【ミラノデザインウィーク2023】ISSEY MIYAKE熱で立体化するマテリアル「Steam Stretch」を発表

イタリア・ミラノで最もエキサイティングな一週間と言われている、世界最大規模のデザインイベント「ミラノデザインウィーク」。第61回目となる今年は、予想をはるかに上回る307,000人以上の来場者を記録し、多くの反響を呼びました。

日本を代表するモードブランドの1つであるISSEY MIYAKEは、東京大学のスタートアップNature Architectsとコラボレーションした「Thinking Design、Making Design: Type-V Nature Architects Project」を展示し、大きな注目を集めました。

ISSEY MIYAKE×Nature Architects

ISSEY MIYAKEが発表した「Thinking Design、Making Design: Type-V Nature Architects Project」は、コロナ禍に誕生し3年目を迎えたばかりの新ブランド「A-POC ABLE ISSEY MIYAKE」と、Nature Architectsの設計技術を使い、誰も見たことのない新しい服づくりを探求したプロジェクトです。

共同開発したNature Architectsは、DFM(Direct Functional Modeling) と呼ばれるメタマテリアルを用いた、新しい設計アルゴリズムの研究・開発を行っています。

熱で立体化する布「Steam Stretch」

今回、発表されたものは、Nature Architectsのメタマテリアルを用いたアルゴリズムのフレームワークを応用し、熱を加えるだけで狙った立体に自動で変形する布「Steam Stretch」。

「Steam Stretch」は、布に熱を加えることで特定の糸が縮み、伸縮性のあるファブリックを生み出すことのできるISSEY MIYAKE独自の製造技術です。Nature Architectsは、狙った立体に変形するために、必要な布の収縮パターンを計算し、複雑なプリーツ形状の展開図を自動生成するアルゴリズムを開発することで、設計プロセスを自動化・効率化することを可能としました。こうして布が立体化するという、未来からタイムスリップしてきたような全く新しい服が実現したのです。

熱を加えるだけで立体的な形状に変化する生地なので最小限の縫製で済み、身体のフォルムに馴染むようになっているため、ジャケット類のデザインに適しています。

今回、展示が行われたのは、19世紀の邸館を修復した「歴史」を感じさせる外観と、「未来」を象徴するアルミニウムの内装が印象的なISSEY MIYAKEのイタリアの旗艦店 ISSEY MIYAKE / MILAN。

開発過程で作られたドレスや照明も展示

展示されたものはジャケットだけでなく、開発過程で作られたドレスやイス、照明、そしてその元となったテキスタイルなどです。

いずれも製品ではなくプロトタイプですが、販売できる製品の開発に向けさらなる協力が進められています。

さまざまな分野を一変させるプロジェクト

プロジェクトの成果は今後、ISSEY MIYAKEどころか、家具や照明、建築などのさまざまな分野を一変させる可能性を秘めているのです。

ISSEY MIYAKE、Nature Architectsとの共同開発、熱で立体化する布「Steam Stretch」

「一枚の布」これはイッセイ ミヤケが1970年代から大事にしてきた服作りの考えであり、できるだけ手を加えない一枚の布で身体を纏うことを理想として掲げてきました。そして、時を経て2023年。ミラノデザインウィークにて、「一枚の布」が大きな飛躍を遂げたのです。このプロジェクトは、従来の布の製造を超えて、家具、照明、備品、建築の分野でのプロトタイプを提示することによって、構造、素材性、生産におけるデザインの役割を検討しており、その可能性は無限にあるように感じられます。今回のミラノデザインウィーク、ISSEY MIYAKEの発表を経て、ファッション業界だけでなく各分野にまで大きな反響を得るきっかけとなったことでしょう。