「生活はデザインそのもの」みずうみデザイン室を主宰するアートディレクター・デザイナーの濵田佳世さん
福岡市薬院で「みずうみデザイン室」を主宰している、アートディレクター・デザイナーの濵田佳世さん。
今回は、濵田佳世さんの日常を豊かにするデザインへの想いや好きなものについて伺いました。
アートディレクター・デザイナーの濵田佳世さん
高知市うまれ。高3のときに絵本作家に憧れ、奈良芸術短期大学デザイン学科イラストレーションコースへ。卒業後、デザイン事務所やシステム会社のWebグループ室長を経て2015年4月に「みずうみデザイン室」として独立。その後、2021年11月1日に法人化。
デザインにおいては「人・サービス・背景」をよく分析し正しく機能するよう心がけている。クライアントに寄り添い、ユーザー目線での見せ方などをトータルで提案している。好きなものは本と雑貨、最近は白ワインと料理。おいしいものに目がない。
暮らしの中で大切にしているデザイン
はじめに、濵田さんが暮らしの中で大切にしているデザインについて伺いました。
「物や空間など身の回りのものが”自分の尺度でお気に入りである”ということ、常に生活の中で『心地よくいられる』ということを大切にしています。どういう尺度かというと、フラットでシンプルなものです。デザイン性が高いことがポイントで美しく心地よいものが良いですね」
世界観のある場所が好き
続いて、濵田さんのお好きな場所や空間はどこでしょうか?
「好きな場所は2つあります。1つは、福岡県の薬院にある『クランク』というアンティークヨーロッパの家具や雑貨を取り揃えているお店です。クランクは、私にとって福岡の名所でさまざまな仕掛けがあります。1度は行ってほしい場所ですね。もう1つは赤坂にある『万 yorozu』というお茶のお店です。『万 yorozu』は、お茶をその場で点ててくれて味も美味しいです。そのような一連の作業も空間も、制服が白衣であるのも素敵です。しつらえも全てが美の世界で最高峰のイメージがあります。また、この2つのお店には『建物が独創的』という共通点があるのです。yorozuには、癒されたい時や美を浴びたい時に羽を休めに行っています」
移住をきっかけに福岡を拠点として活動
濵田さんは、高知出身ですが、なぜ福岡県で活動されているのでしょうか?
「大学は、奈良だったのでしばらくは、関西の方でデザインの仕事をしていました。その後は、母の出身でもある熊本県に移住することになり、市内で活動していました。しかし、2016年の熊本地震で被災し、福岡県へ移住になったのがここで活動することになったきっかけです」
仕事で大切にしているのは「目的に向かって解決し成果を出すこと」
ブランディングとパッケージデザイン、店舗のプロデュースなど、本当に幅広いお仕事を手掛けていますが仕事で1番大切にしていることは、なんでしょうか?
「目的に向かって解決し“成果を出す”ことを大切にしています。また、そのために何ができるか?を考えながら仕事をするように心がけています。解決し成果を出すためには、情報を多く収集することが大事だと感じています。ヒアリングだけで本質的な部分だけを聞いても、その周辺には多くの事情やユーザーの環境など見えない要因があると思います。そのような要因も解決させるためには、1つのことだけでは解決できないからです。そのため、単純にzoomだけで打ち合わせをするのではなく、実際に会いに行ってその周辺の場所を見て空気を感じる。そこで自分の感性を通してアウトプットしていく、その両方が大切だと思っています」
みずうみデザイン室のネーミングの理由は?
みずうみデザイン室というネーミングには、何か理由があるのでしょうか?
「みずうみデザイン室のネーミングにした理由は世の中のデザインをいいデザインで満たしたいという強い思いからきています。私が惹かれるのは、普段日常で触れるものです。例えば、博多駅にお土産売り場があったとしたら、その売り場が全部おしゃれで素敵でかわいいものばかりになったらいいのにといつも思ってしまいます。私だけでなく他のデザインに関わる人たちの力で、世の中を取り巻くもの全てが質の高いデザインになると素敵だな、1つの水が大きく広がり海のようになるといいなと思い、みずうみデザイン室というネーミングにしました」
雑貨好きを公言しているが、どのような雑貨に惹かれるのか
濵田さんは、雑貨好きを公言していますが、どのような雑貨に惹かれるのでしょうか?また、雑貨好きであるのは、今のお仕事にも影響していますか?
「落ち着いたシンプルさと、無駄な装飾がなくても目を惹くような古い雑貨に惹かれます。高校生の頃から素敵な雑貨を見つけてはスクラップをし、東京に憧れを抱いていました。そうした雑貨に親しむうちに『キャッチーなデザインってどんなものだろう?』と考えるようになったんです。例えば、お土産のパッケージデザインを考える際、短時間でパッと手に取ってもらうにはどうすればいいのかと考えます。時間がない中でも目を惹くデザインには『差別化されたキャッチーさ』が不可欠だなと。雑貨が好きだったおかげで、こうした選ばれるデザインを意識するようになり、それが今の仕事にも活きています」
事務所の設計ではどのようなオーダーかけたのか
事務所移転では、raumus(ラウムス)竹田さんが設計をされましたが、その際にどのようなオーダーをかけたのでしょうか?また、実際に利用してみての感想を教えてください。
「設計では、2つお願いをしました。1つ目は、ギャラリーのようなシンプルな空間。2つ目は、独立した打ち合わせスペースの依頼です。実際に使ってみて、私は夜型だったのですが、朝型に変わりました。太陽の光が差し込み、気持ちがいい空間なので早く仕事したいという気持ちになり、朝早く行って夜はゆっくりするという生活リズムに変わりました」
料理の盛り付けはデザインと同じ
濵田さんのInstagramには、料理の投稿もありますが、料理もお好きなのでしょうか?
「料理も好きです。その中でも、元々盛り付けや器が好きでした。盛り付けもデザインに関わっていて、素敵に見せるにはどうしたらいいか?を考えて料理をしています。その際に、器と料理の余白を重視していて、料理がどのくらいお皿に対してスペースがあればきれいで美味しそうに見えるかを実験しながら料理をするのが好きです。お皿にいっぱい盛るよりも、余白があった方が美しいですね」
今後チャレンジしたいこと
濵田さんが今後チャレンジしたいことは、ありますか?
「店舗全体のデザインを手がけてみたいですね。ジャンルにこだわらず、商品開発などゼロから創り上げるプロジェクトに関わりたいです。また、採用ブランディングの仕事もしており、社員の方々と話をする中で『働くこととは何か』を一緒に考えることは、とても楽しく、かつ会社の採用活動の答えを柔らかく表現することにもやりがいを感じています。この経験を通じて良い成果も出せましたし、今後もさらに挑戦していきたいです」
Life is デザイン
インタビューの最後、濵田さんに「Life is ◯◯」空欄に当てはまる言葉を尋ねると、「Life is デザイン」と答えてくれました。
「デザインは天職、人生そのものです。人生は作る、自分で道を切り開く=デザインし、設計するという意味があると感じています」
「生活はデザインそのもの」アートディレクター・デザイナーの濵田佳世さん
「生活はデザインそのもの」という確信のもと、福岡県でブランディングやパッケージデザインをされている濵田佳世さん。日常に寄り添うシンプルで美しいデザインを追求し、人々に心地良さを届け続けています。商品開発などゼロから創り上げるプロジェクトにチャレンジしたいという濵田さん。これからの活躍にも期待が膨らみます。