「遊びこそ真剣に楽しむ」イカの活造りの名店「河太郎」総支配人・齋藤靖之さん
福岡県福岡市と佐賀県唐津市でイカの活造りを提供する飲食店「河太郎」の総支配・齋藤靖之さん。
今回はそんな斎藤さんにご自身のことや「河太郎」のこと、新たなプロジェクト「Whale Brewing」のことについて様々な角度からお話を伺いました。
ストーリー性がある建物を大切に
はじめに、斎藤さんが暮らしの中で大切にしているデザインについて伺いました。
「個人的に建物を見るのが好きですね。いろいろなデザインを見るのも好きですが、特にストーリー性がある建物が好きです。例えばお城だったり、現代建築なら福岡市の『アクロス福岡』は、森が成長していく物語がありますよね。そのように建物に秘められた物語を感じられるものが好きです。」
河太郎の呼子店から眺める夕日
続いて、斎藤さんのお好きな場所や空間はどこでしょうか?
「仕事柄もあるのですが呼子によく行きます。河太郎の呼子店から夕日を眺めると、呼子大橋越しに夕日が沈んでいくんです。その夕日の海と橋の眺めが、とても美しいなと思っています。」
クラフトビールのブルワリー「Whale Brewing」について
斎藤さんが総支配人を務める河太郎は、歴史あるイカの活造りの名店です。そんな河太郎が呼子でクラフトビールのブルワリー「Whale Brewing」をオープンすることになりました。
Whale Brewingはどのような想い、経緯で立ち上げられたのでしょうか?
「私自身、呼子の町をより活性化したい、盛り上げていきたいという想いがありました。そんな中、呼子に残る古民家の保護活動や、街の伝統のお祭りである“呼子くんち”の再興活動に取り組んでいる方と出会いました。その方から、長い目線で街を盛り上げていきたい、そのためにブルワリーが起爆剤になるのではないかとお話をいただいたことがきっかけです。私たちとしても、イカの活造り発祥の街をもっともっと盛り上げていきたいなという思いがあったため、そこから立ち上げにいたりました。」
Whale Brewingの名前の由来とビールの特徴
Whale Brewingの名前の由来について教えてください。
「呼子は今でこそイカの街として有名になっていますが、歴史を遡ると、捕鯨(鯨を捕る)という街として大変栄えていた歴史があります。街を歩くと豪商のお宅が今も残っていたり、歴史ある街並みもありまして、イカだけでなく呼子の文化をしっかりと引き継いでいきたいという想いで鯨の名前を取り入れました。」
そして、Whale Brewingで作るビールの特徴は「やはり我々がやるからには、“イカみ”があるというのを狙っていきたいですね」と教えてくださいました。
また、今回の新プロジェクトWhale Brewingは、クラウドファンディングに挑戦し、6月末までに約600万円近く集まったそうです。斎藤さんは「たくさんの方に応援していただきまして、本当にありがたいなと思っております。」と感謝の言葉を残しています。
Whale Brewingは築80年の古民家を改装
Whale Brewingは、築80年の古民家を改装し作られました。古民家にこだわった理由は何だったのでしょうか?
「建物がある場所は、昔に呼子が栄えた街、古くから作られた街です。『そういった街並みを保存したい』『新しくものを作るというよりも昔ながらの建物を生かしたブルワリーを作りたい』という想いで、この物件と出会いこの場所でやりたいと思いました。」
リノベーションは空間デザイナーの二俣公一
古民家のリノベーションは、空間デザイナー二俣公一さんが主宰する「CASE-REAL」が担当されました。二俣さんに依頼した理由やきっかけについて教えてください。
「調べていただけると分かると思うのですが、二俣さんは古民家のリノベーションやプロダクトのデザインでも海外から非常に高い評価を得られているデザイナーさんです。我々としてもまさかご縁があるとは思えなかったのですが…。今回のお話をたまたま聞いていただく機会があって、当初は大変忙しく『興味はあるけどスケジュール的に厳しい』と言われていました。」
「しかし、二俣さんが手掛けた蔵を改装した佐賀県嬉野市「MILKBREW COFFEE」の作例を見て、実際に足を運んだら、本当に蔵を上手く生かして歴史とスタイリッシュさを両立させた素晴らしい建築だったんです。この建築を拝見したら『二俣さんにやっていただきたい』と改めて強く思い、お願いしました。その後、二俣さんも古民家を再生することで地域おこしになるという計画に賛同いただき、お受けいただくことになりました。」
呼子の新しいアイコンになるように
リノベーションにあたって、こだわった点や大切にした点はどこでしょうか?
「外観は、呼子の新しいアイコンや名所になる、そういったところになるように考えました。そのためにはやはり、ぱっと見て素敵だなと思うデザイン、そして訪れてみたくなる魅力的な建物にしたいと思いましたね。内装は、古民家らしい大きな梁と柱、歴史を感じる内装と清潔で現代的な常道設備、そのコントランスを見ながらビールが飲めるといった特徴を演出できるよう考えました。」
周りからは温かい声や期待の声
今回のプロジェクトは、周りからどのような反応をいただいていますか?
「ありがたいことに期待の声をたくさんいただいております。イカのお店としては皆さんに知っていただいていますが、当初はまさかクラフトビール作りをすると思っていなかったので周りからどういった受け止め方をされるのかなと不安なところもありました。しかし、地域の方から『期待しているよ』『応援するよ』などの温かい声をたくさんいただいており、非常にありがたいなと感じています。」
また「河太郎が作るビールはどうなのだろうということで、今まで河太郎を知っていただいた方が興味を持ってくださり、またそれが呼子の新しい魅力の発信に繋がるといいなと期待しています。」とコメントを添えました。
さらに今後は、河太郎各店舗でクラフトビールを味わっていただけるように計画をしているそうです。
Life is 遊び場
インタビューの最後、斎藤さんに「Life is ◯◯」空欄に当てはまる言葉を尋ねると、「Life is 遊び場」と答えてくれました。
「お仕事も楽しみながらやるのが、やっぱり大事だと思っています。実際にクラフトビールも楽しみながら関わることで、よりいいものができるなと思っています。遊びこそ真剣に楽しみながら、みなさんに楽しんでもらう価値を今後も発信していければと思っています。」
大人になると、いつのまにか“真剣に遊ぶ”ことが日常の中になくなっていきます。しかし人を喜ばすサービス、人を楽しませるサービスには、まずは自分が思いっきり楽しむことが大切なのかもしれません。斎藤さんが楽しみながら作りあげている河太郎や、新プロジェクトのWhale Brewingは、きっと多くの人々を笑顔にしていることでしょう。今後もどのようなものが生まれていくのか、ご活躍に注目です!