ノリタケが新作発表とインスタレーションでミラノデザインウィーク2026に出展!
日本を代表する洋食器ブランドのひとつであるノリタケが、2026年のミラノデザインウィークに出展します。会場となるのは、実験性の高い展示で注目を集めるALCOVAの会場のひとつ、バッジョ軍病院跡地内の「Casa delle Suore」です。今回の展示では、「Noritake Design Collection」の新作発表に加え、熟練の職人によるライブデモンストレーション、そしてブランドの世界観を五感で体感できるインスタレーションが展開されます。器そのものの美しさを見せるだけでなく、技術や感性、歴史、そして現代的なデザインのあり方までを空間全体で伝えようとする試みとして、注目を集めそうです。
ノリタケの技術と美意識を、空間の中で体感する展示
今回の出展で印象的なのは、ノリタケが単なるテーブルウェアブランドとしてではなく、技術と表現を横断するデザインブランドとして自らを見せている点です。展示では、「Noritake Design Collection」の新作を披露するだけでなく、ノリタケブランドの世界観を立体的に感じられる体感型のインスタレーションが展開されます。日常の中で使われる器をつくり続けてきたブランドが、その背景にある製造技術や装飾技法、そして世界のクリエイターとの協業によって生まれる新しい表現を、ミラノという国際的な舞台で示そうとしているのです。
ノリタケといえば、長い歴史の中で培われてきた精密なものづくりの技術と、洋食器ならではの上質な世界観で知られています。今回の展示では、その蓄積を現代のデザインの文脈へとつなぎ、工芸とインダストリアル、伝統と現代性のあいだにある豊かな関係性を見せてくれそうです。プロダクトを並べるだけではなく、そこに宿る思想や手仕事の気配まで含めて伝えようとする姿勢に、ノリタケの新しい挑戦が感じられます。
マスターペインター・岡田正巳によるライブデモンストレーション

展示の見どころのひとつが、ノリタケブランドの最高峰「マスターピース・コレクション」をはじめ、数々の芸術性の高いハンドペイント製品を手がけてきたマスターペインター・岡田正巳によるライブデモンストレーションです。熟練の職人による絵付けの技を、来場者が間近で体感できる機会はそう多くありません。繊細な筆致によって器の表面に命が吹き込まれていく過程は、完成品を見るだけでは伝わりにくい、手仕事ならではの緊張感や豊かさを感じさせるものになりそうです。
岡田正巳が描く象徴的なバラの表現や、その芸術的なアプローチは、2025年に発表された英国人デザイナー、フェイ・トゥーグッドとのコラボレーション「ROSE by Faye Toogood」にも大きなインスピレーションを与えたとされています。卓越した技術が、現代デザインの感性とどのように響き合うのか。そのプロセスを可視化する今回のデモンストレーションは、ノリタケのものづくりの核に触れられる貴重な場になりそうです。
フェイ・トゥーグッドとの新作「KILN by Faye Toogood」

今年の新作として発表されるのが、Studio Toogoodとの協業による「KILN by Faye Toogood」です。フェイ・トゥーグッド氏がノリタケ本社に滞在した際の記憶や体験をもとに生み出されたこのコレクションは、ノリタケの歴史的な煙突や窯の存在から着想を得て、彫刻的なフォルムや力強い幾何学性をテーブルウェアへと落とし込んだものです。ものづくりの現場が持つ空気や、工場建築の象徴的な造形が、食卓の上の風景として再解釈されている点が興味深いところです。
「KILN」は、マットブラック、マットホワイト、青磁の3色で構成され、それぞれ6アイテムが用意されています。なかでも青磁には、「Pond(池)」と名付けられたデザインが施され、日本の自然を思わせる詩的な世界観が表現されています。幸運の象徴であるカエルや蓮の花がランダムに配され、見るたびに発見があるような絵柄となっており、器を使う行為そのものに小さな物語を与えてくれそうです。無地のブラックとホワイト、そして絵柄のある青磁という対比もまた、トゥーグッドらしい造形感覚とノリタケの技術の融合を感じさせます。
ミケーレ・デ・ルッキらとの協業で生まれた「LANDSCAPE」

今回、初のコラボレーションとして発表されるのが、ミケーレ・デ・ルッキ率いる建築・デザイン事務所「AMDL CIRCLE」と、ミシュラン星付きレストラン「Aimo e Nadia」との協業による「LANDSCAPE by AMDL CIRCLE & Aimo e Nadia」です。形や角度の異なるピースを組み合わせるモジュール式を採用し、食卓の上に小さな風景を立ち上げるような構成が特徴です。
各ピースを組み合わせることで、彫刻的でボリュームのある佇まいが生まれ、水彩画のような繊細なデザインと堅牢な造形のコントラストが際立ちます。食器でありながら、同時に小さな建築物やランドスケープのようでもあるこのシリーズは、食卓における新たな“リチュアル”を再定義する提案として位置づけられています。料理を盛るための器という枠を超え、食事の時間そのものを構成する装置として器を捉え直す発想は、現代のテーブルウェアに求められる役割の広がりを感じさせます。
フランク・ロイド・ライトとの歴史に敬意を表した新作も登場

さらに今回の展示では、フランク・ロイド・ライト財団との関係を背景にした新アイテム「IMPERIAL PEACOCK by the Frank Lloyd Wright Foundation」も登場します。ノリタケとフランク・ロイド・ライトの関係は、20世紀初頭の帝国ホテルにまでさかのぼります。その歴史的なつながりに敬意を表しながら、帝国ホテルの大谷石に彫られた孔雀のアートワークを、トーン・オン・トーンの繊細な表現で現代の器へと落とし込んでいます。
ライトが愛した「自然のエレガンス」を現代に伝えるこのシリーズは、建築と工芸、歴史と現代をつなぐ象徴的な存在になりそうです。過去の遺産を単なる引用で終わらせるのではなく、現代の生活に引き寄せて再編集する視点に、ノリタケの成熟したデザインアプローチが感じられます。
共創のプラットフォームとして進化する「Noritake Design Collection」
「Noritake Design Collection」は2024年に始動した、ノリタケの変革を象徴するシグネチャーコレクションです。クリエイティブディレクターの堀雄一朗のもと、ヤブ・プッシェルバーグ、フェイ・トゥーグッド、マーク・ニューソン、AB Concept、フランク・ロイド・ライト財団など、国際的に活躍するクリエイターや組織との協業を重ねてきました。そこには、単に著名デザイナーとの連名で商品を生み出すのではなく、多様な才能が集い、増幅し、新しい価値として発信される「共創の舞台」をつくろうとする意志があります。
今回のミラノでの展示もまた、その思想を強く体現するものです。卓越した製造技術と職人技を基盤としながら、世界のデザイナーたちの感性と交差することで、テーブルウェアの可能性を押し広げていく。ノリタケが見せようとしているのは、伝統を守るだけの姿ではなく、伝統を土台に新しい表現へ踏み出すブランドの現在形なのかもしれません。
ミラノで開かれる、ノリタケの新しい表現
一般公開は2026年4月20日から26日まで、会場はALCOVA内のバッジョ軍病院跡地「Casa delle Suore」です。記者向け内覧会は4月19日に予定されています。実験性の高い展示が集まるALCOVAという場で、ノリタケがどのように自らの技術と美意識を見せるのか。その出展は、食器ブランドの枠を超えて、日本のものづくりが世界のデザインシーンとどう接続しうるのかを示す試みとしても注目されます。
器をつくる技術、絵付けの美しさ、建築やアートとの関係、そして食卓という日常の風景。ノリタケの今回の展示は、それらをひとつの体験として束ねながら、テーブルウェアの新しい可能性をミラノで提示するものになりそうです。伝統に根ざしながら、現代のデザインに開かれていく。その姿勢が、今回の出展をいっそう魅力的なものにしています。