二俣公一が改修を手がけた、白い余白が、島の時間を受け止める香川県・豊島「白い寮」は、MUJI BASE TESHIMAへ

瀬戸内海に浮かぶ香川県・豊島には、島の風景と暮らしを静かに更新してきたリノベーション建築があります。二俣公一/ケース・リアルが古民家を改修して生み出した「白い寮」です。もともとは瀬戸内国際芸術祭2010の作品兼レストラン「イルヴェント」運営スタッフのための“寮”として計画され、住むことと働くこと、観光と生活の境界をやわらかくつなぐ拠点になりました。現在は無印良品の宿「MUJI BASE TESHIMA」として受け継がれ、白い余白を背景に、島の時間を丁寧に味わう滞在へと姿を変えています。古民家の輪郭を残しながら、使い方が更新され続けること。その連続性こそが、この場所の魅力です。

瀬戸内芸術祭と島の暮らしから生まれた“寮”の建築

「白い寮」の出発点は、観光施設でもギャラリーでもなく、“寮”という生活の器でした。豊島の古民家を改築し、「イルヴェント」運営スタッフが利用する寮としてリノベーションしたプロジェクトです。

芸術祭によって島に人が訪れ、時間が動き始める一方で、そこに働く人の暮らしはどう支えられるのか。白い寮は、イベントのための仮設ではなく、島の生活に根を下ろすための土台として構想されました。

瀬戸内の島々では空き家が増え、古民家は“使われないまま残る”ことが少なくありません。白い寮は、そうした状況に対して「残す」でも「壊す」でもなく、「住むために整え直す」という選択を提示します。

美しい観光の背景として古民家を保存するのではなく、生活のリズムに合わせて再編集し、実際に人が居る場所にする。建築が地域へ介入できる最も誠実な形が、ここにはあります。寮という用途が象徴するのは、派手な演出ではなく、日々を支える“持続”です。

二俣公一/CASE-REALが古民家の骨格を残し、白い余白で再編集する

白い寮の改修で印象的なのは、古民家の時間を消すのではなく、輪郭を残しながら“白”で整える手法です。梁や構造の記憶を無理に隠さず、むしろ白い面の中に浮かび上がらせることで、空間は古いのに重くならず、軽やかに呼吸し始めます。

白はここで、流行の仕上げではなく、島の光と影、湿度、空気の粒子を受け止める背景として働きます。窓から差し込む自然光が白い面に反射し、室内に柔らかな明るさが回り込みます。結果として、古民家は“古さの魅力”だけを語る場所ではなく、今の暮らしに適した明快さを持つ空間へ更新されます。

インテリアとして読み解くと、白い寮の魅力は「余白の設計」にあります。家具や道具を過剰に置かず、生活の姿勢が自然に定まる程度の密度で空間が整えられている。床に座る、窓辺に寄る、テーブルを囲む、静かに読む。そうした行為を受け止めるために、白い面は情報を減らし、手触りを増やしています。

古民家の持つ複雑さを一度白で整理し、生活の輪郭をクリアにする。ケース・リアルが得意とする“編集としてのリノベーション”が、最も端正なかたちで現れていると言えます。

MUJI BASE TESHIMAとしての現在

現在、白い寮は無印良品の宿「MUJI BASE TESHIMA」として運営されています。無印良品の公式情報では、築90余年の古民家を“受け継ぐ宿”として位置づけ、IDÉEが「日本の美意識・見立て」をテーマに空間をしつらえたことが紹介されています。

ここで行われているのは、白い寮の建築的骨格を尊重しながら、滞在体験としての質をさらに磨くアップデートです。白い余白を背景に、家具、器、アート、照明が丁寧に配置され、生活の道具が“使うための美しさ”として揃えられています。

宿泊施設としての魅力は、「観光の拠点」ではなく「島の時間に合わせて暮らす」ための拠点になっていることです。島の朝は早く、日中は光が強く、夕方は風が変わり、夜は静けさが深くなります。MUJI BASE TESHIMAは、その変化を室内へ引き込み、ただ寝るための場所ではなく、滞在の速度を整える場所として成立しています。白い寮が持っていた“生活の器”という出発点は、ここで宿へと用途が変わっても失われていません。むしろ、暮らすように泊まるという体験に置き換わり、より多くの人に開かれた形で継承されています。

建築は更新され、記憶は残る。白い寮が教えてくれる“受け継ぐ”というデザイン

豊島の「白い寮」は、古民家を美しく保存するためのリノベーションではなく、生活の場として成立させるための再編集でした。瀬戸内国際芸術祭の文脈の中で、働く人の暮らしを支える“寮”として生まれ、白い余白によって島の光と時間を受け止める建築へ整えられました。そして現在はMUJI BASE TESHIMAとして、IDÉEのしつらえとともに、暮らすように泊まる体験へ更新されています。用途は変わっても、骨格は残り、時間は積み重なる。建築を“つくって終わり”にせず、使い方とともに受け継ぐ。その姿勢こそが、白い寮が今も魅力的であり続ける理由です。

MUJI BASE TESHIMA

URL:https://stay.muji.com/ja/base/teshima/
住所:〒761-4661 香川県小豆郡土庄町豊島家浦2358