直島「李禹煥美術館」は美術家・李禹煥と建築家・安藤忠雄の共鳴で生まれた静寂と対話する空間

国際的に非常に評価が高く、もの派を主導する李禹煥(リ・ウーファン)は、日本を拠点に活動する韓国生まれの美術家。その李禹煥と世界的な建築家・安藤忠雄のコラボレーションによって2010年にアートの島・直島にオープンしたのが、彼の名を冠する「李禹煥美術館」です。

自然との調和を巧みに描く直島「李禹煥美術館」の建築

直島の南側の海と山に囲まれた谷間に建てられた李禹煥美術館は、有機的な自然の中に安藤忠雄らしい人工的なコンクリートの幾何学が挿入され、人工と自然の間に緊張感を持たせています。18.5メートルの柱が聳える前庭「柱の広場」は、水平が強調される美術館本館に対して垂直の軸線をあてがうことで、水平・垂直の対比的な表現を与えています。

また、斜めに振った美術館へのアプローチのように、海と李禹煥の作品「無限門」に向かって谷間状に続く芝生もまたパースペクティブを強調します。慎重に配置された自然石は、人為的と自然の丁度良い塩梅のように感じられ、ここでもまた対比的な緊張感があります。

李禹煥と安藤忠雄の芸術的対話を感じる洞窟のような美術館の魅力

「間」や「余白」も李禹煥の作品の要素の一つ。物質と物質の間は、安藤忠雄による建築がキャンパスとして存在しているようで、その静けさ以上に静寂を感じます。特に洞窟を手探りで進むような美術館の動線が、李禹煥の作品への期待感を高め、そのシークエンスや時間もまた彼らの作品の一部のようにも思います。

3つの展示空間を三角形の広場をつなぐ動線にも、空のみを望む通路や洞窟のような暗い空間もあり、それぞれの空間体験も対比的であり、連続的でもあります。

人工と自然の共演、李禹煥の作品が語る物語

谷間に埋められた半地下の空間では、李禹煥の作品の要素でもある「間」や「余白」が、静寂を味わえる空間であるからこそ、李禹煥の作品を没入して体験することができます。コンクリート打放しのマテリアルを余白と捉えると、彼の作品に使われる石と鉄板という要素が物質としてより際立って現れます。物質と非物質、人工と自然のような対比的な表現を多用する李禹煥の世界観を最も良く現した美術館と言えるでしょう。

安藤忠雄のコラボレーションで生まれた「李禹煥美術館」

「李禹煥美術館」を訪れると、李禹煥と安藤忠雄の出会いが必然のように感じられます。アート作品と美術館建築が切っても切り離せない関係にあって、お互いが共鳴し、緊張感を持って存在しています。その空間の静寂の中に身を置くと、李禹煥と安藤忠雄のここでしか体験できない哲学と対峙できるように思います。

李禹煥美術館

URL : https://benesse-artsite.jp/art/lee-ufan.html
住所:〒761-3110 香川県香川郡直島町 字倉浦1390