建築家・保坂猛による町と繋がる暮らしを楽しむ2つ目の自邸〈LOVE 2 HOUSE〉

東京建築士会住宅建築賞を受賞した自邸〈LOVE HOUSE〉や、日本建築仕上学会にて作品賞を受賞した〈ほうとう不動 東恋路店〉など幅広いジャンルの空間設計を手掛ける建築家・保坂猛。保坂さん自らが手掛けた横浜市に建つ自邸〈LOVE HOUSE〉の完成から10年、ライフスタイルにも変化が現れ、都内に2軒目となる自邸〈LOVE 2 HOUSE〉を建設することに。前回同様の延床面積19㎡の狭小敷地に建てられた〈LOVE 2 HOUSE〉は、近隣の人々とのコミュニケーションも楽しめる、豊かな暮らしを生み出す極小住宅です。

江戸時代の長屋から想起された住宅

photo : KOJI FUJII

立地を優先し、希望の場所で予算に合う10坪の土地を購入。当初は2階建てで計画を進めていたものの、当時江戸時代の庶民の長屋が9尺2間(9.6m2)で4人家族が生活していたということを本で読んでいた奥さんが「6坪は広い」と言ったことをきっかけに、延床面積19㎡の平屋の計画が始まりました。

プランの参考は周辺環境と共に楽しく過ごせる住まい

photo : KOJI FUJII

プランの参考にしたのは、鴨長明による方丈庵や、ル・コルビュジェによるカップマルタンの小屋など、周辺環境と共にその小屋での生活全体を楽しんだ建築。さらに〈LOVE HOUSE〉での自然が身近に感じられる生活経験も踏まえ、古代ローマ人がヴィラ生活で大切にした5つの要素(学問、入浴、演劇、音楽、美食)を、この小さな家で充実させたいと考え、要素を削ぎ落とすのではなく、膨らますことで生活をより豊かにするような空間を目指しました。

photo : KOJI FUJII

太陽光のシミュレーションにより、建築に冬の約3ヶ月間に直射光が全く得られないことがわかったことから、空に向かって開く2枚の湾曲した屋根と天窓をもつ躯体が導かれました。冬には天窓から柔らかな天空光が差し込み、夏には燦々とした太陽光が家の中に満ち溢れ、年間を通して変化する光環境を楽しめる空間となっています。

3つのエリアから成る内部空間

photo : KOJI FUJII

室内はメインのRCの躯体から派生する壁によって、ダイニング、キッチン、寝室の3つのゾーンに分割されており、キッチンから一段下がったところに寝室があったりと、段差によって生活のリズムがつくられるよう意識されています。

photo : KOJI FUJII

浴槽はテラスにシャワー付きの屋外バスを設置。まるで露天風呂付きの客室のように、夜空や風を感じながらゆったりと過ごすことができます。

狭さを感じさせない、開放感のための工夫

photo : KOJI FUJII

〈LOVE HOUSE〉同様、狭小な敷地を生かす工夫は〈LOVE 2 HOUSE〉にも。19㎡とは思えないような開放感の秘密は約7.2mの天井高にあります。壁面のコンクリートが頂点部分でアールの曲面になり、上部のトップライトにつながっているため、伸び伸びとした空間に感じられるのです。

家の正面をオープンにすることで生まれるコミュニケーション

photo : KOJI FUJII

この家の顔でもある大きなガラス窓の先の道路も保坂邸の敷地。それは私道であると同時に、通行人や隣人にとっての生活道路でもあるため、日頃から通行人が通ります。計画の当初ではプライバシーの観点から板戸を予定していたものの、目隠しの必要性を見直し、ガラスを採用することに。床から天井まで届く大きなガラス窓によって、近隣の住民と気軽にコミュニケーションが取れ、結果的に周辺環境を暮らしに取り込んだ豊かな生活に繋がったようです。

地域をも取り込んだ、より豊かな暮らしを実現する住まい

1つ目の自邸〈LOVE HOUSE〉の完成から10年。自然の心地よさはもちろん、近隣のコミュニティも生活に取り込んだ〈LOVE 2 HOUSE〉。限られた空間ながらも「毎日露天風呂に入り、お気に入りのレコードを十分な音量で楽しみ、土鍋で炊いたご飯を食べ、好きな本を読む」といった保坂さんの考える豊かな暮らしを支える、まさに理想の住まいです。