建築家・島田陽が手がけた、13枚のスラブで構成されたひとつながりの空間が特徴的な「宮本町の住居」

建築家・島田陽は1972年 兵庫県神戸市産まれ。1997年に京都市立芸術大学大学院卒業。同年にタトアーキテクツ/島田陽建築設計事務所設立する。「六甲の住宅」でLIXILデザインコンテスト2012金賞、第29回吉岡賞受賞。「石切の住宅」で日本建築設計学会賞大賞を受賞している。今回紹介する「宮本町の住居」ではDezeen Awards2018 House of the Yearを受賞している。

室内全体が見渡せる、壁のない空間

Via : https://tat-o.com/

この建築の1階の床面積は49平米で天高は約7mもある。この縦長の空間には13枚のスラブが7つの高さで配置されている。床面積が小さい分、スラブをたくさん配置することで、縦長の空間を有効的に活用してる。また、各階に壁を設けないことで、空間を広く感じさせるとともに、家族の位置が常に把握できるようになり、コミニュケーションが多く生まれる空間になる。

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基本的にスラブの形状は三角形だが、ダイニングと寝室は使用面積を大きくするために五角形に、リビングの床面積は一番大きくなるように三角形を二つ合わせた四角形になっている。縦長の空間内に、四角形のスラブを無造作に配置してしまうと、床と床が重なる面積が増えてしまい、可視性を損なってしまう。生活空間で重要な役割を担う箇所は床面積を多きくすることで、大胆な空間構成でも生活しやすいような工夫が施してある。

スラブの高さに隠された工夫

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この建築に施された工夫は床の形状だけではない。床の高さにも工夫が施されている。床の高さは、一般的な机の高さである70cmに設定してある。全てのフロアで、隣り合うスラブをテーブルとして使用することができるようになっている。

床の多い空間全体を明るくする工夫

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建築の特徴である13枚のスラブ。これだけ多いスラブを設けると、空間に差し込む光を遮ることになってしまい、空間全体が暗くなってしまう。けれでも、この建築はホワイトを基調とする空間にして、各フロアに自然光が入るように窓を配置することでこの問題を解決している。

可視性を強調する収納の少なさ

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一般的な住宅には備え付けの収納が多く存在する。収納の多さが家選びの重要なポイントでもある。しかしこの家には収納はほとんど存在しない。家主の要望で収納の数は最小限にして、各フロアにたくさんのものをレイアウトしている。ものをあえて収納しないことで、あたかも展示会場のような雰囲気を作り出している。空間の生み出す可視性を最大限に活用しているのだ。

人生で一番大きな買い物をより良いものに。

人生で一番大きな買い物は家であることがほとんどだ。その買い物を失敗してしまってはその後の人生に大きな影響を与えてしまうことになる。この住宅のオーナーは、建築家・島田陽のおかげで人生で一番大きな買い物を大成功させたように思える。建築家という職業は、良くも悪くもクライアントの生活を大きく変化させるものなのだと感じた。