フィンランドの自然と光を取り入れた柔らかな空間が訪問者を優しく包む「トゥルクの復活礼拝堂」

北欧を代表する建築家 アルヴァ・アアルトが生まれ、活躍した国、フィンランド。そんなフィンランドでアアルトに先んじて建築家として活躍していたのがエリック・ブリュッグマン。アアルトがトゥルクに設計事務所を移して以来、親しい同僚として共に切磋琢磨する仲となり、共同設計を手掛けた作品も生まれました。アアルトに劣らず、個人としても数多くの名建築を生み出したブリュッグマンの傑作とも言われるのが「トゥルクの復活礼拝堂」。戦争で親友を亡くし、その深い悲しみを乗り越え設計された礼拝堂は、気品を感じさせる精緻な空間デザインによって、多くの人の心に語りかけるような建築です。

フィンランド最古の都市に佇む礼拝堂

建物の建つトゥルクはフィンランド最古の都市で、歴史的な建造物が今なお多くのこる街。ヘルシンキからは電車か高速バスで2時間程度で行くことができます。「トゥルクの復活礼拝堂」は、そんなトゥルクの静かな森の中にひっそりと佇むように建てられました。

建築はナショナルロマン主義(北欧古典主義)の代表的な建築で、従来の教会にあるようなステンドグラスや宗教画などの要素を排除し、地域性や伝統的な技術を用いて設計されました。

森の中に正面玄関へと真っ直ぐに至るアプローチが現れます。

建物正面には礼拝堂の入口ポーチ。そして右手に鐘塔が立ちます。

正面玄関に至る石の階段はスロープのような低い段差となっており、高齢の来訪者にも優しい設計に。

ポーチ左側の壁に彫られたレリーフには祈りを捧げる人々の様子が浮かびます。

光と自然を取り込んだ開放感のある内部空間

大きな銅の扉を開けると風除室があり、その先に礼拝堂が続きます。

この礼拝堂へと続くガラスの扉には有機的な植物柄の模様が施されています。

風除室の照明には太陽のような形をしたシーリングライトが採用されています。

外から続く石の床は、この風除室を超えて礼拝堂の入口まで伸び、そこから先は、ベージュ色の大理石へと変わります。

光が注ぐ開放感のある明るい礼拝堂

通常、教会の椅子は祭壇正面に向いていることが多いところ、「トゥルクの復活礼拝堂」では左側に30度ほど斜めにずらして椅子を配置することで、光の方向、祭壇の方向を向くように意図されています。

右側は天井が低くなる側廊で、天井一杯のガラス壁からは、美しく、深い森が見えます。

屋根が柱から跳ね出している片持ちスラブの構成となっているため、このガラス開口部には柱がなく、礼拝堂内に森と一体となったような開放感を与えています。

高い礼拝堂の上部の壁には四角い窓が開けられており、そこからの光は礼拝堂の奥まで届きます。

祭壇とその後ろの壁一面に優しい光を採り入れるのは、天井一杯に開けられた開口部。

そしてその中に組み込まれた2重のガラスによって、虹のようにいろいろな色がまじりあい、優しい光となって祭壇に注ぎ込まれます。

訪問者を優しく包み込む礼拝堂

建物に差し込んでくる日の光や祭壇とともに映し出される森の風景などの自然の要素を建築に上手に取り込むことで、訪れた人を柔らかく包み込む「トゥルクの復活礼拝堂」。サイドの壁に設けられた全面開口によって、祭壇とその後ろの壁一面に優しい明りが広がり、厳かながらあたたかみの感じられる空間となっています。現在の北欧モダンに繋がる、自然と人との柔らかな交わりを感じさせる建築です。

トゥルクの復活礼拝堂
所在地 : Hautausmaantie 21, 20720 Turku,Finland