建築家・保坂猛による川に面した連続窓と異なる天高が暮らしを楽しくする住まい「HOUSE 119」
東京建築士会住宅建築賞を受賞した自邸〈LOVE HOUSE〉や、日本建築仕上学会にて作品賞を受賞した〈ほうとう不動 東恋路店〉など幅広いジャンルの空間設計を手掛ける建築家・保坂猛。保坂さんが主宰する保坂猛建築都市設計事務所による住宅〈HOUSE 119〉は、神奈川県厚木市に流れる玉川のほとりに建つ夫婦と子ども2人のための住宅。川面に設けられたガラス窓の一面が特徴の住まいです。
段々と大きくなるスケールの変化を扇の形状に現す
玉川の水面は8mほど低いところを流れているものの、河原は敷地の地面と同レベルであり、土手などで隔てることもなく地続きの状態。河原との間に道路を介しているものの、段差がほぼないため、敷地は河原とほとんど連続した空間となっています。
目の前の玉川はもちろん大きいですが、すぐ先で玉川が合流する相模川はさらに大きい。このような小さいスケールから大きなスケールが混在する場所の特異性に着目し、両方のスケールを併せ持つハの字型平面を採用。玉川の河原に面した敷地に立つ、大きさ、床レベルの異なる6つのハの字型平面を連ねた扇型形状の平屋となりました。
建築には、1階と2階の中間くらいのレベルに同じ規格の窓を川面に配列し、床は高床と低床を交互に配置。横連窓が河原の景色を切り取り、窓の足元には腰掛けられる高さの棚が設られています。
高床のリビングは天井高の抑えられた空間となり、低床の子ども部屋は3.310mmと天井高が高く感じられる縦長のプロポーションの空間となります。
高床スペースの下は土間コンクリート敷きとなっており、床下広場と名付けておもちゃや生活の道具を置き、地続きの河原までを庭のように楽しむ屋外生活のための拠点となりました。
スケールの横断と縦断
屋内では高床と低床を上がり下がりしつつ、ハの字型平面の開いた側と窄まる側を行き来する。屋外では床下広場から地続きで河原へと直接出ていく。屋内も屋外も、平面的にも断面的にも、住宅内の小さなスケールから川の大きなスケールの間を自由に行ったり来たりする自由度の高さが魅力の〈HOUSE 119〉。川に面する横長の窓と扇型の平面、変化のある高さのフロアに、様々なプロポーションの空間が、住む人に楽しい暮らしを提供してくれます。