HPシェル曲面が荘厳さを演出する、丹下健三による「東京カテドラル・聖マリア大聖堂」

目白駅で新宿西口行きのバスに乗ること約15分。「ホテル椿山荘東京前」のバス停を降りるとすぐに異彩を放つ建築物が姿を現す。「東京カテドラル・聖マリア大聖堂」として知られる「カトリック関口教会」だ。

50年前の建築物とは思えない現代建築

1899年(明治32年)に木造ゴシック様式の建造物が最初に建てられていましたが、1945年(昭和20年)の東京大空襲で焼失し、戦後は物資不足のためしばらく聖堂が再建されることはなかった。それでもドイツ・ケルン大司教区の支援を受けながら、1964年に完成したのが「東京カテドラル・聖マリア大聖堂」。

宗教行事を執り行う上で必要な要件を満たしているという要件で、前川國男と谷口吉郎、そして丹下健三の三者の指名コンペが行われた。なお、建築界として吉武泰水と今井兼次、杉山英男と教会側として3名の司祭と教会建築の専門家ウィルヘルム・シュロンブが審査員として名を連ねた。

その中で選ばれたのが、HPシェルを使って非常に近代的な形態と構造を持つ丹下健三案だった。建築そのものの頂部が十字架型をしててキリスト教建造物であることを明示していながら、参道を歩いて中心的な場所に対峙するような日本的な動線を作り出した手法は非常に評価が高かったようだ。

HPシェル構造が有効的に働く建築

Via : Wikipedia.

4種類のRC壁のHPシェルが2枚づつ立て掛けられるように対になって成立している。それにより外観では滑らかな曲面が形成され、大きな翼を広げた鳥が舞い降りたような姿をして、周囲に柔らかな印象を与えている。内部空間は、RC打放しのHPシェルでできた曲面が構成され、頂部の十字架を描くトップライトに視線が向けられるように設計されている。

日本の伝統が取り入れられた動線

Via : Wikipedia.

一般的な教会建築のように直接教会の入口に向かうのではなく、「ルルドの洞窟」に向かって歩くようにし、そこから転回して「東京カテドラル聖マリア大聖堂」の入口に入る動線が用いられている。これは日本の伝統の通り鳥居や山門をくぐって参道を歩みながら徐々に気持ちを整え、それから「本尊」に相対するといった方法を取っており、建物本体の記念碑性だけでなく「場」の力によって聖性を生み出すことが目標とされた結果である。

日本人らしい発想で西洋の神聖な場所を訪れる事ができる、新しい動線は丹下健三氏ならではと言える。

壮大で神聖さを感じられる教会内部

「ルルドの洞窟」

内部の高さは最高40メートル。パイプオルガンなどの演奏会では残響も響き渡り、日本にはない独特な神聖さを感じることができる。数段の階段をはさんでやや高くなっている内陣奥の祭壇部分だけは、ステンドグラスの代わりに大理石を薄くスライスしたものが嵌められていて、イエスの受難を象徴する高さ17メートルの十字架の後ろから、品格のある重く荘厳な黄金色の光を内部空間に放つようになっている。

この教会の中では、建造物の壮大さを味わうと同時に昔のキリスト教建築をも偲ばせる、不思議な空間である。

 

世界の「タンゲ」と言われた丹下健三による教会建築の傑作「東京カテドラル」は、もちろん現在でも現役で使われている聖堂である。西洋の何百年と遺る教会建築のように、東京のこの場所で数百年後もあり続けるだろう。

東京カテドラル・聖マリア大聖堂・関口教会

開館時間時間:9:00~17:00
URL : https://cathedral-sekiguchi.jp/home/
住所:〒112-0014 東京都文京区関口3丁目16-15