人や地域、景色との“つながり”を意識した家づくり。「BdHOME」代表・濱口和也さんのビジョンとは

住宅会社「BdHOME」の代表であり、三重県伊勢市でライフスタイルストアを運営している濱口和也さん。注文住宅を中心に請け負いながらも、家づくりだけでなく生活全般を提案したいという想いから、お店ではカフェやインテリア、アパレルまで取り扱っています。濱口さんにお話をうかがうと、それら事業を手がける理由や、人や土地との“つながり”が見えてきました。

大切なのは光と景観を意識したデザイン / BdHOME代表 濱口和也

株式会社ビーディホーム 代表取締役 濱口和也
1970年、三重県志摩市に生まれる。三重県立伊勢工業高等学校を卒業後、地元の工務店へ就職。2008年に独立し、「株式会社ビーディホーム」を設立。事務所のある伊勢市内の敷地には、ライフスタイルを提案するインテリアショップやカフェ、キャンプ場も併設。

濱口さんが暮らしの中で大切にしているのは、光と景観を意識したデザイン。自然光や照明が照らす、壁、天井、床などの表情・陰陽を美しく作り出すことや、窓が切り取る生活の風景、季節の移ろいを意識しているそうです。好きな場所は、原風景である故郷の海。潮の香りを嗅いで波の音を聞くのが好きだといい、何か気分を変えたいときに海に足を運んでいるんだとか。

取材中に濱口さんの後ろから聞こえてきたのは、ツクツクボウシの鳴き声。BdHOMEはキャンプ場「Marci Forest Camp」も運営しており、その一角で取材を受けていたそうです。用意されているのは5区画のみで、ゆったりとした時間を過ごせる“プライベート感のあるキャンプ場”がコンセプト。昨今のキャンプブームや、今から秋にかけてキャンプシーズンに入ることもあり、たくさんの予約が入っているといいます。

家を大切に育ててもらう、そんな家づくりが理想

伊勢市を中心に、注文住宅や店舗の設計施工を手がける「BdHOME」。会社名である「BdHOME(ビーディホーム)」という名前には、強い想いが込められているそうです。

「BdHOMEは『BOND』と『design』の頭文字を一文字ずつ取って、BdHOMEという社名になりました。『Bond』とは“つながり”という意味。『BOND(つながり)』を『design』する会社でありたい、BdHOMEの社名の由来にはそのような想いが込められています。家づくりを通じて、お施主様や共に働くスタッフ、そしてBdHOMEの工事を担ってくださっている地元の職人さんたち、そういったたくさんの人を含め、大きくは地域の方々とのつながりの輪を拡げていきたい、そんな風に考えています」

最近はコロナ禍を経て、おうちでの時間を充実させたいと考える人が、多くなったように感じているとのこと。家族それぞれの程よい距離感をつくる居場所を意識したり、LDKだけでなく、お庭や外と生活をつないで家族が楽しめる空間を作ったり…。「できるだけ家を丁寧に育てながら暮らしていただきたいという想いから、お客様に対してもそのようなおうちづくりを提案している」と話してくれました。

木目の美しさや黒のアクセントが特徴的な、BdHOMEの住宅。できるだけ自然の素材を家の中に使うようにしながらも、木だけでなく、鉄や黒色を入れて空間を引き締めるなど、バランスを意識してデザインしているといいます。あらかじめ決まった間取りの中から選んで、外観・内観のカラーを選択できる“セミオーダーシステム”も取られていますが、そのシステムを取り入れたのはどういった理由からなのでしょうか。

「基本的にこだわりのある注文住宅を設計・施工することを営業してきたわけですが、その中でお客様にとって非常にいろいろ選べることにより嗜好性が高くなりすぎて、デザインの良さが逆に失われてしまっていくことがありました。私たちがある程度のデザインコードを持って、企画したものを見ていただいて、気に入っていただける。そういった販売のあり方が、結果としてデザインの良いお家として、お客様にも喜ばれていますね」

MARCIやRYOKUENなど、“つながり”を大切にする理由

伊勢市内には、インテリアや雑貨の販売、カフェなどを運営する「Life style store MARCI」を展開。元々はオンラインショップで販売されていたものですが、BdHOMEを創立した15年ほど前から、おうちだけでなく家具や食器、インテリアに食事といった、ライフスタイル全般を提案する会社になりたいと考えていたそうです。

「自然が広がる最高のロケーションはないかと7年間探し求め、伊勢市内でこの場所と出会い、準備期間を経て5年前にやっとオープンすることができました。この場所と出会うまでもたくさんの土地を見てきたのですが、インフラがなかったり利便性が悪かったり、何よりなかなかピンとくることがないままでいました。それからも諦めずに探し続け、6年前にやっとこの場所に出会いました。この場所を見た瞬間、頭の中にたくさんのビジョンが浮かび上がり、ここだと思いましたね。色々と難しい条件も多かったのですが、そんなこと気にならないくらいでした。時間はかかってしまいましたが、やっと出会えた、という気持ちでしたね(笑)」

地域の人とつながるMARCIのほかにも、さまざまなプロジェクトを進めているBdHOME。その理由には、「住宅事業は、すぐに辞めたり会社を閉めたりすることができないもの。地域の人に支えられるような会社でありたい」という考えがあったんだとか。BdHOMEでは、地域とのつながりづくりも理念の柱として掲げられています。

現在は、分譲開発から設計施工まで自社で行い、ライフスタイルを楽しむお家と、美しい街並みを作り、価値観の近いコミュニティづくりを進めるプロジェクト「RYOKUEN」が進行中。すでにソールドアウトになっている家も多く、「他にはない価値を魅力に感じていただけたのではないか」と喜びを語りました。

つながりをデザインする「Life is BOND」

そんな濱口さんに「Life is ◯◯」の空欄に当てはまる部分を尋ねると、答えは「BOND」。

「BdHOMEの社名の由来でもある“Bond design HOME”とは、つながりをデザインする会社という理念を掲げており、これは私自身の考え方や哲学でもあります。お家づくりやライフスタイル事業、あらゆる縁を通じて生み出した価値が、会社としても個人としても、つながりを生み出して欲しいなといった想いがある」とお話してくれました。

住宅のみならず、地域とのつながり、人とのつながり、さまざまな縁を大切にしながらライフスタイルを提案していくBdHOMEから、ますます目が離せない予感です。