住民一人一人の意識が作るフライブルク・ヴォーバン地区の要「パッシブハウス」とは!?
フライブルクのヴォーバン地区がいかにエコの最先端の街であるかは前回の記事でわかったと思う。
そのエコタウンを構成する中でも最重要な要素は「パッシブハウス」だろう。
パッシブハウスとは建築物の性能を上げることでできる限りエネルギーを使うことなく快適に暮らせるように設計された住宅だ。
「固定価格買い取り制度」から始まるパッシブハウスシティ
(c) Rolf Disch SolarArchitektur www.rolfdisch.de
ソーラーパネルが設置されたヴォーバン地区のパッシブハウスの街並は、主にフライブルク市が「固定価格買い取り制度」の法令を定めた2000年から始まっている。
曇の多いドイツの各都市に比べ、晴れが多いフライブルク市内にはフラウンホーファーISEなど太陽光発電の関連企業が多く、それもヴォーバン地区にソーラーパネルが普及する要因の一つだろう。
屋根と一体化したソーラーパネルが作る風景
(c) Rolf Disch SolarArchitektur www.rolfdisch.de
日本でもソーラーパネルを設置している家は珍しくはなくなってきたが、申し訳ない程度に屋根に乗っているだけのことが多い。
それに対して、ヴォーバン地区のパッシブハウスは屋根そのものがソーラーパネルになっているかのように屋根全面を覆っている。
それぞれの棟はコーポラティブハウスになっていて屋根は繋がってシームレスにソーラーパネルが設置してあり、デザイン的にもスッキリとしているし、それが集合した姿はなかなかすごい。
傾斜が付いた屋根にソーラーパネルは全て同じ方向を向いて設置されていて、集落のような統一感がある。
1棟あたり4世帯が入居しているヴォーバン地区のパッシブハウスは1棟1棟カラーリングや素材が異なり、賑やかに見える。
世帯ごとにも壁の色を切り替えているからとても鮮やかだ。
また、ここも他のヴォーバン地区の住宅地と同じように緑地緩衝帯が設けられていて、緑との調和も取れている。
省エネで快適な住まい
ここに紹介しているヴォーバン地区のパッシブハウスは安くはない。
しかし、電気は太陽光発電でまかない熱エネルギーも極力無駄なく使うパッシブハウスではランニングコストは比較的安く済むし、余った電気は買い取ってもらえる。
長い目で見れば財布にも優しいし、もちろん温暖化など問題をかかえた地球環境にもいい。
環境先進国ドイツのサッシやガラスの断熱性能も高いため快適であることは間違いない。
住民一人一人の意識が作り出すエコタウン
価格は一軒家ではなく長屋のようなコーポラティブハウスなのに日本の住宅よりもかなり高い。
しかし、環境や住環境への意識が高いフライブルクの住民は敢えてここに集まって住まいエコタウンを形成する。
もちろんランニングコストが抑えられるメリットはあるが、日本ではそういった考え方自体が軽薄だ。
パッシブハウスそのものはもちろん素晴らしいが、敢えてここに住む住民には感心させられるし、見習うべきことだと思った。