ミース・ファン・デル・ローエによるモダンで機能的な邸宅「トゥーゲントハット邸」
近代建築の世界三大巨匠の1人といわれる、ドイツの建築家ミース・ファン・デル・ローエ。そんな彼の代表作である「トゥーゲントハット邸」は1930年にチェコ・ブルノに建てられた邸宅です。
2001年12月にユネスコの世界遺産に登録され、そのデザインと建築思想はモダニズムの礎となり現代建築へ大きな影響を与えました。
ブルノの高台に佇む世界遺産「トゥーゲントハット邸」
チェコ東部のモルダヴィア地方の中心都市ブルノに佇む「トゥーゲントハット邸」は、高台の斜面に建っています。正面から見ると1階建てのように見えますが、3階建ての建築です。
外観はスラッと直線的で、直方体がいくつか重なったような形をしています。
邸宅として使用されたのは、第二次世界大戦までで、それ以降は事務所や教育センターなどとして利用されました。その後に改修工事が行われ、2013年から現在まで一般公開されています。
庭に面した2階の壁面はすべてガラス張りで、あえて壁で部屋を仕切らない機能的な平面空間が特徴的な邸宅です。
乳白色の曲面ガラスが特徴的のエントランス
こちらはエントランスです。乳白色の曲面ガラスの内部は階段室となっており、その奥が玄関ドアとなっています。
玄関ドアは、床から天井までの大きさで片開きです。
エントランスエリアの床は、全面イタリアのトラバーチン仕上げ。入り口からみた乳白の曲面ガラスを通して、やわらかく優しい光が入ります。
仕切りの少ない開放的なリビングエリア
こちらは地上1階部のリビングエリアです。リビングエリアは仕切りの少ない開放的な空間となっており、機能的な生活ができるよう工夫が施されています。
自由な空間設計を可能にするように、柱は十字形でステンレスの幌が付けられているのが特徴的。
庭に面したファザードは、光を最大限取り込むために全面ガラス張りとなっています。さらに床から天井までの大きな窓ガラスは、電動で床に引き込まれ開閉する作りです。
窓の外には、山の斜面を利用した庭を眺めることができ、癒しを与えてくれます。
ミース・ファン・デル・ローエが手掛ける高級家具
リビングエリアの仕切りを作っているのは、北アフリカのアトラス山脈地方の縞瑪瑙(しまめのう)の一枚板です。その模様は、西日が室内に差し込むと、人間の脈の流れのように見えます。
そして、ミース・ファン・デル・ローエはこの邸宅のために、40以上の家具やインテリアの設計も手がけました。特にこのリビングルームにある椅子はブルーノチェアと呼ばれ親しまれています。もちろんほとんどの家具は、紫檀、黒檀などの高級木材またはスティール製で作られ、ブルーノチェアの他にチューブラーチェア、トゥーゲントハットチェアなどの椅子が設けられています。
リビングエリアは、自然と空間の一体感を感じられる、ミース・ファン・デル・ローエらしいこだわりが詰まった空間です。
カーブする壁が特徴的のミーティングエリア
こちらは、リビングエリアに隣接するミーティングエリア。ここでは、1992年にチェコとスロヴァキアの解体調印式が執り行われました。
黒茶色をした木材が丸くカーブしている壁が柔らかな印象を与えます。そして大きなテーブルは、ミース・ファン・デル・ローエがこの住宅のためだけに作ったもので、ぐるりと回すと3段階にサイズ調節が可能です。
建築からインテリアまで一緒になって作り出す空間
ダイニングや、書庭を眺める事が出来る憩いのスペースなども基本的にドアはなく、リビングエリアと全てがつながっています。そして、そこにあるちょっとした「仕切り」によって開放感のある空間が保たれているのです。
大きな空間にはそれぞれピアノやテーブル、ソファなど様々なインテリアが設けられていますが、そのどれもが主張しすぎず、建築からインテリアまで一緒になって空間を作り上げています。
ブルノの絶景が眺められる寝室
地上2階部は、大きなエントランスホールや寝室、バスルームなどがあります。
家族の寝室の大きな窓からはたくさんの自然光が注ぎ、眺望に向けて配置されたベッドと窓の脇に備えられたデスクが印象的です。
そして、窓からはブルノ市の全景が見られる最高のロケーション。
テラスに面している部屋は、子どもたちの部屋が並んでいます。
テラスにすぐでられるドアもつけられており、子供達にとっては好奇心を満たす場所となったことでしょう。
90年近く前に作られたとは思えないバスルーム
こちらは、90年近く前に作られたとは思えないほどの豪華さを感じるバスルームです。ハイサイドライトから取り込まれた日光が室内にほどよく入り込み、明るく開放感のある空間となっています。
紐をひっぱると簡単に開閉ができ、しっかりと換気も行えるのも特徴的です。
こちらは食堂です。食器を上の階に運ぶエレベーターまで設置されています。
テラスや庭にも見られるミース・ファン・デル・ローエのこだわり
ブルノの景色を一望できるテラスも十字型の柱が軒を支えています。
庭に続く階段はトラバーチンでできており、壁面はつる性落葉植物「蔦」で覆われているのが特徴です。
エントランスがある通り側から見ると感じづらい建築美も、庭側から見るとその洗練された建築デザインに圧倒されます。
高台の斜面を利用して建てられていることがよく分かる、トゥーゲントハット邸。
そして、トゥーゲントハット邸の緑豊かで広大な庭には、様々な種類の木々が育てられています。
ミース・ファン・デル・ローエによって手掛けられたモダンで機能的な「トゥーゲントハット邸」
「Less is More(レスイズモア)」を提唱した建築家のミース・ファン・デル・ローエによって手掛けられた「トゥーゲントハット邸」。シンプルに見せながらも、世界中から高価で貴重な材料を取り寄せられ、各空間に贅沢に取り入れられいる空間は、彼らしいこだわりが詰まっていることを感じられる邸宅です。
トゥーゲントハット邸
住所: Černopolní 45, 613 00 Brno, チェコ
営業時間:10:00~18:00
電話番号: +420 515 511 015