「地域コミュニティと密接に。」建築家・永山祐子が考える女性建築家の在り方。
前編:「人々の日常を豊かに。」建築家・永山祐子が語るデザインとこれまでの歩み。
毎週月曜日に立山律子がお送りする福岡のラジオ放送CROSS FM「DAY+」。「#casa(ハッシュカーサ)」の枠に今回ゲストとしてお越し頂いたのは、2021年に開催されるドバイ万博の日本館や、新宿歌舞伎町の超高層ビルのファサードデザインなど、国内外で大規模なプロジェクトを手がける建築家・永山祐子(ながやまゆうこ)さんです。後編のこちらではお子さんを持つ建築家として感じている点を伺いました。
女性建築家としての在り方
建築家というと男性ばかりのイメージを持たれる方も多いのではないでしょうか。永山さんの所員時代も設計の世界で活躍する女性は少なかったそうです。
「青木淳事務所に女性の先輩はいたものの、女性の割合は少なかったと思います。特に現場に行くと男性の職人さんが多いので、男性率が他の業界に比べると多いように感じます。」
そんな環境のなか、女性であることが建築デザインに生きる場面はあるのでしょうか。
「例えばお店を作る際に、女性をターゲットとした空間では、女性が求めているものは身近なテーマなので、女性のスタッフ間で話していると自然にアイディアがでてきます。商業施設はターゲットやユーザーが女性であることが多いので、自身の経験や感性が活かせているかもしれません。」
確かに買い物好きには女性が多いですよね。商業施設を手がけることが多い永山さんにとって、リアルな女性の視点がデザインに反映できることは、訪れた人々が使いやすく、楽しい空間づくりに欠かせないポイントなのかもしれません。
クライアントとの出会いとチャンス
世界的に有名なラグジュアリーブランドの店舗デザインもされている永山さん。ビッグプロジェクトが決まったときの気持ちはどのようなものだったのでしょうか。
「ちょうど自分のなかで試したい素材やデザインがあったのですが、なかなか予算やチャンスがもらえるプロジェクトが無く悩んでいたときに、まさにそれを試せるチャンスとしてご縁がめぐってきました。ブランドもそういった革新的なものを求めていたタイミングだったようで、やってもいいよと背中を押してくれたんです。そのときはたまたま構想ありきで進めることができましたね。他にも『こんなことをやりたいなあ』と考えていると、ちょうどお仕事を頼まれることがあるんです。強運の持ち主かもしれません(笑)。」
目の前の仕事のみならず、常に新しいチャレンジについてアイディアを膨らませている永山さん。運とは言うものの、そうした型にはまらず、常に進化を続けるからこそ様々なクライアントから声をかけられ、自身の作品をアップデートできるのででしょう。
子供を持つことによる仕事への変化とは?
建築家として大きなプロジェクトを手がける一方、小学校1、2年生のお母さんの顔も持つ永山さん。お子さんができる前と後で、仕事に違いはあったのでしょうか。
「子供が生まれる前は仕事がメインでした。生まれてからは、保育園だったり公園だったり地域コミュニティに触れる機会が増えました。建築はそうした地域のコミュニティに密接なもの。それは頭でわかっていたものの、自分自身がそこにかかわることがなかったので、子供を通じて建築において重要な要素に触れるきっかけになり、視野が広がったと思います。」
頭で理解していても、自分事にするには実感が必要ですよね。自身の役割が変わることで、建築家としての視野が広がり、結果よりよい空間づくりを目指していけるのかもしれません。
暮らしは小さなできごとの積み重ね
建築家として第一線で活躍しながら母親として日々忙しく過ごされている永山さん。そんんな永山さんにとって「ライフイズ◯◯」の空欄にはどんな言葉が入るのでしょうか。
「日常の積み重ね。人生でも仕事にも浮き沈みがありますが、家に帰ると日常である子どもたちとの関係が待っているわけで。これまでも一日いちにちを大切に、一生懸命やり過ごしています。なので、暮らし、人生とは小さなことの積み重ねなのかなと思っています。」
毎日無駄な時間も無いほど家事に仕事にと忙しい永山さん。だからこそ、そうしたふとした瞬間の小さな積み重ねが日常になり、暮らしになると感じられています。一瞬一瞬を無駄なく過ごしている永山さんらしい視点でした。