世界で最も建造年代が新しい世界遺産にして建築を超えた構造体でもある「シドニー・オペラ・ハウス」
シドニーの建築といえば、ずばり「シドニー・オペラ・ハウス」であろう。オーストラリアのランドマークとしても世界中から知られるこの建築。なぜ人々はこのシェルに魅了され、国民から精神的シンボル的存在としても崇められ、ここに集うのか。その魅力について早速探っていこう。
オーストラリア・シドニーのシンボル的な建築「シドニー・オペラ・ハウス」
オーストラリア・シドニーのハーバーに聳えるシェルの様な形の建築物「シドニー・オペラハウス」。ここはシドニー交響楽団等の本拠地になっており、2000席以上の座席数を持つコンサートホールや、劇場、ドラマシアター、リハーサルスタジオやレストラン、バーなど様々な施設を持つ。
「世界で最も建造年代が新しい世界遺産」とも知られ、その独特なデザインと存在感で、国民だけでなく世界中の人々に親しまれている。
手がけたのは北欧デンマークの建築家 ヨーン・ウツソン
1956年、世界中から233案をもデザインが集まったシドニー・オペラ・ハウスの国際設計コンペ。見事選ばれたのは、当時まだ無名であったデンマークの建築家ヨーン・ウツソンだ。
このコンペで世界の建築界に鮮烈なデビューを飾ったウツソン氏は、以降2003年にプリツカー賞を受賞するなど、オペラハウスの設計を通して様々な賞や名誉を授与されている。
14年の歳月と当時予算の14倍の建築費をかけて誕生した傑作
「船の帆」や「貝殻」を連想させる有機的な形状が印象的なウツソン氏のデザイン。しかし当時の建築といえば初期モダニズムの近代建築から見られる「四角い箱形」の建築が主流。そのため、彼のアイデアを形にするには構造的にも資金的にも実現が非常に困難であった。
建設費も14倍に跳ね上がり、工事も約14年の歳月をかけて完成したのは1973年。当時の建築としては、このシドニー・オペラハウスがいかに斬新な作品であったか想像できる。
シェルが連なるような印象的なフォルム
シドニー・オペラ・ハウスの代名詞と言っても過言ではないのは、シェルの様な形が印象的な外観であろう。貝殻のような同じフォルムのリブヴォールトを繰り返し、17本のヴォールトが扇形に寄り集まってドームを形成している。
シドニー湾に突き出した岬の先端に凛と聳える姿は、ヨットの真っ白い帆の様にも見える。生成色の様にも見える色味は、あえて真っ白にせず、晴天の青空の背景と重なった時に白く見えるようになっているという。
人々が憩う開放的な環境が広がる、オペラハウスの土台部分
オペラハウスの土台部分へ近くに連れ、そこで各々が自由に時を過ごす、公園のようなコミュニスペースになっていくのも興味深い。そこは周辺のランドマークと一体になり、ハーバーの心地を感じながら開放的な空間が広がっている。
放射状の梁が伸び、緩やかなカーブを描くシェル内部
シェルの中へいざ足を踏み入れる。ホワイエは「船の甲板」のような気持ちいい空間に、柔らかくシェルに囲まれる安心感と放射線の梁がダイナミックに放たれ、独特の格好良さがある。
長い歳月をかけて造られたからこそ、それぞれの建造要素が明確に別れていることのも興味深い。
「土台を建設する」第一段階、「シェルの構造物を建設する」第二段階、「劇場機能やインテリアを作る」第三段階に別れていたからこその、建築の力があるようにも感じる。
シェルの形状につながるカーテンウォールは、外部と境界が曖昧になるような印象と存在感が美しい。
建築を超えた構造物「シドニー・オペラハウス」
オーストラリア国民にとって唯一無二のシンボルである「シドニー・オペラハウス」。
その威厳ある建築からは、ヨーン・ウツソンによる造形がずっとそこに存在しているような美しさがある。
「シドニー・オペラハウス」は、コンピューター機能の無い時代背景の中で、これほどまでの「建築の明快さ」を繊細に追求したこの建築物は、言うまでもなく傑作である。
Sydney Opera House – シドニー・オペラハウス
URL : https://www.sydneyoperahouse.com
住所:Bennelong Point, Sydney NSW 2000, Australia