門をくぐった瞬間、スケールが反転する。内へひらく玄関とLDK「本物志向の邸宅」
前編:街から切り離されるための壁。クローズド外構が生んだ、もう一つのリビング「本物志向の邸宅」
名古屋を拠点とするデザインウォール設計事務所が設計・施工を手がけた「本物志向の邸宅」は、街並みと適度な距離感を保つ外構計画が特徴です。門を設けて視線を丁寧にコントロールし、落ち着いた佇まいをつくり出しています。
しかし、玄関をくぐると空気が一変します。外側には静けさをまとった端正さを、内側には光と広がりが行き渡る開放感を。そのコントラストがこの住宅の大きな魅力です。
プライバシーが確保された内部には、住まう人が肩の力を抜いて過ごせる、穏やかで豊かな時間が流れています。
門から始まる、静けさへと導くアプローチ

「本物志向の邸宅」の入口には、外部からの視線や人の動きを穏やかにコントロールする、計算された門構えが設けられています。色味を揃えた異なる素材の外壁と植栽が重なり合い、過度な存在感を放つことなく、住まい手に安心感をもたらす佇まいに。主張しすぎない美しさが、住まい全体の品格を静かに支えています。

門をくぐると、空気がふっと切り替わるような、穏やかなアプローチが敷地の奥へと続いていきます。

歩を進めるにつれ、周囲の喧騒は自然と遠のき、内側へと意識が引き込まれるように、落ち着いた時間が流れ始めます。こうした外部との距離の取り方は、外構にとどまらず、住まい全体に通底する考え方として、内部空間にも丁寧に反映されています。
玄関は“迎える場所”ではなく“切り替える場所”

門をくぐり、静かなアプローチを進んだ先に現れる玄関。扉の向こう側は、外部から内部へと気持ちをゆるやかに切り替えるための空間として計画されています。

シンプルな構成のなかに、上質な素材選びが活かされ、タイルに反射する自然光や、やわらかなダウンライト、落ち着いた色合いが静かな印象をつくり出しています。通り過ぎるだけの場所ではなく、住まいに入ったことを実感させる、印象に残る玄関です。
吹き抜けと光が印象づける、のびやかなLDK

玄関からLDKへと続く空間は、この住まいの印象を大きく左右する場所です。

視線の先に広がるのは、25畳の吹き抜けと南面の大開口が生み出す、明るく伸びやかな広がり。

リビングダイニングを中心に、パントリーなどの付随空間も含めると、LDK全体はおよそ50〜60畳に及びます。

これほどのスケールを持つ空間でありながら、空調には14畳用のエアコンが採用されています。その背景にあるのが、自然の力を活かす「パッシブデザイン」の考え方です。

南面の大きな窓は、冬には光と熱を室内に取り込み、穏やかな暖かさをもたらします。一方、夏には外付けブラインドが直射日光をやわらかく遮り、冷房効率を高めながら開放感を保ちます。

環境への配慮と快適性を両立させる工夫が、この住まいの随所に息づいています。
空間に溶け込む、造作キッチンの佇まい

LDKの一角に設えられた造作キッチンは、この住まいの空間構成を静かに引き締める存在です。

宙に浮かぶような軽やかなデザインも相まって、機能性と意匠性が自然に調和しています。

グレーを基調とした色使いは、空間全体のトーンに寄り添いながら、生活の中心としてのキッチンに確かな存在感を与えています。

主張しすぎることなく、日常の動きや過ごし方を受け止める、住まいに馴染んだ設えです。
広さを誇らず、心地よさを整える設計
玄関からLDKへと連なる一連の空間体験が、この住まいの魅力を静かに物語ります。大きさやスケール感を前面に押し出すのではなく、空間の広がりをいかに心地よく感じさせるか。そのために、視線の抜けや光の取り込み、温熱環境への配慮といった細やかな工夫が、随所に重ねられています。
空間のスケールを丁寧に扱い、日常のなかで無理なく心地よさが続くよう設計された、その積み重ねこそが、この住まいの価値をかたちづくっています。
Via : https://designwall.jp/
後編:暮らしも、趣味も、家の中に。人生を無駄なく楽しむ住まいの空間構成「本物志向の邸宅」(4月8日 公開予定)