建築家・手嶋保による、24mの路地を活かした周囲との共生を楽しむ暮らし「本鵠沼の家」
日本建築士会連合会賞にて優秀賞を受賞した〈伊部の家〉や、日本建築学会作品選集に入選した〈桜台の家〉など住宅設計を中心に手掛ける建築家・手嶋保。神奈川県の湘南エリアに建つ「本鵠沼の家」は、手嶋氏の経験上最長となる24mの路地を持つ建て込んだユニークな敷地を活かした住まいです。
24mの路地庭を活かした住宅づくり
住宅が建てられたのは24mの路地を持つ建て込んだ敷地。この敷地の特徴でもある長い路地を生かすべく、日々の往来を愉しめるような人と庭の織りなす日々を生み出す空間がベースのプランとなりました。路地はすでに隣家の植栽によって緑のアーチが形作られつつあり、それを増幅しさらに緑に覆われた小径となるように、シダや常緑つる植物などの植栽を施しています。将来的には植物の繁茂により更に隣家との境界が曖昧になることで良好な景観となることが意図されています。
路地の延長としてのダイニング
路地を進んだ先、建物との突き当たりを左に曲がった建物中央部に玄関を配置。左手側を寝室、右手側をパブリックなエリアに分けた構成となっています。
内部のプランでは室内から見返した路地の緑を、生活の中に眺望としていかに取り込むかがポイントとなりました。そこでまず緑豊かな路地を見返す位置、すなわち路地の延長としてダイングを配置することを計画の端緒としました。
角の開口部に隣接するダイニングと、対面するように配されたリビングキッチン。2200mmに高さを抑えた2階スラブ下にキッチンとダイニングを設え、吹抜けを介して2階のギャラリーと和室を繋ぐことで、多様な居場所を作り出しています。ダイニングテーブルとチェアはこの住宅のためのでデザインされました。
ダイニングの反対側、幅1間の通路を挟んだ東西に子供部屋を配置。通路はパブリックとプライベートを繋ぐ光に満ち、礼拝堂のような古典的なニュアンスが感じられます。階段は24mm厚のアピトン合板を蹴り上げ踏面として用い、組手継部分をノンスリップとしてデザインしています。
ハイサイドライトからの光が広がる2階フロア
2階はリビング部分を吹抜け空間に。南を頂点とする片流れの天井頂部付近に連窓のハイサイドライトを設けることで、1年を通して安定した風通しと日照を確保しています。サニタリーなどの水回りは排水管などのルートが短くて済むよう路地付近に集めています。壁天井はラワンベニヤを赤褐色に塗装。ハイサイドライトとダイニング開口部からの光が赤褐色の壁を柔らかく照らします。
2階吹き抜けからダイニングを見下ろすと、開口部からの緑と光が感じられます。
路地から生まれるプランニング
24mの路地を活かした自然と周囲との共生が楽しめる「鵠沼の家」。住宅地にありながらも、豊かな自然とプライベートとパブリックを緩やかに分けた構成で、心地の良い暮らしが送れそうです。敷地形状の個性から生まれた住まいです。