バウハウスのマイスターたちが暮らしたグロピウスによるモダン住宅「マイスターハウス」

バウハウス・デッサウ校から歩いても5~10分ほどの場所には、バウハウスの教員たち、マイスターのために建てられた「マイスターハウス」という住宅が立ち並んでいる。4棟あった建築のその一角には初代校長であるヴァルター・グロピウスが住んでいた住宅もあったが、第二次世界大戦の戦火によって消失した。しかし、今も残るグロピウスが残した住宅群からは、バウハウスの理念を感じ取ることができる。

バウハウスの理念を実践した実験住宅「マイスターハウス」

「マイスターハウス」も、バウハウスとしてモダンなデザインを提案した建築で、バウハウス・デッサウ校舎の住宅版と言えるだろう。装飾を取り除いたファサードに取り付けられたガラスのカーテンウォールが目を引く。

ル・コルビュジエがデザインした近代建築の傑作住宅と言われる「サヴォア邸」の完成が1931年だが、それよりも5年早くマイスターハウスは完成している。それだけでもグロピウスやバウハウスの先進性がわかるだろう。

立方体を組み合わせた立体的な建築の作り方は、現代となっては当たり前に目にするデザインだが100年も前だと思うと斬新過ぎることがわかる。

パウル・クレーとワシリー・カンディンスキーの家

マイスターハウスはそれぞれが2つの住宅がセットになっていて、一番奥の住宅は画家のパウル・クレーとワシリー・カンディンスキーの2人が暮らしていた家だ。中に入ると100年前の住宅とは思えない機能的でモダンな内装の住まいだということがわかる。家中にマルセル・ブロイヤーやバウハウスの学生の家具などの作品が配置され、当時としては最先端の家電も設置されていた。

住宅にしては少し贅沢な階段の踊り場にはガラスのカーテンウォールがあり、自然光が降り注ぐ明るい空間ができあがっている。それにより億劫になりがちな垂直移動を喚起している。

2階の天井が高くガラスのカーテンウォールからの眺めが素晴らしい空間は、アトリエやギャラリーとして自らの創作の場や客人へのプレゼンをするギャラリーのような場所としてリビング以上の機能を担っていた。実際にクレーやカンディンスキーは、6年という短い期間だったが、ここで数多くのコレクションを制作、展示していた。マイスターハウスのそれぞれの住戸全てに設けられたこの空間は、1人のデザイナーやアーティストとして活躍するマイスターたちにとって非常に重要な部屋であると言える。

ミニマムなデザインで再建された「グロピウス・ハウス」

壊滅状態だったグロピウスとモホイ・ナジが住んでいた通称「グロピウス・ハウス」は、バウハウス100周年に合わせてミニマムなデザインで再建された。ベルリンを拠点に活動する設計事務所BFM(ブルーノ・フィオレッティ・マルケス)による設計で、ディテールを消失させたような、純粋に概念だけを抽象化して表現する形にしている。内部はハンガリー出身の写真家であるモホリ=ナジに対するオマージュに溢れた空間。

Meisterhäuser / Haus Gropius – マイスターハウス

開館時間:10:00~17:00
URL : https://www.bauhaus-dessau.de/de/
住所:Ebertallee 57, 06846 Dessau-Roßlau, Germany

 

ヴァルター・グロピウスは、1928年に校長を退任し、ハンネス・マイヤーにその後のバウハウスを託した。ハンネス・マイヤーは、規格化されたデザインを打ち出し、バウハウスを初めて黒字化して、国際的な評価も高めて大成功を収めた。

しかし「バウハウス・デッサウ校舎」やこの「マイスターハウス」からは、それ以上に近代建築やデザインに対する理念のようなものを感じざるを得ない。