「なんてことない些細なことにこそ目を向けたい」デザイナー・三澤遥のデザインへの視点や原デザイン研究所での日々について
上野動物園の知られざる魅力をビジュアル化した「UENO PLANET」や、「虫展 −デザインのお手本」への出品作「視点の採集」など、ものごとの原理を観察し、実験的なアプローチによって未来への可能性へと繋げる、ユニークなスタイルが注目を集めるデザイナー・三澤遥。今回は三澤さんに、デザインへの視点や所属されていた「原デザイン研究所」での日々について伺いました。
デザイナー・三澤遥
1982年群馬県生まれ。日本デザインセンター三澤デザイン研究室室長。武蔵野美術大学准教授。同大学工芸工業デザイン学科卒業後、デザインオフィスnendoを経て、2009年より日本デザインセンター原デザイン研究所に所属。2014年より三澤デザイン研究室として活動開始。ものごとの奥に潜む原理を観察し、そこから引き出した未知の可能性を視覚化する試みを、実験的なアプローチによって続けている。主な仕事に、水中環境を新たな風景に再構築した「waterscape」、かつてない紙の可能性を探求した「動紙」、国立科学博物館の移動展示キット「WHO ARE WE」、隠岐ユネスコジオパーク泊まれる拠点「Entô」のアートディレクション、上野動物園の知られざる魅力をビジュアル化した「UENO PLANET」がある。主な受賞に、毎日デザイン賞(2019)、亀倉雄策賞(2023)。著書に『waterscape』(出版:X-Knowledge)。
些細なことに目を向ける
まずは日常生活の中で大切にされているデザインについて伺いました。
「『些細な』という言葉を大事にしていて、なんてことない些細なことにこそ目を向ける意識をしています。葉っぱに丸く穴をあけて、そこに異なる葉っぱをあてて色味の違いを楽しむ「葉っぱ丸」という個人プロジェクトがあるのですが、そのように仕事でもプライベートでも、常に頭を柔らかく、面白がってみる視点を大切にしています。」
わからないことを想像できる博物館が好き
デザイナーとして、お好きな空間はどういったものなのでしょうか。
「『国立科学博物館』はとても好きですね。美術館では意図的に作られたクリエイティブが感じられるのですが、博物館には、知らない・わからないことについて自分で想像をしてみる余白が感じられるので、特に興味があるのかもしれないです。」
クリエイティブの裏側を目の当たりにできた
三澤さんは大学卒業後、デザインオフィスnendoで経験を積んだ後に、日本を代表するアートディレクター・原研哉さんが率いる日本デザインセンター「原デザイン研究所」に所属されました。こちらではどのようなことを学ばれましたか。
「原さんは、打ち合わせ中にぽろっと話す一言が、意表をつくものだったり、本質的なことを射抜くものが多い方です。どうやって物事を捉えるか、視点の大切さを気づかせてくれる『言葉』を持っているデザイナーだと思います。
原さんのもとでは日々寝る間も惜しんで制作を行っていて、修行のような5年間でした。一般的に『原デザイン研究所』は、とても澄み切った、美しいものを提案しているように見えますが、その裏では様々なシーンで汗をかいて頑張っている人の存在があります。アウトプットとのギャップと言いますか、ものづくりの裏側で行われている出来事に生で触れられたのは大きい体験でした。」
「考えてしまう」デザインを目指したい
現在は日本デザインセンター内でご自身が主宰する「三澤デザイン研究所」にて、上野動物園の「UENO PLANET」プロジェクト、「虫展 −デザインのお手本」への出品作「視点の採集」など多岐にわたって活躍されていますが、デザインにおけるこだわりはございますか。
「見てくれた人が自分で考えずにはいられなくなるような、そういう物づくりができたらいいなと考えています。言葉や見た目でインパクトを与えるのではなく、作品を見た人に想像の余白で考えを巡らせてもらう様な・・。『考えてしまう』という体験どうしたら生み出せるか、日々探求しています。」
小さなことも大切に、ものごとの本質を求める視点
見た人が「考えてしまう」デザインを提案したいと話す三澤さん。日常の何気ない出来事にも疑問や発見を見出すまっすぐな視点が、ご自身の作品にも生かされているようです。