2020年のプリツカー賞はアイルランド人女性建築家イボンヌ・ファレルとシェリー・マクナマラの2人に。
「建築界のノーベル賞」とも言われるプリツカー賞の2020年の受賞者が3月4日に発表された。アイルランドを拠点とするグラフトン・アーキテクツ(Grafton Architects)を主宰するイボンヌ・ファレル(Yvonne Farrell)とシェリー・マクナマラ(Shelly McNamara)の2人の受賞が決まった。
アイルランド勢としても女性ユニットとしても初のプリツカー賞
昨年2019年のプリツカー賞は、日本人で8人目となる磯崎新が選出され話題になったが、今回は初めて尽くしの受賞で話題となっている。イボンヌ・ファレルとイボンヌ・ファレルは、アイルランド勢の建築家としては初の受賞者であり、女性建築家のみのユニットが受賞したのも初めてである。
これまでに女性建築家の受賞はわずかに3人のみ。あのザハ・ハディドは単体の受賞だが、SANAAの妹島和世やRCRアーキテクツのカルメ・ピジェムと少なく、4,5人目となる。近年唱えられる「ジェンダー平等」など非常に意味のあるプリツカー賞となったに違いない。
1951年生まれのファレルと1952年生まれのマクナマラは、アイルランド・ダブリンのユニバーシティ・カレッジ・ダブリンで同時期に建築を学んだ後、1978年にグラフトン・アーキテクツを共同で設立。約40年に渡って世界各地で数多くの建築を手掛け、2012年の「ヴェネツィア・ビエンナーレ建築展」では銀獅子賞を受賞して注目が集まった。また、彼女たちが手掛けたペルー・リマにある「インヘニェリア・イ・テクノロヒア大学」では王立英国建築家協会(RIBA)通称「ゴールドメダル」のインターナショナル賞を受賞した。また、2018年には第16回ベネチア・ビエンナーレ国際建築展で総合ディレクターを務めている。
ブルータリズムの流れを汲む建築デザイン
イタリア・ミラノにある「ルイージ・ボッコーニ商業大学」など2人の作品を観ると、冷酷で厳しい獣のような表現を取り入れたブルータリズムの流れを汲むデザインでありながら、非常に現代的な空間を表現した建築が特徴的だ。ベネチア・ビエンナーレでテーマに掲げた「フリースペース」のような機能主義的ではないスポットを建築の中に用意し、人間が無意識的に滞在するような場所を作っている。
イボンヌ・ファレルとシェリー・マクナマラの2人の活躍もそうだが、今後当たり前になるであろう女性建築家たちの活躍にも期待が持てる。