「住み手が決める自由な住宅を提案したい。」建築家・松山将勝が考える心地よい空間と豊かな暮らし
前編:「人と人、社会との繋がりを伝えていきたい。」建築家・松山将勝の大切にしたいデザインと空間
毎週月曜日に立山律子がお送りする福岡のラジオ放送CROSS FM「DAY+」。「#casa(ハッシュカーサ)」の枠に今回ゲストとしてお越し頂いたのは、福岡を拠点に活動し、住宅からクリニック、病院などの商業空間まで幅広い建築設計を手掛ける建築家・松山将勝(まつやままさかつ)さんです。後編では住宅づくりにおいて意識している点やアイディアの源について伺いました。
風景に馴染む建築の形態は何かを考える住宅づくり
松山さんの作品にはモダンなデザインが多く見られますが、住宅づくりについてどのような考えを持っているのでしょうか?
「僕は住宅が置かれる場所に問わず自分がつくりたいものを作るというタイプではなく、その建物の立地の場所性を読み解きながら自然と立ち上がる形を追求しています。例えば、自然豊かな田舎の風景が広がる場所であれば、その風景に馴染む建築の形態は何かを考える。そのスタイルは変えずにこれからも続けたいと思っています。」
建物を建てる際、その立地を意識して設計されているとのことでしたが、他に意識している点はあるのでしょうか。
「僕は生活の行為を住み手側が決めていくような自由な暮らしこそが、本当の豊かさにたどり着けるのではないかと考えています。これからもそうしたものを提案していきたいですね。」
奄美大島に残る日本の原型的な住まいがアイディアの源
松山さんの作品ではモダンなデザインの中にも日本的な要素が多く見えますが、どこからインスピレーションを得ているのでしょうか。
「僕は奄美大島という南の島の小さな集落で生まれ育ったのですが、そこには日本の原型的な家が残っています。例えば、外部と内部の中間領域である縁側や、格子や簾といった強い日差しを調整するような住宅など、日本特有の建築形式が染み付いているんです。僕の作品に新素材を使いながら現代的に表現している建築が多いのは、この原風景の影響が大きいかもしれません。」
これまで手掛けられた様々な作品の中でも〈父母の家〉というのは歳を重ねたご両親のために、先の人生を楽しむために工夫されて作られたものと伺いましたが、どういった工夫があるのでしょうか。
「建物が建つ奄美大島は亜熱帯気候で雨が多く、多い時で年間150日近く降る年もあるほど。そういった雨や強い日差しをカバーするために、大きな屋根を設け、台風の害を逃れるために壁はコンクリートにしたりと、気候風土から住宅を作っていきました。とはいえ、当初はコンクリートという無機質な材に対して、高齢の両親からは抵抗がありました。住み始めて2年位経ってから、ようやく住宅の良さを実感してもらっています。」
中と外が繋がっているような不思議なデザインですね。
「ガラスは付いているのですが、室内にいながら外の空間にいるような、かといって開放的過ぎないような、微妙なバランスを空間として作っています。とはいえ暑いエリアなので、影の空間を意識して設けています。
多くのオーナーからは明るく清々しい空間を求められるので、暗く、ひんやりとした印象の空間を提案されると不安に思われることがほとんどです。とは言いつつ、明るい空間がある一方で暗い空間があることが大事だと思っているので意識的に取り込んでいますね。」
福岡を拠点にする利点、優位性
住宅を始め病院や飲食店など全国に渡り様々な案件を手掛けられていますが、なぜ福岡を拠点にされているのでしょうか。
「全国各地様々なプロジェクトが進行していますが、都市も田舎も共存している福岡だからこそバランスが取れていて、どの場所に向かっても順応できると感じています。これからも福岡を拠点にしたいですね。」
住宅から商業施設まで全国各地で幅広い空間を手掛けるからこそ、都市も田舎も共存する福岡での暮らしが仕事に生きるのですね。
松山将勝のLIFE IS 〇〇とは
福岡を拠点に、全国各地で様々な建築設計に携わる松山さん。そんな松山さんにとって「ライフイズ◯◯」の空欄にはどんな言葉が入るのでしょうか。
「住まいや暮らしは多種多様であるので、それぞれにとってオンリーワンの住宅を具現化することが僕たちの仕事だと持っています。なのでライフイズ“オンリーワン”ですかね。」
その空間で過ごす人々の“繋がり“を大切に意識されている松山さんらしい、思いやり溢れる視点でした。
毎週月曜日にゲスト対談を行なっている福岡のラジオ放送CROSS FM「ライフスタイルメディア #casa」。建築家・松山将勝さんをゲストに迎えた前編については「『人と人、社会との繋がりを伝えていきたい。』建築家・松山将勝の大切にしたいデザインと空間」からどうぞ。