五感で味わう食の体験を届けたい『コトツキ、』店主・香月恵樹さん
福岡県飯塚市にあるレストラン『コトツキ、』は、食の魅力を大切にしながら、多くの方に心地よい時間を届けています。また、生産者とのつながりを大切にしながら、近年は野菜づくりや養鶏にも挑戦するなど、その活動の幅を広げています。
今回は、香月恵樹さんに暮らしの中で大切にしていることや好きな空間についてお話を伺いました。
レストラン『コトツキ、』店主の香月恵樹さん
福岡県飯塚市花瀬にあるレストラン『コトツキ、』の店主。
高校卒業後に実家のレストランで料理人としてのキャリアをスタートし、その後は宮崎県のフランス料理店で経験を積む。さらに本場の食文化を学ぶためフランスやスイスへ渡り、現地で料理技術だけでなく、食事を楽しむ文化や価値観に触れた。
帰国後は、食を通じて人の暮らしを豊かにしたいという想いから『コトツキ、』をオープン。店名の由来でもある、モノだけではなく『コト(体験)』で満たすという考えを大切にしながら、料理だけでなく空間や時間そのものを楽しめる店づくりを行っている。また、安心して食べられる食材選びにも力を入れており、生産者とのつながりを大切にしながら、食と健康の関係を意識した料理を提供。近年は野菜づくりや養鶏にも取り組み、自ら生み出す食にも関心を広げている。
暮らしの中心にある『食』というデザイン

暮らしの中で大切にしているデザインについて伺いました。
「僕はずっと飲食業に携わってきたこともあり、暮らしの中心にはいつも『食』があります。
食べることや料理をすることはもちろんですが、最近は自分たちの手で食材を生み出すことに興味を持つようになりました。」
食もアートとかと同じ感じですよね。恵樹さんのお店『コトツキ、』のお食事の写真を見せていただいたのですが、本当にアーティスティックで、食べるのがもったいないです。
「ありがとうございます。食は、デザインのひとつです。」
どういうところからインスピレーションを受けるのでしょうか?
「若い頃に取り組んだフランス料理です。フランス料理を通して学んだ感性や経験が、今の料理づくりや店づくりにつながっていると思います。」
好きな場所・空間について
「レストランやカフェ、自宅に関わらず、好きな人や家族と囲む食卓など、食事の場が好きです。 」
料理人の道を歩むことになったきっかけ

もともとご実家が飲食店を営んでいたことから、料理人として働いていますが、料理の仕事に就くのは子供の頃から自然な流れでしたか?
「正直子供の頃は、一切考えていませんでした。しかし、身近で両親が営んでいる姿を見ていたことやお店が忙しい時には、お皿洗いの手伝いをしていたので、飲食の仕事に抵抗はありませんでした。」
親がついている職業は、絶対将来的に嫌だと思う方がいますが、そのような抵抗感はなかったのですね。
「そうですね。抵抗感はなかったですが、なりたいとも思っていなかったです。
僕は、住居デザインの仕事に興味をなんとなく持っていた時期があったのですが、結局それは全然努力もせず実現しなかったので、最初は父に誘われるまま実家のレストランで働かせてもらっていました。」
本場のフランス料理を学ぶために渡欧

恵樹さんは、ご実家で料理人として働き、その後も宮崎のフランス料理店で働いた後、本場のフランスやスイスに行かれましたが、行こうと思った理由について聞かせてください。
「高校卒業後は実家のレストランで働いていましたが、次第に外に出たい気持ちが強くなりました。
そんな中で興味を持ったのがフランス料理です。紹介を受けて宮崎県のフランス料理店で働き始めました。」
フランス・スイスで出会った『食事を楽しむ文化』

フランスやスイスで感じた日本との違いについて教えてください。
「食に対する捉え方が違うと感じました。 特に夕食は、ゆっくり時間をかけて食事と会話を楽しんでいました。
また、食事に行くと、他のお客さんと仲良く一緒に話したり、お店の方がフレンドリーに接してくれたり、その場全体で楽しんでるような感じで、そんな雰囲気がとてもよかったです。」
本場の味はどうでしたか?
「味は、当たり外れが結構ありました。しかし、フランス料理をやっていたこともあり、現地に行くもの全てが新鮮だったので何でも楽しく、興味を持って食べていました。」
『モノ』ではなく『コト』を届けるために
フランスやスイスで修行され、帰国後にオープンした『コトツキ、』では、さまざまな業種の方とのコラボレーションによってお店づくりをされています。そのきっかけや想いについて教えてください。
「店名の由来でもありますが、モノだけでなくて『コト』を大事にしています。
料理を食べてお腹を満たすだけでなく、五感で感じられる、目に見えないようなことを大切にしています。
だからこそ、料理だけで完結するのではなく、さまざまな業種の方と一緒にお店づくりをして、感動やときめきなどの五感を刺激するような体験をしていただけるように、常に新しいことに挑戦しています。」
倉庫をリノベーションした店舗づくり

倉庫をリノベーションした店舗がとても素敵なのですが、どのようなコンセプトで作られましたか?
「以前、ペンキ屋さんが資材置き場として使っていたこの物件を見つけた際に、木工作家の鈴木さんという方と出会って、改装工事をお願いしました。
僕たちは木の香りがして、自然素材を使って心地の良い空間を作りたかったので、鈴木さんの世界観がすごく合致したのです。
僕たち夫婦も一緒に作業させてもらいながら準備を進めました。」
鈴木さんとは、どこで知り合ったのですか?

「出会いは、妻が娘の学習机をお願いしたことがきっかけです。 その学習机に感動し、そこからお付き合いしたいと思いました。
その頃は、木工作家として家具を主に作られていたのですが、空間作りをしてみたいということで、初めて『コトツキ、』を手掛けてくれました。」
食材へのこだわりと料理への想い

『コトツキ、』では、予約制で丁寧に料理された食事がテーブルに並んでいますが、どのようなこだわりで作っていますか?
「まず、このお店を始めるきっかけが、家族の不調による食事の見直したことでした。長年料理の仕事をしていましたが、食べるものと健康が自分の中でつながっていませんでした。
それ以来、自分たちが提供する食事が、お客様の健康を左右すると思うようになりました。そのため、少しでも安心安全なものを美味しく食べていただきたいという気持ちで作っています。」
今後チャレンジしたいこと
今後、何かチャレンジしてみたいことはありますか?
「『コトツキ、』を始めて以来、信頼できる生産者さんから安心してお出しできるものを使わせていただいていますが、 その中で最近少しずつ自給するという気持ちが芽生えてきています。
ニワトリを最近飼い始めたのもその一環なんですが、今後は米を作ったり野菜を作ったりと少しずつチャレンジしていきたいなと考えてます。」
Life is 食
インタビューの最後、香月さんに「Life is ◯◯」空欄に当てはまる言葉を尋ねると、「Life is 食」と答えてくれました。
「生活は、もう全て食を中心に自分は回ってるので『食』という言葉しかないと思います。 食に家族も救われましたし、自分も真摯に向き合うことで、 今のつながりも広がっていってると感じています。」
食を通じて豊かな体験を届ける香月恵樹さん
フランスやスイスで培った経験を活かしながら『モノではなくコトで満たす』という想いを大切にしている香月恵樹さん。料理だけでなく、空間や人とのつながり、食事の時間そのものを通して、訪れる人へ豊かな体験を届けています。
また、近年は養鶏や野菜づくりにも挑戦するなど、その活動の幅はさらに広がっています。これからも食を中心に、新たな価値や体験を生み出し続ける香月さんの活躍に期待です。