十勝の光を集める木造建築——象設計集団が手がけた北海道・帯広の「森の交流館・十勝」を体験する

北海道・帯広の「森の交流館・十勝」は、国際交流や地域交流の拠点として、人が集い、学び、語らうために設計された公共施設です。設計を担ったのは、公共建築に「居場所」や「時間の重なり」を丁寧に織り込んできた象設計集団。木造2階建ての建築に、冬でも緑が息づくウィンターガーデンを据え、十勝の大きな空と光を室内へ引き込みます。

国際交流の拠点が“市民の居場所”になるまで

「森の交流館・十勝」は、国際交流・地域交流の活動を支えるための施設として位置づけられています。セミナーやイベント、学習会など、多様な目的で使われることを前提に、建築そのものが“集まる理由”を生み出す構成になっている点が特徴です。公共施設というと、用事のある人だけが訪れる場所になりがちですが、この施設は「特定の目的がなくても立ち寄れる空気」を大切にしています。

その鍵になるのが、中央に据えられた大きな共有空間です。入口を抜けた先に、視界がふっと抜ける場所があり、そこを介して各室へと自然に分岐していきます。目的室へ“直行”するのではなく、途中で人とすれ違い、気配を感じ、少し立ち止まれる。交流を掲げる施設として、動線の設計がすでにコミュニケーションのデザインになっています。

また、イベント利用だけでなく、日常的な学びや滞在を受け止められることも重要です。公共施設は「使われている時間」だけが価値になりがちですが、森の交流館・十勝は、空間の余白そのものが価値になります。展示やワークショップ、料理を介した交流、茶の時間など、活動の幅が広いほど、施設は“地域の器”として成熟していきます。

木造2階の十勝の陽射しを取り込む「明るさ」の設計

森の交流館・十勝は木造2階建てで、十勝の気候に向き合う「明るさ」と「居心地」を骨格に据えています。冬が長い地域において、室内に自然光をどう招き入れるかは、単なる快適性だけでなく、滞在の気分や活動の継続性にも直結します。象設計集団は、木の質感がもたらす温度感と、光の回り方を丁寧に組み合わせ、建築全体の体験をつくっています。

木造公共建築の魅力は、構造が“表情”になることです。柱や梁が隠れずに現れ、空間のスケールを身体がつかみやすい。さらに木は、光を柔らかく反射し、陰影を深くしすぎないため、滞在者にとって落ち着きやすい環境になります。とくに交流施設では、緊張をほどくことが参加のハードルを下げるため、素材の選択そのものが運営の思想とつながります。

もう一つのポイントは、用途の異なる諸室を“ばらばらの箱”として並べず、中心空間を核にして関係づけている点です。多目的ホール、調理室、茶室など、目的の違う部屋があるほど、動線が複雑になりがちです。しかしこの施設では、中心の共有空間を介して回遊性をつくり、迷いにくく、偶然の出会いが起きやすい構成に整えています。公共建築において「わかりやすさ」は機能ですが、この建築のわかりやすさは、同時に“交流を誘発する仕掛け”でもあります。

緑とせせらぎが中心になる、象設計集団らしい公共空間“ウィンターガーデン”

森の交流館・十勝を象徴するのが、館の中心に据えられたウィンターガーデンです。冬の厳しい気候の中でも、屋内に緑があることは、それ自体が大きな魅力になります。単なる観賞用の植栽ではなく、そこに人が滞在し、会話し、次の行動へ移る“間”として機能する点が重要です。象設計集団の公共建築が得意とするのは、機能を満たす部屋よりも、部屋と部屋の「あいだ」に豊かさをつくることです。このウィンターガーデンは、その思想が最もわかりやすく現れる場所と言えます。

たとえば、多目的ホールの利用者、調理室を使う人、茶室へ向かう人が、同じ中心空間を横切ります。目的が違う人たちが、同じ光と緑の中で交差し、必要であれば立ち止まり、目が合えば挨拶が生まれる。交流施設は「イベントを開催する」だけでは交流が生まれません。交流が生まれるのは、偶然が起きる余地があるときです。ウィンターガーデンは、その偶然の“舞台”になります。

さらに、十勝という土地性を考えると、この中心空間は「季節の変化の受け皿」でもあります。晴天率が高い十勝では、冬の低い光が深く差し込み、夏は光が強く広がります。時間帯によっても、光の角度と陰影が変わり、同じ場所が別の表情を見せます。公共建築は、ともすれば均質な照明に依存しがちですが、ここでは自然光の変化が滞在の質をつくります。建築が“時間を持つ”ことが、利用者の記憶に残る公共施設へと育てていきます。

「交流」を建築でつくる。十勝の風土に寄り添う

帯広の「森の交流館・十勝」は、国際交流・地域交流という目的を、運営やプログラムだけに委ねず、建築そのものに織り込んだ施設です。木造の温度感、中心に据えられたウィンターガーデン、用途の異なる諸室をつなぐ回遊性。これらはすべて、人が自然に集まり、少し滞在し、言葉を交わすための“環境の設計”です。

象設計集団の建築は、派手なアイコンで勝負するのではなく、場所の条件と人のふるまいを丁寧に結びます。森の交流館・十勝もまた、十勝の光と冬の時間を味方につけながら、「公共施設を居場所にする」解像度の高い建築として成立しています。帯広を訪れる機会があれば、イベントの有無にかかわらず、まずは中心空間に立ってみてください。そこで感じる光の質と木の気配が、この建築の価値をいちばん端的に教えてくれます。

森の交流館・十勝

開館時間:9:00~22:00
休館日:月曜日
URL:https://www.city.obihiro.hokkaido.jp/shisei/gaiyo/kouryu/1001462.html
住所:〒080-2470 北海道帯広市西20条南6丁目1−2