「もっと包括的なデザインをしたい」MOMENT代表・渡部智宏が語る事務所設立に込めた想いとデザインのこだわり
前編:「疑問を持つことで好奇心を掻き立てる」MOMENT代表・渡部智宏のデザインへの視点
ISSEI MIYAKEの国内外の店舗デザインを筆頭に、空間からグラフィックまで垣根のないシームレスなコミュニケーションを提案するデザイン事務所MOMENT。今回は平綿久晃さんと共同代表を務め、デザイナーである渡部智宏さんに、事務所立ち上げの経緯や新型コロナウィルスによるデザインへの影響について伺いました。
MOMENT立ち上げのきっかけ
MOMENTは大学の同級生である平綿久晃さんと立ち上げられたとのことですが、どのような想いから設立に至ったのでしょうか。
「僕らは建築科で学んでいたのですが、学生時代から建築という存在が世の中に必要ではあるのですが、一般社会とは壁があるというか、難しい印象を持っていたんです。就職に際してはもっと包括的なデザインをしたいという想いがあったので、ゼネコンや建築事務所ではなく、幅広いデザインを手掛けている事務所に就職しました。僕らは大学時代から世界中を旅したりコンペに参加していたので、いつか一緒にデザインをやりたいという気持ちが学生時代からありました。その結果、平面から立体までデザインできるMOMENTという会社ができたと思っています。平綿とはもう27年近い付き合いで、ビジネスパートナーであり、マブダチですね。」
公私共にパートナーとは、中々出会えない関係性ですね。
“遊び心”も大切なポイント
ファッションや雑貨、コスメブランドの店舗、レストランやカフェ、百貨店の環境デザインなどジャンルにとらわれない多様な商業空間を創造されているMOMENT。作品集にもあるKIHCHI AOYAMAでは、ウッディな空間にグラフィック的な遊びの要素があったり、キッチンとダイニングエリアを近くすることでライブ感を演出されたりと、そうした遊び感覚も多く見られますね。
「僕らの場合は常にグラフィックとかインテリア、建築というジャンルをあまり意識していないんです。それぞれがシームレスに繋がっているという考え方です。また、遊び心、ユーモアみたいなものはどこかに入れたいと思っているので、(個人差はありますが)人によっては居心地が悪くなるほど決め込まれたものというより、どこかで『ふふっ』と笑えるような、気持ちに隙間ができるような空間を目指しています。
例えば高級なお料理屋さんにドレスアップして訪れたものの、緊張し過ぎてあまり味を覚えていない、ということってあると思うんですが、そこにユーモアやちょっとした仕掛けがあることによって、人間の心って柔らかくなったり視野が広がると考えているので、そういうものをスパイスのようにちょこっと取り入れています。」
新型コロナウィルスの影響とは?
長く続く新型コロナウィルスとの共生。リモートワークや時差出社など、生活様式にも新しいスタンダードが生まれましたが、ご自身の活動に影響はありましたか?
「新型コロナウィルスに限ったことではないと思うのですが、世の中がものすごいスピードで変化しています。今後はそれに対応できるフットワークの軽さが大切になると考えています。とはいえ色々動き回るのではなく、根はしっかりしながらもしなやかにバランスをとるということがこれからは大切になるのではないでしょうか。あとは、今は“個”であったり“バーチャル“なことが重要視され僕らも興味を持っていますが、逆にリアルなコミュニケーションやリアルな店舗の在り方にも大いに興味があります。」
ライフイズ”シームレス”
MOMENTを通じて様々なプロジェクトで活躍されている渡部さん。そんな渡部さんにとってライフイズ◯◯の〇〇に入るものは何でしょうか?
「ずっと繰り返していますがライフイズ”シームレス”です。生活やデザインというものは点の状態ではなく、全てが繋がって関連性を持っているもの。それを数珠繋ぎに色々な体験で繋いでいきたい、という思いを込めてシームレスにしました。」
仕事も暮らしも全てが繋がっているという、渡部さんらしい一言でした。
日々の変化に呼応するフラットな視点
ジャンルに囚われることなく、その場その場でも求められている最適解を提案する広い視野を持つ渡部さん。そんな渡部さんが日常で大切にしているデザインや、MOMENTのコンセプト”作らずに作る”の意図については「『疑問を持つことで好奇心を掻き立てる』MOMENT代表・渡部智宏のデザインへの視点」からどうぞ。