションを鑑賞できるようになっている。建築の中を移動する度に変わっていく室内風景を楽しむ。ル・コルビュジエの提唱する建築的プロムナードが実現されている。
3層分の吹抜けを中心に配置された部屋
吹抜け越しにギャラリー方向を見る。吹抜けに突き出した踊り場が印象的だ。渡り廊下がギャラリーとプライベートエリアを結ぶ。
ギャラリー側から吹抜けを見ると、向こうにはプライベートエリアがある。渡り廊下横の大きな連続窓で、可能な限りの光を取り込んでいる。吹抜けの解放感が心地よい。木枠などの装飾がない白い壁が、より解放感を助長しているように感じる。
ギャラリーへの入り口はトップライトがあって明るい。
対照的に配置されたプライベートエリアは、落ち着いた雰囲気。
こちらも天井高を押さえ、ルーバーのある窓で、落ち着いた雰囲気の個人の部屋。光の明暗を利用して、吹抜けからギャラリーへと道線を誘導する仕掛けは、見事としてしか言いようがない。
近代建築の原型とも言える「ラ・ロッシュ邸」
「ラ・ロッシュ邸」は、ル・コルビュジエと近代建築の歴史の始まりとも言える住宅である。同時に都市型住宅として丁寧な設計の建築でもあり、デザインや家づくりの色々なヒントが詰まった住宅でもある。
le Corbusier – Maison la Roche / ル・コルビジエ財団 – ラ・ロッシュ邸
開館時間 : 10:00~18:00(月曜13:00~)
定休日 : 日曜日
URL : http://fondationlecorbusier.fr
住所 : 8-10 Square du Dr Blanche, 75016 Paris, France