坂茂による由布院駅前に現れた“木の大屋根”の建築「由布市ツーリストインフォメーションセンター(YUFUiNFO)」

由布院駅の隣に立つ「由布市ツーリストインフォメーションセンター(愛称:YUFUiNFO)」は、建築家・坂茂が“旅の入口”を空間としてデザインした観光拠点です。2018年4月1日に開設されたこの建物は、全面ガラスの透明感の中に、集成材のY字アーチ柱が整列し、木の架構が森のような奥行きをつくり出します。観光情報を得るための場所であると同時に、到着直後の高揚を少し落ち着かせ、風景に身体をなじませるための「駅前の居場所」として機能しています。

由布院駅前の「旅のハブ」となる観光案内所

YUFUiNFOの面白さは、観光案内所という用途を「情報カウンター」だけで終わらせず、公共のインテリアとして成立させている点にあります。1階は観光情報の発信拠点でありながら、ガラス越しに列車の気配が入り込み、待つ時間そのものが風景になります。

坂茂建築らしいのは、ここで“滞在”が前提になっていることです。立ち止まり、次の行き先を考え、地図を広げ、時にはただ座って呼吸を整える。旅のはじまりに必要な動作が自然に収まるよう、視線の抜けと余白が丁寧に確保されています。駅前の混雑や移動の緊張をほどき、街へ出る前のテンポを整える——その役割が、建築の体験として静かに組み込まれています。

木の大屋根とY字柱がつくる坂茂らしい構造美と透明性

空間の核は、集成材のY字アーチ柱が連続し、それを梁が受けていく木造架構です。柱の反復がリズムを生み、曲線を帯びた構造体が視線をやわらかく導くことで、ガラスの箱にありがちな“硬さ”が中和されます。

全面ガラスの外皮は、外の光を最大限に取り込み、木の陰影を立体的に浮かび上がらせます。

日中は自然光が木肌の表情を引き出し、夕方以降は内部の光が駅前へにじみ、建築そのものが街の灯りになります。構造を隠さず、むしろ居心地の核として見せる設計は、坂茂が一貫して取り組んできた「素材と構法の美しさを、公共の体験へ開く」姿勢とも重なります。

2階「旅の図書館」と由布岳へ視線が抜ける展望デッキ

上下階は階段で断ち切られるのではなく、ゆるやかなスロープで接続されます。この“なだらかな移動”が、YUFUiNFOの体験を決定づけています。

1階の賑わいから少しずつ視点が上がり、山並みへ意識が向く。

そうして到達する2階には「旅の図書館(Travel Library)」があり、旅に関する書籍(約1,500冊)が静かな環境で手に取れるよう整えられています。

さらに外部には展望デッキが設けられ、由布岳を間近に感じながら風に当たることができます。観光情報を“集める”だけではなく、風景を見て、ページをめくり、旅の輪郭を自分の中で組み立て直す。YUFUiNFOは、移動の合間に生まれる短い時間を、豊かな滞在へ変換する装置として完成しています。

「観光案内所」を、風景と暮らしの入口にする建築

由布市ツーリストインフォメーションセンター(YUFUiNFO)は、駅前の機能施設でありながら、木造架構と透明性を武器に、街の玄関口を心地よい居場所へ更新した建築です。Y字アーチ柱がつくる森のような空間、スロープが導く連続体験、旅の図書館と展望デッキが与える余白。それらが重なり、由布院という土地の空気へ、到着した人の身体をゆっくり同調させます。旅を急いで始めるのではなく、まずここで立ち止まって由布岳の稜線を眺める。YUFUiNFOは、そんな“旅の整え方”を提案する、坂茂らしい公共建築です。

由布市ツーリストインフォメーションセンター(TIC)  – Yufu City Tourist Information Center

開館時間:9:00~17:30
URL:https://yufuin.gr.jp/
住所:〒879-5114 大分県由布市湯布院町川北8−5