香川県の建築10選!丹下健三や谷口吉生、安藤忠雄など瀬戸内の光と風が織りなすモダニズム建築が魅力!

香川県は、瀬戸内海の美しい自然と、世界的に著名な建築家たちの傑作が共存する、建築ファンにとって魅力的な場所です。国際的なアートイベント「瀬戸内国際芸術祭」の舞台としても知られ、島々には自然と調和した建築が点在しています。

1.香川県庁舎/丹下健三

香川県庁舎

高松市に立つ香川県庁舎は、日本のモダニズム建築の巨匠、丹下健三が設計を手掛け、1958年に竣工しました。日本の伝統的な木造建築の要素をコンクリートで表現した「柱と梁」の構造美が特徴で、打ち放しコンクリートの力強さと繊細さが共存しています。外観は、縦ルーバーと水平の庇がリズミカルに配置され、光と影の陰影が美しいファサードを形成しています。内部空間は、低層部に公開されたピロティ空間が設けられ、市民に開かれた公共建築としての役割を強調しています。内部には、猪熊弦一郎による壁画やイサム・ノグチによる彫刻が配され、建築とアートが一体となった総合芸術作品として高い評価を得ています。丹下の提唱した「機能主義」と「象徴性」が融合した、日本の戦後建築を代表する傑作の一つです。

参考:丹下健三が手掛けた日本のモダニズム建築「香川県庁舎」は、鉄筋コンクリートで日本の伝統建築を表現!

香川県庁舎

住所:〒760-0017 香川県高松市番町4丁目1−10

2.丸亀市猪熊弦一郎現代美術館(MIMOCA)・図書館/谷口吉生

丸亀市猪熊弦一郎現代美術館

丸亀市に位置する丸亀市猪熊弦一郎現代美術館(MIMOCA)は、地元出身の画家、猪熊弦一郎の作品を展示するため、1991年に開館しました。設計は、シンプルかつ精緻なデザインで知られる谷口吉生が担当しました。JR丸亀駅に隣接しており、駅前広場と一体となったユニークな配置が特徴です。外観は、花崗岩とガラスを基調とした、シンプルながらも洗練されたデザインで、周囲の景観と調和しながらも存在感を放っています。内部空間は、猪熊の多彩な作品に対応できるよう、多様な展示室が設けられています。特に、自然光を巧みに取り入れたトップライトや、天井高を変化させることで空間にリズムを生み出す工夫が随所に見られます。静かで落ち着いた雰囲気の中で、じっくりと作品と向き合える、谷口建築ならではの質の高い空間が提供されています。

参考:多くの美しい美術館を手掛けた建築家・谷口吉生による「丸亀市猪熊弦一郎現代美術館」と図書館

丸亀市猪熊弦一郎現代美術館(MIMOCA)

3.香川県立東山魁夷せとうち美術館/谷口吉生

香川県立東山魁夷せとうち美術館

坂出市に立つ香川県立東山魁夷せとうち美術館は、日本の風景画家、東山魁夷の作品を展示するため、2005年に開館しました。設計は丸亀市猪熊弦一郎現代美術館に続き、谷口吉生が手掛けました。瀬戸内海を一望できる高台に位置し、その絶景を最大限に活かした設計が特徴です。外観は、白い壁とガラス面で構成され、周囲の自然に溶け込みながらも、洗練された印象を与えます。内部空間は、東山魁夷の静謐な世界観を尊重し、穏やかな光と落ち着いた色彩で統一されています。特に、展示室の窓からは瀬戸内海の多島美が絵画のように広がり、作品と風景が一体となるような感覚を味わうことができます。谷口建築特有の、抑制の効いたデザインと素材へのこだわりが、画家が描いた世界へと誘う、詩的な空間を創り出しています。

参考:谷口吉生が手がけた美しい建築「香川県立東山魁夷せとうち美術館」は瀬戸内の静寂を映すキャンバス。

香川県立東山魁夷せとうち美術館

開館時間:9:00~17:00
休館日:月曜日
住所:〒762-0066 香川県坂出市沙弥島224−13(瀬戸大橋記念公園内)

4.地中美術館/安藤忠雄

直島に位置する地中美術館は、2004年に開館した安藤忠雄設計の美術館です。クロード・モネ、ジェームズ・タレル、ウォルター・デ・マリアの3作家の作品を恒久展示するため、建物の大半が地下に埋設されています。この「地中」というコンセプトは、景観を損なうことなく、自然環境と共存するという安藤の思想を強く反映しています。内部空間は、打ち放しコンクリートの壁と、計算され尽くした自然光の取り入れ方が特徴です。光の差し込み方によって空間の表情が刻々と変化し、作品の印象も常に新しく感じられます。特に、モネの睡蓮が展示される部屋では、トップライトからの光が水面を照らし、幻想的な世界を創り出しています。建築そのものが、作品の一部として機能する、唯一無二の体験を提供する美術館です。

参考:安藤忠雄が描く自然と共生する唯一無二のアート空間「地中美術館」

地中美術館

開館時間:10:00~17:00
休館日:月曜日
URL:https://benesse-artsite.jp/art/chichu.html
住所:〒761-3110 香川県香川郡直島町3449−1

5.ベネッセ・ミュージアム/安藤忠雄

直島に位置するベネッセ・ミュージアムは、安藤忠雄設計による、宿泊施設と美術館が融合したユニークな施設です。1992年に「直島コンテンポラリーアートミュージアム」として開館し、後に現在の名称に改められました。瀬戸内海を見下ろす高台に位置し、打ち放しコンクリートの壁が周囲の自然と対話し、安藤建築の哲学を体現しています。内部空間は、展示室と客室が一体となっており、アート作品が日常の中に溶け込むような体験を提供します。特に、屋外にも多くの作品が設置されており、建物全体がアートサイトとして機能しています。自然光を巧みに取り入れた明るい空間、瀬戸内海の景色を望む開口部など、光と風を意識したデザインが特徴です。自然、アート、建築が一体となった、安藤忠雄の思想が集約された場所と言えます。

参考:安藤忠雄が手がけた瀬戸内海と直島の自然と建築の融合を目指した空間「ベネッセハウス・ミュージアム」

ベネッセハウス・ミュージアム

開館時間:8:00~21:00
URL:https://benesse-artsite.jp/art/benessehouse-museum.html
住所:〒761-3110 香川県香川郡直島町 琴弾地

6.瀬戸内海歴史民俗資料館/山本忠司

瀬戸内海歴史民俗資料館
Via : Wikipedia.

高松市に位置する瀬戸内海歴史民俗資料館は、瀬戸内海の歴史と文化を伝えるための施設として、1973年に開館しました。設計は、香川県出身の建築家、山本忠司が手掛けました。コンクリート打ち放しの重厚な外観と、日本の伝統的な倉を思わせる形態が特徴です。瀬戸内海の穏やかな風景に溶け込みながらも、その存在感を主張しています。内部空間は、展示内容に合わせて多様な空間構成がなされており、歴史的な資料や民俗芸能に関する展示が効果的に配置されています。特に、自然光を効果的に取り入れるための開口部や、展示室ごとの天井高の変化が、空間にリズムと奥行きを与えています。地域の歴史と文化を深く理解するための拠点として、そして建築的な魅力も兼ね備えた、山本忠司の代表作の一つです。

瀬戸内海歴史民俗資料館

開館時間:9:00~17:00
休館日:月曜日
URL:https://www.pref.kagawa.lg.jp/setorekishi/

7.豊島美術館/西沢立衛

豊島美術館

豊島に位置する豊島美術館は、建築家・西沢立衛とアーティスト・内藤礼のコラボレーションにより、2010年に誕生しました。貝殻のような有機的なフォルムを持つコンクリートシェル構造が特徴で、美術館全体が巨大な彫刻作品のようです。内部空間には柱がなく、緩やかな曲線を描く天井には複数の開口部が設けられ、そこから光、風、雨、そして鳥の声など、自然がダイレクトに降り注ぎます。訪れる人は、大地に直接座り込むような感覚で、内藤礼の作品「母型」と一体となった空間を体験します。水滴が床に湧き出てくる様子や、風で揺れる水面、光の移ろいなど、刻々と変化する自然の要素が作品の一部となり、五感に訴えかけます。建築、アート、自然が究極的に融合した、他に類を見ない体験を提供する美術館です。

参考:アーティスト・内藤礼と建築家・西沢立衛による「豊島美術館」はアートと建築、自然が一体となった建築。

豊島美術館

開館時間:3月1日〜10月31日10:00〜17:00(最終入館16:30)
11月1日 〜 2月末日10:00〜16:00(最終入館15:30)
休館日:火曜日
URL: https://benesse-artsite.jp/art/teshima-artmuseum.html
住所:香川県小豆郡土庄町豊島唐櫃607

8.直島ホール/三分一博志

直島に位置する直島ホール(直島町民会館)は、三分一博志が設計を手掛け、2015年に開館しました。集会所、多目的ホール、ギャラリーを備えた町民のための施設です。三分一建築の特徴である「風と水のデザイン」が随所に活かされています。外観は、直島の地形や風向き、日射を分析し、最適な場所に開口部や水盤を配置することで、自然の力を最大限に利用しています。内部空間は、自然換気を促すためのトップライトや、太陽光を巧みに取り込む工夫が凝らされています。特に、中央のホールの天井は、直島の伝統的な入母屋造を現代的に解釈したデザインが特徴です。町民が気軽に集い、交流できるような温かい雰囲気と、自然とのつながりを感じさせる、直島の新しいランドマークとして親しまれています。

直島ホール

住所:〒761-3110 香川県香川郡直島町696−1

9.海の駅なおしま/SANAA

直島にある「海の駅なおしま」は、妹島和世と西沢立衛によるSANAAが設計を手掛け、2006年にオープンしました。直島の玄関口として、観光客を迎え入れるフェリーターミナルであり、直島らしい軽やかで開放的なデザインが特徴です。透明性の高いガラス壁と、細い柱が林立するシンプルな構造は、瀬戸内海の開放的な景色と一体となり、海の上に浮いているかのような印象を与えます。内部空間は、余計な装飾を排し、機能性と透明性を追求したデザインです。明るく広々とした待合スペースからは、島を行き交う人々や、港の風景がパノラマのように広がります。自然光が降り注ぎ、風が通り抜ける心地よい空間は、直島のアート体験への期待感を高める、美しい序章となっています。

参考:草間彌生の赤かぼちゃとともに、SANAAが手掛けた人と島、アートをつなぐ直島の玄関口「海の駅・なおしま」

海の駅なおしま

開館時間:6:00~20:30
URL:http://www.town.naoshima.lg.jp/about_naoshima/shisetsu/seastation.html
住所:〒761-3110 香川県香川郡直島町2249番地40

10.香川県立体育館/丹下健三

香川県立体育館

高松市に位置する香川県立体育館は、香川県庁舎と同じく丹下健三が設計を手掛け、1964年に竣工しました。巨大な舟形をした特徴的な屋根が印象的なモダニズム建築です。丹下が日本の伝統的な造形を現代建築に昇華させた代表作の一つであり、その力強い造形は、見る者に強いインパクトを与えます。内部空間は、大アリーナを中心に、体操場や武道場などを備えた総合的な体育施設です。現在は老朽化、耐震強度の不足により、閉館中です。

参考:「船の体育館」と呼ばれる巨匠・丹下健三が手がけた旧香川県立体育館の今

自然とアートが一体となった空間体験が得られる建築

香川県は、瀬戸内海の豊かな自然の中に、丹下健三、谷口吉生、安藤忠雄、西沢立衛、三分一博志、SANAAといった、日本を代表する建築家たちの傑作が点在する「建築の宝庫」です。香川県庁舎や香川県立体育館に見られる丹下健三の力強いモダニズム、丸亀市猪熊弦一郎現代美術館や香川県立東山魁夷せとうち美術館に息づく谷口吉生の洗練されたミニマリズム。そして、直島の地中美術館やベネッセ・ミュージアム、豊島美術館に代表される、安藤忠雄や西沢立衛による自然とアートが一体となった空間体験は、香川県ならではの魅力と言えるでしょう。それぞれの建築は、その土地の風土や文化と深く結びつきながら、独自の美学を追求しています。